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高ストレス者面談後の職場改善とは?集団分析から施策実行までの進め方を解説

高ストレス者への医師による面接指導を実施し、必要に応じて時間外労働の制限や担当業務の調整などを行っても、それだけで職場全体の課題が解決するとは限りません。

例えば、人員不足、一部の従業員への業務集中、複雑な承認手順、管理職への過度な負荷、相談しにくい職場環境などが続いていれば、個人への就業上の措置だけでは十分ではない場合があります。

また、一人の業務負荷を軽減するために、その業務を別の従業員へそのまま移せば、職場全体として負荷が下がらないこともあります。

そのため企業では、個人については、医師の意見を踏まえた就業上の措置と必要なフォローを行う。

一方、組織については、個人を識別できない集団分析や勤怠、職場巡視、従業員からの意見などを用いて、職場環境上の課題を確認する。

という2つの視点を分けて持つことが重要です。

個人の面接指導結果をそのまま組織分析へ転用するのではなく、
集団分析 → 客観的な労務・職場情報の確認 → 現場の実態把握 → 改善施策の検討 → 実施 → 効果確認 → 必要に応じた見直し
という流れで職場環境改善を進めます。

高ストレス者が生じたことだけを、「本人のストレス耐性の問題」と捉えるのではなく、別途行う集団分析や職場環境の評価から、企業側で改善できる仕事上の要因がないか確認することが重要です。

本記事では、高ストレス者面談後に企業が行う対応、集団分析から職場改善へつなげる7ステップ、産業医の活用方法、改善を継続するためのポイントを解説します。

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目次

高ストレス者面談後に企業が行うべき3つの対応

高ストレス者への面接指導後には、大きく分けて次の3つの視点があります。

①本人に必要な就業上の措置 ②措置後の必要なフォロー ③個人を識別できない情報を用いた組織的な職場環境改善
です。

ただし、この3つで使用する情報は同じではありません。

本人への健康確保措置では、面接指導を行った医師から事業者へ提供された必要な医学的意見を利用します。

一方、組織的な職場改善では、個人の面談内容をそのまま利用するのではなく、ストレスチェックの集団分析や、企業が適法に保有している勤怠等の組織情報、職場巡視、従業員からの意見などを活用します。

個人への健康支援と、個人を識別しない職場環境改善を適切に並行して進めることが重要です。

産業医の意見に基づいて就業上の措置を検討する

医師による面接指導後、事業者は健康保持のために必要な措置について医師から意見を聴きます。

例えば、
通常勤務を継続できるか。
時間外労働等への制限が必要か。
深夜勤務等への配慮が必要か。
担当業務を調整する必要があるか。
療養を優先する必要があるか。
などについて医学的意見が示される場合があります。

医師意見が、「業務負担に配慮する」という内容だけでは、企業側が具体的な措置を判断できない場合には、
どのような負荷への配慮が必要か。
労働時間についてどの程度配慮すべきか。
避けるべき作業があるか。
いつ状態を確認することが望ましいか。
などを必要に応じて医師へ確認します。

例えば、「一定期間、時間外労働を制限し、その後状態を確認する」といった形です。

「月10時間」「1か月」といった数値に、すべての従業員へ共通する医学的基準があるわけではありません。

事業者は医師の医学的意見を勘案し、本人の意見や実際の仕事内容などを踏まえて具体的な措置を決定します。

産業医等は企業の意思決定を代行するのではなく、健康状態と仕事との関係を医学的に評価し、企業が健康確保措置を検討するための専門的な意見を示す役割を担います。

再面談によって本人の状態と措置の効果を確認する

就業上の措置は、実施した後に本人の健康状態や勤務状況を必要に応じて確認することが重要です。

例えば、時間外労働を制限しても、
勤務時間内の業務密度が過度に高くなっている。
決められた措置が現場で実施されていない。
本人が周囲へ遠慮して業務を抱え込んでいる。
といった状況では、期待した負荷軽減につながっていない可能性があります。

そのため、医師から一定期間後の再評価が必要との意見がある場合などには、
本人の心身の状態。
睡眠・疲労。
勤怠。
実際の業務負荷。
就業上の措置の実施状況。
などを確認します。

