従業員がメンタルヘルス不調などで休職した場合、復職時に「診断書は必要なのか」「すぐにもらえるのか」と迷う企業担当者は少なくありません。復職診断書は、従業員の回復状況を確認する重要な資料ですが、診断書が提出されたからといって、すぐに復職を認めてよいとは限りません。
本記事では、復職診断書が必要になる場面やもらい方、すぐもらえるケースともらえないケース、提出時の注意点を解説します。あわせて、主治医の診断書と産業医の意見を踏まえた復職判断の進め方も紹介します。
復職時に診断書は必要?不要?
復職にあたっては、会社で諸手続きが必要です。
そのため、実際に復職できる日が診断書に記載された復職可能日から数週間遅れることもあり、
「診断書上で示された休職期間ではないのに休職している期間」が発生してしまいます。
実際に復職をする日をあらかじめ従業員と会社で確認し合い、
「◯月◯日以降復職可能」と診断書に明記してもらうことで、こういったトラブルを回避できます。
復職時の診断書のもらい方
復職時の診断書は、主治医からもらうことになりますが、単純に休職者が「欲しい」と言えばもらえるものではありません。
復職時の診断書のもらい方の流れは、3ステップに分けられます。

休養に専念する
休職中は、復職のことはなるべく考えないようにして、休養に専念します。
規則正しい生活を心がけ、生活習慣を整えることも大切です。
主治医から復職可能と診断を受ける
症状が回復し、復職の準備が整ったら、復職可能かどうか主治医と相談してみます。
メンタル不調で休職をしている方は、復職に向けて気持ちだけ焦ってしまっていることも少なくありません。
本当に復職が可能かどうか、慎重に見極める必要があります。
診断書を書いてもらう
主治医から復職が可能と判断されたら、診断書を書いてもらいます。
その際、復職時期の記載には注意が必要です
復職診断書がすぐもらえるケース
復職診断書は、希望すれば必ずその場ですぐもらえるものではありません。医師が「復職しても安全に働ける状態」と判断できる材料がそろっている場合に、比較的短期間で発行される可能性があります。
特に、継続的に通院している、症状が安定している、会社指定の書式や提出期限が明確であるといったケースでは、診断書の発行がスムーズに進みやすくなります。
一方で、初診でいきなり復職診断書を依頼する場合や、症状の経過が不明な場合は、すぐに発行されないこともあります。「すぐもらえるか」だけでなく、「医師が復職可能と判断できる状態か」を確認することが重要です。

医師が症状を把握し病状が安定している場合
休職中も定期的に通院しており、主治医が症状の経過を十分に把握している場合は、復職診断書を比較的早く発行してもらえる可能性があります。
医師は、過去の診察記録、服薬状況、症状の変化、生活リズムの安定度などをもとに復職可否を判断します。継続的な通院があると、現在の状態だけでなく、回復の過程も確認できるため、診断書作成の判断がしやすくなります。
反対に、通院が中断していた場合や、初診で復職診断書だけを依頼する場合は、医師が十分な判断材料を持てないため、すぐに発行されないことがあります。企業側も、休職中は本人に必要な通院を継続してもらうよう丁寧に案内することが大切です。
簡易的・一般的な診断書の場合
会社から特別な指定書式がなく、「復職可能であること」を示す一般的な診断書であれば、比較的短期間で発行されることがあります。
一方で、就業制限、勤務時間、残業可否、業務内容の制限、異動の必要性など、詳細な記載を求める場合は、医師が慎重に確認するため発行まで時間がかかることがあります。特にメンタルヘルス不調では、配慮事項の書き方によって復職後の働き方に大きく影響するため、簡単に作成できない場合もあります。
企業側は、診断書に何を記載してほしいのかを事前に整理し、必要以上に細かい医学的判断を求めすぎないことも大切です。実務上の配慮は、産業医面談で補足して確認するとスムーズです。
予約時点で相談していた場合