必要に応じて医師による再面談を行い、措置の継続・変更・解除などを検討します。

ただし、すべてのケースで再面談が法令上一律に必要というわけではありません。

本人の健康状態と医師意見に応じて、適切な方法・時期でフォローすることが重要です。

集団分析から組織的なストレス要因を確認する

個人への就業上の措置だけでは、人員配置や業務分担など職場全体の課題を改善できない場合があります。

そこで活用できるのが、ストレスチェック結果の集団分析です。

例えば、
仕事の量的負担。
仕事の裁量。
上司からの支援。
同僚からの支援。
などについて、一定の集団ごとの特徴や傾向を確認します。

ただし、集団分析の数値だけで原因を断定しないことが重要です。

集団分析に加えて、
部署単位の時間外労働。
休日勤務。
休暇取得状況。
欠勤等の勤務情報。
人員配置・組織変更。
職場巡視で確認した状況。
従業員からの意見。
などを組み合わせて職場環境を評価します。

集団分析は、
「この管理職が原因である」
「この施策を行えば解決する」
と自動的に答えを示すものではありません。

どの職場要因をさらに確認すべきかを考えるための情報の一つとして活用します。

高ストレス者面談後の職場改善に取り組む目的

職場環境改善の目的は、単に高ストレス者の割合を形式的に低くすることではありません。

企業が変更できる仕事上の要因を確認し、従業員へ過度な心理的負担が生じにくい職場環境をつくることが重要です。

例えば、
慢性的な長時間労働。
人員不足。
役割の不明確さ。
過度に複雑な業務手順。
相談しにくい職場環境。
などがあれば、セルフケアだけですべてを解決することはできません。

セルフケアや従業員教育も重要ですが、それと並行して、企業側で改善できる勤務形態や仕事の仕組み、職場環境を確認することが必要です。

面談対象者の再発や状態悪化を防ぐ

本人の業務負荷を一時的に軽減しても、就業上の措置を解除した後に以前と同じ過重な勤務環境へ戻れば、再び健康状態へ影響が生じる可能性があります。

そこで個人への措置とは別に、職場全体について、
業務分担。
人員配置。
業務手順。
相談経路。
特定の従業員への業務集中。
など、企業側で改善できる要因がないか確認します。

ただし、本人の面接内容を組織改善の根拠としてそのまま利用するのではありません。

集団分析や職場巡視、勤怠等の客観情報から組織的な課題を確認します。

特定の従業員だけが無理をしなくても業務を継続できる仕組みを検討することが、職場環境改善の視点です。

同じ職場で働く従業員の不調を予防する

集団分析や勤怠等の組織情報から、
慢性的な長時間労働。
一部の担当者への業務集中。
仕事の裁量の少なさ。
管理職・同僚からの支援不足。
などが確認された場合には、同じ環境で働く従業員にも負荷が生じている可能性があります。

そのため、
部署全体の業務量を確認する。
特定の担当者だけに依存する業務を減らす。
相談しやすい仕組みを整える。
役割分担を明確にする。
などの改善を検討します。

個人を特定する健康情報ではなく、集団として確認された職場環境上の特徴を改善へつなげることが重要です。

休職・離職につながる組織課題を早期に把握する

職場環境上の課題は、休職や離職が増加してから初めて検討するのではなく、日常的な産業保健活動の中で把握していくことが重要です。

例えば、
集団分析。
労働時間。
休日勤務。
休暇取得状況。
欠勤等の勤務情報。
従業員からの意見。
などを確認します。

ただし、休職・離職には仕事以外を含むさまざまな要因があるため、「離職が多い=職場ストレスが原因」と断定することはできません。

集団分析も職場の「成績表」ではなく、職場環境について追加で確認すべき課題を把握するための情報として活用します。

高ストレス者面談後の職場改善で企業が抱えやすい5つの課題

職場環境改善が進まない場合には、
情報の把握。
課題の分析。
施策の検討。
実施。
効果確認。
のどの段階に課題があるのかを確認します。

重要なのは、データを集めること自体ではなく、適切な情報を用いて改善可能な課題を見つけ、具体的な行動へつなげることです。

個人の面談内容を職場改善へそのまま利用してしまう

医師による面接指導や健康相談では、
症状。
受診状況。
治療内容。
家庭事情。
職場の人間関係。
など、機微性の高い健康情報を扱う場合があります。

これらを本人が特定できる状態のまま、管理職会議や衛生委員会へ職場改善の材料として共有することは適切ではありません。

一方で、「個人情報を守るので、職場環境改善はできない」ということでもありません。

職場改善では、個人の面談内容を集計することを基本とするのではなく、
ストレスチェックの集団分析。
職場巡視。
勤怠等の組織情報。
職場全体を対象としたアンケートや意見聴取。
など、個人を識別せず組織の状況を評価できる情報源を利用することが重要です。

産業医が日常の産業保健活動を通じて職場環境上の課題に気付いた場合にも、特定の労働者の秘密を明らかにすることなく、必要な範囲で一般的な職場環境改善について助言します。

集団分析結果だけで職場の問題を判断してしまう

集団分析の数値が悪いからといって、
「管理職に問題がある」
「人間関係が悪い」
と原因を決めつけることはできません。

背景には、
欠員。
繁忙期。
組織変更。
新規事業。
勤務形態の変更。
など、さまざまな要因がある可能性があります。

そのため、
時間外労働。
休日勤務。
人員数。
欠勤等の勤務状況。
異動や組織変更。
などの客観情報を確認します。

さらに、必要に応じて管理職や従業員から職場全体について意見を聴きます。

集団分析から仮説を立て、他の情報と現場の状況から検証するという順序で進めます。

少人数部署で個人を推測されるおそれがある

少人数の部署では、集団分析結果から個人のストレスチェック結果が推測される可能性があります。

現在の厚生労働省指針では、集団分析の単位が10人を下回る場合、原則として対象者全員の同意がなければ、その集団分析結果を事業者へ提供することはできません。

ただし、個々の労働者が特定されるおそれのない方法で集計・分析する場合には例外があります。

その場合も、集計方法と対象集団の規模について、あらかじめ衛生委員会等で調査審議しておく必要があります。

また、2027年4月1日からは、集団分析について「特定の個人を識別することができない方法」で実施することが労働安全衛生規則上明文化されます。

これは従来のプライバシー保護の考え方を変更するものではなく、明確化するものです。

部署をまとめるなど、個人が推測されにくい集計単位を検討します。

改善策が抽象的で現場が行動できない

「コミュニケーションを活性化する」
「管理職が部下をケアする」
だけでは、具体的に何をすればよいか判断できません。

例えば、「毎週の既存進捗会議で担当者ごとの業務量を確認し、負荷が集中している場合はチーム内で再配分を検討する」など、現場で実行できる内容まで具体化します。

実務上は、
実施する行動。
担当者。
開始時期。
確認時期。
評価に用いる指標。
などを整理すると管理しやすくなります。

ただし、すべての改善策を数値だけで評価できるわけではありません。

数値で把握できる変化と、従業員の意見など定性的な情報を組み合わせて評価することが重要です。

施策を実施しても効果を検証していない

研修を実施した。
1on1を導入した。
会議を新設した。

という事実だけでは、職場環境が改善したかは判断できません。

例えば施策の目的に応じて、

時間外労働はどう変化したか。
休暇を取得しやすくなったか。
特定の従業員への業務集中は改善したか。
相談しやすさに変化があったか。

などを確認します。

評価時期は、施策の内容や職場の状況に応じて決めます。

「3か月後」「6か月後」は実務上の一例であり、法令上定められた評価期間ではありません。

改善がみられない場合には、
施策が十分に実施されていないのか。
当初の課題設定が適切でなかったのか。
施策の内容を変更すべきなのか。
を検討します。

高ストレス者面談後の職場改善プログラム7ステップ

職場環境改善は、集団分析結果を配布して、「各部署で改善してください」と依頼するだけでは進みにくいものです。

情報整理→課題分析→優先順位の検討→現場確認→施策設計→実施→効果確認という流れをつくります。

その際、人事労務担当者、産業医等の産業保健スタッフ、衛生管理者、管理職、従業員など、それぞれが担う役割も整理します。

手順1.個人対応と職場改善で利用する情報を分ける

まず、個人への健康支援に利用する情報と、組織レベルの職場環境改善に利用する情報を区別します。

面接指導結果や医師意見などの個人情報は、本人の健康確保措置に必要な担当者の範囲で取り扱います。

一方、職場環境改善には、

個人を識別できない集団分析。
部署等の勤怠情報。
休暇・欠勤等の組織情報。
職場巡視。
職場全体を対象としたアンケートや意見聴取。

などを使用します。

誰が、何の目的で、どの情報を取り扱うのかをあらかじめ決めることが重要です。

手順2.集団分析と客観的な労務データを確認する

集団分析では、
仕事の量。
仕事の裁量。
上司からの支援。
同僚からの支援。
など、職場のストレス要因に関する特徴を確認します。

さらに必要に応じて、
時間外労働。
休日勤務。
休暇取得。
欠勤。
人員数。
組織変更。
などの客観的情報を組み合わせます。

休職や離職等のデータを使用する場合には、人数が少ない部署で個人が推測されないよう、分析単位や共有範囲にも注意します。

一つの指標だけで原因を断定せず、複数の情報から課題の仮説を立てることが重要です。