診察予約の時点で「復職診断書を相談したい」と伝えておくと、医療機関側も必要な準備をしやすくなります。
たとえば、会社指定の書式、提出先、提出期限、復職希望日、勤務条件などが事前に分かっていれば、診察時に確認すべき内容が明確になります。診察当日に突然依頼するよりも、診断書の発行がスムーズになる可能性があります。
人事担当者は、従業員に対して「診察時に診断書が必要なことを伝える」「会社指定書式があれば持参する」「復職希望日を医師へ伝える」といった具体的な準備を案内しておくとよいでしょう。
規模が小さいクリニックを受診する場合
小規模なクリニックでは、医師と事務部門の連携が取りやすく、診断書の発行が比較的早い場合があります。大きな病院では、文書作成窓口や院内手続きが必要になり、発行までに日数がかかることもあります。
ただし、医療機関の規模だけで発行スピードが決まるわけではありません。主治医が復職可能と判断できるか、必要な情報が揃っているか、診断書の内容が複雑でないかによっても変わります。
企業側は、従業員に対して「いつ発行されるか」を医療機関に確認してもらい、復職面談や産業医面談の日程を余裕を持って調整することが重要です。
必要な情報が揃っている場合
復職診断書の発行をスムーズにするには、必要な情報を事前に揃えておくことが重要です。会社名、提出先、提出期限、復職希望日、会社指定の書式、必要な記載事項などが明確であれば、医師や医療機関側の確認作業を減らせます。
特に、時短勤務や残業制限などの配慮事項が必要な場合は、どのような働き方を想定しているのかを本人が主治医へ説明できるようにしておくとよいでしょう。
情報が不足していると、診断書の再発行や追加確認が必要になり、復職手続き全体が遅れる可能性があります。人事担当者は、復職前に必要書類と確認事項を一覧化し、従業員へ早めに共有することが大切です。
復職診断書がもらえないケース
復職診断書は、本人が希望すれば必ず発行されるものではありません。医師が「復職にはまだ早い」と判断した場合や、復職後の安全性に不安がある場合は、診断書が発行されないことがあります。
特にメンタルヘルス不調では、症状が一時的に軽くなっていても、生活リズムやストレス耐性が十分に回復していないケースがあります。企業側も、診断書がもらえない理由を本人の意欲不足と捉えるのではなく、再発防止の観点から慎重に対応することが必要です。

症状が一定以上回復していない場合
抑うつ気分、不安、不眠、意欲低下、集中力低下などの症状が残っている場合、医師は復職診断書を発行しないことがあります。
本人が「職場に戻りたい」と考えていても、勤務を再開することで症状が悪化する可能性があれば、主治医は慎重に判断します。特に、通勤や人間関係、業務負荷が大きなストレス要因となっていた場合、十分な回復を待たずに復職すると再休職につながるおそれがあります。
企業側は、復職を急がせるのではなく、主治医の判断を尊重しながら、休職期間の延長や段階的な復職支援を検討することが重要です。
職場のサポート体制が整備されていない場合
復職後の業務内容、勤務時間、上司のフォロー体制、相談先などが不明確な場合、医師が復職に慎重になることがあります。
たとえば、休職前と同じ業務量にすぐ戻る、長時間労働が続く、相談できる上司がいないといった環境では、再発リスクが高まります。主治医が職場環境に不安を感じた場合、復職診断書の発行を見送ることもあります。
人事担当者は、復職前に受け入れ部署と連携し、業務量の調整、残業制限、定期面談、相談窓口の設定などを整理しておくことが大切です。職場のサポート体制が明確になることで、復職判断も進めやすくなります。
生活習慣に問題がある場合
復職には、症状の改善だけでなく、就業に耐えられる生活リズムの回復も必要です。昼夜逆転が続いている、朝起きられない、日中に活動できない、外出が難しいといった状態では、勤務継続が難しいと判断されることがあります。
特にメンタルヘルス不調では、生活リズムの乱れが再発のサインになることもあります。医師は、診察時の症状だけでなく、実際に仕事と同じ時間帯で活動できているかを確認します。