手順3.優先して改善する部署と課題を決める

すべての課題を同時に改善することは難しいため、優先順位を検討します。

例えば、
健康への影響の大きさ。
影響を受ける従業員の範囲。
問題が継続しているか。
企業側で変更可能か。
などの観点から検討します。

また、「ストレスが高い部署」という抽象的な課題設定ではなく、

「繁忙期に一部担当者へ顧客対応が集中している」
「承認工程が多く、業務が特定の役職者に滞留している」
など、追加確認や改善策を検討できる粒度まで具体化します。

手順4.管理職と従業員から実態を聞き取る

集団分析や勤怠等の数値だけでは、
なぜ業務が集中しているのか。
なぜ相談しにくいのか。
どの業務手順が負担になっているのか。
までは分からない場合があります。

そのため必要に応じて、
匿名アンケート。
職場単位の意見交換。
管理職への聞き取り。
産業保健スタッフによる職場確認。
などを行います。

ここで重要なのは、「誰に問題があるのか」を探すのではなく、「仕事の仕組みのどこを変えれば負担を軽減できるのか」を確認することです。

手順5.具体的な改善施策と評価指標を決める

課題に応じて改善施策を設計します。

例えば、業務集中が課題であれば、
担当業務を複数人で対応できるようにする。

相談機会が不足しているのであれば、
既存の業務管理の中に短時間の相談機会を設ける。

承認手順が負担になっているのであれば、
必要性の低い承認工程を見直す。

などが考えられます。

職場環境改善は研修だけではありません。

人員配置。
業務分担。
会議。
勤務形態。
承認手順。
業務システム。
なども検討対象です。

施策を実施する際には、実務上、
担当者。
対象。
開始時期。
確認時期。
評価指標。
を整理しておくとよいでしょう。

手順6.対象部署で施策を試行する

改善策によっては、最初から全社へ展開するのではなく、課題が明確な職場で試行する方法もあります。

例えば一定期間実施し、
実際に運用できたか。
新たな負担が生じていないか。
想定した指標に変化があったか。
従業員からどのような意見が出たか。
を確認します。

試行期間は施策の性質に応じて設定します。

「3か月」は一例であり、すべての職場改善策に共通する基準ではありません。

既存の会議や業務管理の仕組みへ取り入れられるものは、できるだけ通常業務へ組み込むことも、継続しやすくするポイントです。

手順7.効果を検証して次の改善へつなげる

あらかじめ設定した時期に施策の実施状況と結果を確認します。

改善がみられない場合には、
そもそも施策が実施されていたか。
課題の仮説が適切だったか。
改善策と原因が合っていたか。
を分けて検討します。

実行できていない場合には運用方法を見直し、十分に実行しても変化がない場合には別の施策を検討します。

効果が確認できた方法については、他の職場でも同じ課題があるかを確認したうえで展開を検討します。

試行→評価→見直し→必要に応じた展開を繰り返すことが継続的な職場環境改善につながります。

高ストレス者面談後の職場改善における関係者の役割

職場環境改善は、人事部門だけで進めるものではありません。

課題の内容に応じて、
経営層。
人事・労務担当者。
産業医等の産業保健スタッフ。
衛生委員会等。
管理職。
従業員。
がそれぞれ役割を担います。

誰が課題を整理し、誰が医学的な助言を行い、誰が施策を実行し、誰が実施状況を確認するのかを整理しておくことが重要です。

経営層は方針と必要な人員・予算を示す

職場環境上の課題が、
人員不足。
業務システム。
組織構造。
勤務制度。
などに関係する場合、人事担当者や管理職だけでは変更できないことがあります。

その場合には経営層が、
職場環境改善へ取り組む方針。
責任者。
必要な予算。
必要な人員・体制。
などを検討する必要があります。

メンタルヘルス対策を福利厚生だけの問題と考えず、従業員の健康確保と、安定して働ける職場環境を整えるための組織的な取組として位置付けることが重要です。

産業医は健康リスクと改善施策の妥当性を助言する

産業医は、
個人を識別できない集団分析。
勤務状況。
職場巡視で把握した職場環境。
衛生委員会等で共有された情報。
などを踏まえ、従業員の健康という観点から職場環境改善について助言できます。

例えば、
どのような職場要因が健康へ影響する可能性があるか。
検討している改善策によって新たな健康上の負担が生じないか。
どのような情報を継続して確認すべきか。
などです。

一方で、産業医が会社に代わって人員配置や業務プロセスそのものを決定するわけではありません。

産業医は医学・産業保健上の観点から助言し、具体的な組織施策は事業者が検討・実施するという役割分担が重要です。

衛生委員会は計画と進捗を継続的に確認する

衛生委員会等は、労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策などについて調査審議する場です。

そのため、ストレスチェックの集団分析結果を報告するだけでなく、必要に応じて、
どの職場環境上の課題を検討するか。
どのような改善策を進めるか。
実施状況はどうか。
追加の改善が必要か。
などについて調査審議する場として活用できます。

ただし、衛生委員会へ個人の面談内容や詳細な健康情報を共有する必要はありません。

個人を特定しない情報を用いながら、職場環境改善について継続的に検討することが重要です。

管理職は業務調整と従業員への説明を行う

実際の職場では管理職が、
業務を再配分する。
スケジュールを調整する。
不要な会議を見直す。
相談できる機会を設ける。
など、具体的な施策を実施する役割を担うことがあります。

そのため、「ストレスが高い職場なので改善してください」という抽象的な依頼だけではなく、

どの課題を改善するのか。
何を実施するのか。
いつ状況を確認するのか。
を明確にします。

また、管理職自身へ過度な業務負荷が集中していないかを確認することも重要です。

従業員は現場の課題と改善案を共有する

実際の仕事の中にある、
不要な作業。
時間のかかる手順。
業務の偏り。
相談しにくい工程。
などについては、現場で働く従業員が具体的な情報を持っています。

そのため、「ストレスを感じますか」だけではなく、
「負担の大きい業務は何か」
「どの業務手順を変えると仕事を進めやすいか」
などを確認すると、改善策を考えやすくなります。

ただし、意見を述べたことによって本人が不利益を受けるという不安が生じないよう、安心して意見を出せる方法と情報の取扱いを整えることが前提です。

高ストレス者面談後の職場改善を成功させる5つのポイント

職場環境改善で重要なのは、完璧な分析結果が出るまで何もしないことではありません。

企業が変更できる職場要因について具体的な改善策を検討し、実施後の状況を確認します。

また、集団分析等を実施した場合には、
何を課題として捉えたのか。
どのような改善を行ったのか。
を、個人が特定されない範囲で従業員へフィードバックすることも、制度への理解を深めるうえで有効です。

個人のストレス耐性ではなく仕事の仕組みを見直す

職場環境改善では、従業員個人の性格や「ストレスへの強さ」だけに原因を求めないことが重要です。

企業側で変更できる、
業務量。
期限。
人員配置。
役割分担。
仕事の裁量。
情報共有。
相談経路。
などを確認します。

セルフケア教育もメンタルヘルス対策の一つですが、構造的な長時間労働や業務集中がある場合には、セルフケアだけで解決することはできません。

個人への支援と、仕事そのものの改善を組み合わせることが重要です。

数値と従業員の声を組み合わせて課題を判断する

集団分析や勤怠等の数値だけでは、その背景まで十分に把握できない場合があります。

一方、個別の意見だけでは、その内容が職場全体に共通する課題なのか判断しにくいことがあります。

そこで、
集団分析。
勤怠。
欠勤等の組織情報。
と、
匿名アンケート。
職場単位の意見聴取。
職場巡視。
などを組み合わせます。

定量的な情報と定性的な情報の両方から職場の状況を確認することが重要です。

従業員参加型で改善策を検討する

人事担当者だけで改善策を決めると、実際の業務には合わない場合があります。

そこで、
負担が集中しやすい工程。
不要と感じる作業。
見直し可能な職場ルール。
などについて従業員から意見を聴く方法があります。

ただし、一部の従業員の意見だけで職場全体の方針を決めるのではなく、

匿名アンケート。
意見交換。
客観的データ。
など複数の情報を用います。

短期間で実施できる改善から始める

職場環境改善は、
増員。
大規模なシステム改修。
組織再編。
のような大きな施策だけではありません。

例えば、
不要な会議を減らす。
業務一覧を作成する。
特定業務に副担当者を設ける。
既存会議の中に業務負荷を確認する時間を設ける。
など、比較的短期間で実施できる改善もあります。

課題が明確な場合には、小規模に試行し、その結果を確認してから他の職場へ展開する方法も有効です。

改善結果を従業員へフィードバックする

ストレスチェックや職場アンケートへ回答しても、「結果がどう使われたのか分からない」という状態が続けば、制度への理解や信頼が低下する可能性があります。

個人を特定しない形で、
どのような職場課題を確認したか。
どの改善策を行ったか。
どのような変化があったか。
今後何を見直す予定か。
などを従業員へ伝える方法があります。