復職を目指す従業員には、復職前から就業時間に合わせた起床、外出、軽い作業、通勤練習などを段階的に行ってもらうとよいでしょう。企業側も、復職面談で生活リズムの安定状況を確認することが重要です。
希望する復職タイミングに問題がある場合
従業員本人が早期復職を希望していても、医師が時期尚早と判断すれば、復職診断書は発行されません。
休職期間の満了が近い、収入面の不安がある、職場に迷惑をかけたくないといった理由から、本人が焦って復職を希望するケースは少なくありません。しかし、十分に回復しないまま復職すると、短期間で再休職となり、本人にも会社にも大きな負担が生じます。
企業は、本人の希望だけで復職時期を決めるのではなく、主治医の診断書、産業医面談、職場の受け入れ体制を踏まえて判断する必要があります。場合によっては、休職延長やリワークの活用を検討することも有効です。
復職診断書がもらえる一般的な発行期間
復職診断書の発行期間は、医療機関や診断書の内容によって異なります。すでに継続通院しており、主治医が復職可能と判断できる状態であれば、診察当日や短期間で発行されることもあります。一方で、内容確認や文書作成の手続きが必要な場合は、数日から一定期間かかることがあります。
特に、企業指定の書式がある場合や、勤務制限・業務配慮を詳しく記載する必要がある場合は、通常より時間がかかる可能性があります。初診で復職診断書を求める場合も、医師が症状の経過を確認できないため、すぐに発行されないことがあります。
人事担当者は、復職希望日から逆算して、診断書取得、産業医面談、復職判定、所属部署との調整を進めることが大切です。診断書の提出を待ってから動き出すのではなく、休職期間中から復職手続きの流れを説明しておくと、復職時の混乱を防ぎやすくなります。

復職診断書が必要になる場面
復職診断書は、従業員が職場に戻る際に、健康状態や就業可否を確認するための資料として活用されます。特にメンタルヘルス不調による休職では、再休職防止や安全配慮義務の観点から、診断書の確認が重要になります。
- 休職期間満了後に職場へ復帰する場合
休職期間を終えて復帰する際、従業員が就業可能な状態まで回復しているかを確認するために提出を求めます。 - 予定より早く復職したい場合
当初の休職予定より早く復職を希望する場合、前倒し復職が医学的に妥当かを確認するために必要になります。 - 時短勤務や業務内容の制限を申し出る場合
残業制限、時短勤務、業務量の調整などが必要な場合、医師の意見を確認する資料として活用されます。 - 産業医面談を実施する場合
産業医が復職可否や就業上の配慮を検討する際、主治医の診断書は重要な判断材料になります。 - 復職判定会議を行う場合
人事、上司、産業医などが復職可否を協議する場で、診断書は判断の土台となります。
復職診断書に関する相談なら産業医クラウド
復職診断書が提出された後、企業は「復職を認めるか」「どのような働き方から再開するか」「どの程度の配慮が必要か」を判断しなければなりません。しかし、主治医の診断書だけでは、実際の業務に耐えられるか、再休職リスクがどの程度あるかまで判断しきれない場合があります。
そこで重要になるのが、産業医による復職面談です。産業医は、主治医の診断書、本人の状態、職場環境、業務負荷を踏まえて、復職可否や就業上の配慮について会社へ助言します。人事担当者だけで判断を抱え込まないことで、従業員本人にとっても会社にとっても納得感のある復職支援につながります。
産業医クラウドでは、メンタルヘルス対応に強い産業医の紹介に加え、復職面談、就業配慮の助言、再休職防止のフォロー、ストレスチェック対応など、企業の産業保健体制づくりを支援しています。
復職診断書の扱いに迷っている、産業医面談の体制を整えたい、休職者対応を属人的にしたくないという企業担当者の方は、産業医クラウドへご相談ください。専門的な視点を取り入れることで、復職判断の不安を減らし、従業員が安心して働き続けられる環境づくりを進められます。
復職診断書を提出する際の注意点