ただし、少人数集団の結果や特定の管理職の評価につながる情報などは、共有範囲に注意します。

データを収集するだけでなく、職場改善へどう活用したのかを適切に還元することが重要です。

高ストレス者面談後の職場改善に関する想定事例

職場環境改善の事例を見る際には、「他社がこの施策を行ったから自社でも同じ施策を行う」という使い方ではなく、

どの情報から課題を仮定し、どのように実態を確認し、何を改善し、何をもって効果を確認したのかというプロセスを見ることが重要です。

以下は、その考え方を示すための想定事例です。

小売業で繁忙時間帯の業務分担を見直した事例

多店舗展開する小売企業で、一部の店舗について集団分析から仕事の量的負担や上司支援に課題がある可能性が確認されたとします。

そこで、
集団分析で課題候補を確認する。
↓
勤怠・シフトから繁忙時間帯の負荷を確認する。
↓
職場単位の意見聴取から業務の集中状況を確認する。
という流れで課題を絞り込みます。

その結果、
時間帯別の業務分担を明確にする。
応援要員を配置する基準を設定する。
既存の管理業務の中で負荷状況を定期的に確認する。
などを試行します。

一定期間後に時間外労働や従業員の意見等を確認し、改善がみられた方法について他店舗への展開を検討します。

IT企業で案件配分と相談ルートを改善した事例

テレワーク中心のIT企業で、集団分析から仕事の裁量や上司からの支援について課題がある可能性が確認されたとします。

さらに職場への聞き取りから、
進捗が遅れた際に相談するタイミングが明確でない。
一人の担当者が案件を抱えやすい。
といった業務上の課題が確認されました。

そこで、
既存の進捗管理の中で案件負荷を確認する。
重要案件には副担当を設定する。
短時間の定期的な相談機会を設ける。
といった改善を行います。

新しい会議を増やすのではなく、既存の仕事の流れへ組み込むこともポイントです。

一定期間後に、労働時間や相談しやすさ等の変化を確認します。

製造業で夜勤と突発対応の集中を解消した事例

製造業の特定工程について、集団分析と欠勤等の組織情報から職場負荷を確認する必要があると判断したとします。

勤務表や職場確認を行ったところ、
一部の熟練者へ深夜勤務や設備トラブル対応が集中している
という業務構造が確認されました。

そこで、
深夜勤務の配分を見直す。
突発対応を複数人で担える当番体制を検討する。
対応可能な従業員を増やすための教育を行う。
などを実施します。

産業医からは、深夜勤務や連続勤務等が健康へ与える影響について助言を受け、衛生委員会等でも改善状況を確認します。

高ストレス者面談後の職場改善で注意すべき4つのこと

職場環境改善へストレスチェック等の情報を活用する際には、従業員のプライバシーを適切に保護することが前提です。

個人のストレスチェック結果や面接指導の申出情報を不必要に共有したり、集団分析から個人を推測したりする運用は避けます。

職場環境改善へデータを活用するほど、利用目的・共有範囲・閲覧権限を明確にすることが重要です。

高ストレス者や面談申出者を特定しない

職場環境改善を行うために、管理職が、「誰が高ストレス者だったのか」を把握する必要はありません。

また、「誰が法定面接指導を申し出たか」という情報も、健康確保措置の実施に必要な範囲を超えて管理職等へ共有しないことが重要です。

ストレスチェックの個人結果は、原則として本人の同意なく事業者へ提供されません。

職場改善では、個人を識別できない集団分析等の組織情報を利用することを基本とします。

少人数集団の分析方法と共有範囲に配慮する

少人数集団では、集団分析の結果から個人の回答内容を推測される可能性があります。

2026年9月時点の厚生労働省指針では、分析単位が10人を下回る場合、原則として対象者全員の同意がなければ集団分析結果を事業者へ提供できません。

ただし、個人を特定されるおそれのない方法で分析する場合には例外があります。

その場合も、集計方法や対象集団の規模について衛生委員会等で事前に調査審議します。

また、2027年4月1日からは、集団分析は「特定の個人を識別することができない方法」で行うことが省令上明文化されます。

さらに集団分析結果は、対象集団の管理者等にとって評価につながり得る情報でもあるため、必要な範囲を超えて社内で共有しないことも重要です。

集団分析結果を管理職の査定へ直接利用しない

集団分析で心理的負担の高い傾向が確認されたとしても、

「管理職が悪い」と直ちに判断することはできません。

背景には、
人員不足。
繁忙期。
組織変更。
経営上の制度や業務プロセス。
など、管理職個人では変更できない要因がある可能性もあります。

厚生労働省指針でも、集団分析結果については、対象集団の管理者等に不利益が生じないよう取扱いに注意することが求められています。

誰を評価するかではなく、どの職場要因を改善するかを検討するための情報として活用します。

改善活動そのものを現場の負担にしない

職場環境改善のために、