復職診断書を提出する際は、提出日や提出先だけでなく、診断書を受け取った後の社内対応まで整理しておくことが大切です。診断書には「復職可能」と記載されていても、会社側では就業規則に基づく確認、産業医面談、所属部署との調整、復職後の業務配慮の検討が必要になる場合があります。
特にメンタルヘルス不調からの復職では、本人の希望と職場の受け入れ体制が合わないと、復職後に再び不調が悪化する可能性があります。人事担当者は、診断書の内容を確認したうえで、従業員本人、上司、産業医と連携し、無理のない復職計画を立てることが重要です。
提出するタイミングを決めておく
復職診断書は、復職希望日の直前ではなく、会社が復職可否を検討できる余裕を持って提出してもらうことが重要です。診断書の提出後には、人事面談、産業医面談、所属部署との調整、勤務時間や業務内容の検討が必要になる場合があります。
提出が遅れると、診断書上は復職可能であっても、社内手続きが間に合わず、実際の復職日が後ろ倒しになることがあります。企業は就業規則や休職規程で提出期限を明確にし、休職開始時や復職が近づいた段階で従業員へ案内しておくとスムーズです。
提出先を事前に確認しておく
復職診断書の提出先は、人事部、総務部、直属の上司、産業医窓口など、企業によって異なります。提出先があいまいなままだと、個人情報の管理ミスや復職手続きの遅れにつながる可能性があります。
メンタルヘルスに関する診断書には、病名や就業上の配慮事項など、慎重に扱うべき情報が含まれることがあります。企業側は、提出先、提出方法、保管方法、閲覧できる範囲をあらかじめ決めておくことが大切です。
従業員にも「誰に」「どの方法で」「いつまでに」提出するのかを明確に伝えることで、復職時の混乱を防ぎやすくなります。
補足内容がある場合は整理しておく
診断書には「復職可能」とだけ記載されていることもあります。しかし、実務上は勤務時間、残業の可否、通勤負荷、業務量、対人対応、出張や夜勤の可否など、より具体的な確認が必要になる場合があります。
診断書だけでは判断が難しい場合、人事担当者は従業員本人に現在の体調や不安を確認し、必要に応じて主治医へ追加の記載を相談してもらいます。また、産業医面談を通じて、職場で実施できる配慮内容を具体化することも重要です。
企業側が確認したい点を整理せずに診断書だけを受け取ると、復職後に「残業はできると思っていた」「業務量を減らす必要があるとは聞いていない」といった認識違いが生じる可能性があります。
復職面談の準備を進めておく
復職診断書を受け取ったら、復職面談の準備を進めます。面談では、現在の体調、通勤の可否、業務への不安、再発防止策、職場で必要な配慮、復職後の相談先などを確認します。
人事担当者だけで復職可否を判断するのではなく、必要に応じて産業医や所属部署の上司も交え、復職後の働き方を具体的に決めることが大切です。
復職初日から通常勤務に戻すのではなく、時短勤務、残業制限、業務量の調整、定期面談などを段階的に実施することで、再休職のリスクを抑えやすくなります。復職面談は、単なる確認の場ではなく、復職後に安定して働くための支援計画を整える場として位置づけることが重要です。
復職可否の主な判断基準
復職可否は、主治医の診断書だけで判断するのではなく、本人の回復状況、職場の受け入れ体制、業務遂行能力、再発リスクなどを総合的に確認して決める必要があります。主治医は病状の回復を判断する立場ですが、実際の職場で安全に働けるかどうかは、会社側が職務内容や職場環境も踏まえて検討しなければなりません。
主な判断基準は以下の通りです。
- 症状が安定しているか
抑うつ、不安、不眠、意欲低下などが改善し、勤務に大きな支障がない状態かを確認します。 - 生活リズムが整っているか
就業時間に合わせて起床・就寝でき、日中に安定して活動できるかを確認します。 - 通勤に耐えられるか
通勤時間や混雑状況を踏まえ、復職後の負担が大きすぎないかを確認します。 - 業務に必要な集中力・判断力が戻っているか