新しい会議。
新しいアンケート。
新しい研修。
新しい報告書。
を次々に追加した結果、従業員や管理職の負担が増えては本末転倒です。

改善策を検討する際には、
既存の会議へ組み込めないか。
既存のシステムを利用できないか。
新しい手順を追加する代わりに不要な作業を減らせないか。
も確認します。

改善活動によって新たな負担が生じていないかまで確認することが重要です。

産業医クラウドで面談後の職場改善まで支援

高ストレス者への対応と職場環境改善では、

  • 本人への面接指導。
  • 医師意見を踏まえた就業上の措置。
  • 必要なフォロー。
  • ストレスチェック。
  • 集団分析の活用。
  • 職場巡視。
  • 衛生委員会等での検討。


など、複数の産業保健活動が関係します。

これらを人事担当者だけで判断・運用することは容易ではありません。

特に、
健康状態と仕事内容の関係をどう評価するか。
健康情報を誰まで共有するか。
集団分析結果をどのように読み取るか。
検討している改善策が健康面から適切か。
といった部分では、産業医等の専門的な助言を活用できます。

産業医クラウドでは、

  • 産業医の選任支援。
  • 従業員面談。
  • 産業保健師による支援。
  • ストレスチェック。
  • 職場巡視。
  • 衛生委員会運営支援・各種マニュアル整備。
  • 復職・就労支援。

などを通じて、企業の産業保健体制づくりを支援しています。

産業医を、「高ストレス者へ面接を行う医師」としてだけではなく、個人については、健康状態と仕事との関係を医学的に評価し、必要な就業上の措置について意見を示す。

組織については、個人を識別できない集団分析、職場巡視、勤務状況などを踏まえ、職場環境改善について助言する。

という役割で活用することが重要です。

複数拠点がある企業では、

  • 情報提供の方法。
  • 面接指導の運用。
  • 医師意見の取扱い。
  • 集団分析結果の共有方法。
  • 職場環境改善の進め方。

など、共通化できる業務を整理すると、継続的な産業保健体制を構築しやすくなります。

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高ストレス者面談後の職場改善に関するよくある質問

高ストレス者面談後の職場改善は企業の義務ですか?

高ストレス者から法定の申出があった場合には、事業者は医師による面接指導を実施し、その結果について医師から意見を聴き、必要があると認めるときは適切な就業上の措置を講じます。

一方、ストレスチェック結果の集団ごとの集計・分析と、その結果を踏まえた職場環境改善については、2026年9月時点では努力義務です。

ただし、厚生労働省の指針でも、職場におけるストレスの原因を把握し、必要に応じて職場環境改善を行うことの重要性が示されています。

そのため、
長時間労働が継続している。
職場の業務負荷に偏りがある。
集団分析で継続的な課題が確認されている。

場合などには、法的な義務の有無だけでなく、従業員の健康障害を未然に防ぐ観点から改善を検討することが重要です。

面談で従業員が話した内容を職場改善へ使えますか?

本人を特定できる面接指導や健康相談の内容を、そのまま管理職や衛生委員会へ職場改善の情報として共有することは避ける必要があります。

面接指導結果について企業へ提供される情報も、健康確保措置に必要な範囲へ限定することが基本です。

職場環境改善では、
個人を識別できない集団分析。
勤怠等の組織データ。
職場巡視。
職場全体を対象としたアンケート・意見聴取。
などを利用します。

産業医から職場環境に関する助言を受ける場合も、個々の相談者を特定できる情報を開示しない形で行うことが重要です。

集団分析で結果が悪い部署から改善すればよいですか?

集団分析から心理的負担が高い傾向のある職場を確認し、優先的に状況を確認する方法は考えられます。

ただし、集団分析の数値が高い=原因が判明したという意味ではありません。

勤怠。
人員配置。
組織変更。
職場巡視。
従業員の意見。
なども確認し、

健康への影響。
課題が継続しているか。
影響を受ける範囲。
改善可能性。
などを踏まえて優先順位を検討します。

少人数部署では集団分析をどのように行いますか?

少人数部署では、個人のストレスチェック結果が推測されないよう特に注意が必要です。

2026年9月時点の指針では、集団分析の単位が10人を下回る場合、原則として対象者全員の同意がなければ結果を事業者へ提供できません。

一方、個々の労働者が特定されるおそれのない方法で分析した場合には例外があります。

例えば、分析目的に応じて複数部署をまとめるなど、より大きな集団単位を設定する方法を検討します。

具体的な集計方法・集団規模については実施者や産業医等と相談し、衛生委員会等でも事前に調査審議します。

分析の細かさよりも、個人が特定されないことを優先することが必要です。

職場改善は誰が中心になって進めますか?

企業の体制によって異なりますが、人事・労務部門や安全衛生担当者等が事務局となり、

経営層。
産業医等の産業保健スタッフ。
衛生委員会等。
管理職。
従業員。
と連携して進める方法があります。

例えば、
産業医は健康面から助言する。
衛生委員会等では職場環境改善について調査審議する。
管理職は現場の業務調整を実施する。
経営層は必要な人員・予算・制度変更を検討する。
といった役割分担が考えられます。

ただし、この役割分担が法律上一律に決められているわけではありません。

自社の体制に合わせて、誰が企画・実施・確認を担当するかを明確にすることが重要です。

職場改善の効果はいつ確認すればよいですか?

次回のストレスチェックまで必ず1年間待つ必要はありません。

施策の内容に応じて、実施後に適切な時期を設定し、
時間外労働。
休暇取得。
欠勤等の勤務状況。
業務量。
従業員からの意見。
などを確認します。

「3か月後」「6か月後」は実務上の設定例であり、一律の法定期間ではありません。

重要なのは、施策を実施したかと、施策を実施した結果、職場の状況にどのような変化があったかを分けて評価することです。

産業医には職場改善について何を相談できますか?

産業医には、
集団分析結果の見方。
職場環境上の健康リスク。
改善策が健康へ与える影響。
職場巡視で確認すべき事項。
衛生委員会等で検討する内容。
などについて助言を求めることができます。

一方、産業医が企業に代わって、
人員を増やす。
業務分担を変更する。
会議を廃止する。
承認手順を変更する。
といった経営・業務上の意思決定を行うわけではありません。

産業医等が産業保健上の意見・助言を示し、企業が具体的な改善策を検討・実施するという役割分担が基本です。

まとめ|高ストレス者面談後は個別支援を組織的な職場改善へつなげる

高ストレス者への面接指導後に、
時間外労働を制限した。
担当業務を軽減した。
必要なフォローを行った。
という個人対応だけで終わらせず、組織レベルでも職場環境上の課題がないか確認することは重要です。

ただし、「その従業員がなぜ高ストレスになったのか」という個人の健康情報を、そのまま組織分析へ利用するわけではありません。

個人については、面接指導を行った医師からの意見を踏まえ、必要な健康確保措置を行います。

組織については、
個人を識別できない集団分析 + 勤怠等の組織情報 + 職場巡視 + 従業員からの意見
などを用いて職場環境を評価します。

そして、
データから課題を仮定する
→ 他の情報で実態を確認する
→ 改善可能な職場要因を特定する
→ 具体的な施策を検討する
→ 実施する
→ 適切な時期に結果を確認する
→ 必要に応じて改善策を見直す
という流れで進めます。

効果が確認できない場合にも、従業員が悪い、管理職が悪いと個人へ原因を求めるのではなく、

施策そのものが実行されていたか。
最初に立てた課題の仮説が適切だったか。
改善策が原因に対応していたか。
を確認します。

また、
利用するデータ。
情報の共有範囲。
課題の整理方法。
改善施策の記録方法。
担当者。
確認時期。
など、標準化できる業務は共通化しておくと、担当者や事業場が変わっても継続的に職場環境改善を進めやすくなります。

ただし、すべての部署へ同じ施策を機械的に適用するのではありません。

一つの職場で効果がみられた改善策についても、他の職場に同じ課題があるかを確認したうえで展開します。

産業医についても、「高ストレス者へ面接を行う医師」としてだけではなく、「個人については、健康状態と仕事との関係を医学的に評価し、必要な就業上の措置について意見を示す。」、「組織については、個人を識別できない集団分析や職場巡視、勤務状況等を踏まえ、従業員の健康という観点から職場環境改善について助言する。」という役割で活用することが重要です。

高ストレス者面談を個人対応だけで終わらせず、ストレスチェック制度全体から得られる適切な情報を職場環境改善へ活用する。

個人の健康情報を守りながら、企業側で変更できる仕事上の要因を見つけ、改善と評価を継続することが、メンタルヘルス不調の未然防止と、働きやすい職場づくりにつながります。

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株式会社Avenirは株式会社メンタルヘルステクノロジーズ(東証グロース9218)の100%子会社です。
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監修:刀禰真之介(株式会社メンタルヘルステクノロジーズ代表取締役社長、株式会社Avenir代表取締役社長)