担当業務に応じて、作業継続力、対人対応、判断力が回復しているかを見ます。 - 職場の受け入れ体制が整っているか
時短勤務、業務量の調整、上司との面談体制、相談窓口などが整っているかを確認します。 - 再発防止策が整理されているか
不調のサイン、相談先、業務負荷が高まった場合の対応をあらかじめ決めておくことが重要です。
企業は、これらの基準をもとに産業医の意見を取り入れながら復職可否を判断することで、本人の安全と会社の労務リスク低減の両方につなげられます。
復職診断書の記載内容・例文
復職診断書には、従業員が復職できる状態にあるかを会社が確認するための情報が記載されます。一般的には、氏名、診断名、休職期間、復職可能日、現在の病状、就業上の配慮事項、医師名、医療機関名、発行日などが含まれます。
特に重要なのは、復職可能日と就業上の配慮事項です。「復職可能」とだけ書かれている場合、会社側がいつから、どの範囲で働かせてよいか判断しにくくなります。「〇年〇月〇日以降、復職可能」「当面は時間外労働を避けることが望ましい」など、実務に使える情報があると復職判断がしやすくなります。
記載例は以下のようなイメージです。
診断名:適応障害
上記疾患により休職加療を要していたが、症状は改善傾向にあり、〇年〇月〇日以降の復職は可能と判断する。
なお、復職後しばらくは時間外労働を避け、業務量を段階的に調整することが望ましい。
ただし、診断書は医師が医学的判断に基づいて作成する書類です。企業が希望する文言を一方的に求めるのではなく、必要な確認事項を整理したうえで、従業員を通じて主治医へ相談してもらうことが適切です。
復職診断書の発行費用・相場
復職診断書の発行費用は、医療機関や診断書の種類によって異なります。一般的な診断書であれば比較的少額で発行されることが多い一方、企業指定の書式や詳細な意見記載が必要な場合は、費用が高くなることがあります。
診断書は保険診療ではなく自費扱いとなることが多いため、従業員には費用が発生する可能性を事前に案内しておくとよいでしょう。特に、会社指定の書式や追加の意見書を求める場合は、費用負担をめぐって認識違いが生じやすくなります。
人事担当者は、就業規則や休職規程に「診断書の提出義務」「費用負担」「追加資料が必要な場合の扱い」を明記しておくことが大切です。費用の扱いを事前に整理しておけば、復職時の不要なトラブルを防ぎやすくなります。
復職判断のために提出される診断書の料金は会社が負担する必要はない
ポイント:社員に、自らが債務の本旨に従った労務提供ができる健康状態に回復したことを明らかにする責任があり、その裏付けとして提出する診断書の費用は本来本人が負担すべきと考えられます。
従業員の労務提供義務
従業員は使用者に対し、雇用契約の債務の本旨に従い労務を提供する義務を負っています。従業員が、私傷病に羅患し、労務の全部又は一部を遂行できない場合には、雇用契約の債務の本旨に従った労務提供がなされているとはいえず、使用者は当該従業員から労務提供を受ける必要はなく、また、賃金を支払う義務も負わないと考えられます。(ただし、提供不能な労務の部分がわずかである場合や、他の労働者の担当労務と調整するなどして提供可能な労務のみに従事させることが容易にできる場合など、使用者が労務提供を受領すべき場合もあると解されています。)
診断書の費用は従業員本人が負担
従業員が一度、私傷病により完全な労務提供ができない健康状態に陥った場合には、かかる健康状態が継続していると考えているのが通常ですから、完全な労務提供ができる健康状態に回復したのであれば、従業員自らにそのことを明らかにする責任があります。そして、診断書の提出は、従業員が完全な労務的提供できる健康状態にあることを裏付けるために使用者に提出するものですから、その費用は本来従業員本人が負担すべきものであると考えます。
次に、従業員が復職可能という診断書を提出してきた場合であっても、主治医の診断書は多くの場合、当該従業員の職務内容を認識したうえで記載されているものとはいえないし、従業員や家族の復職の意向をうけてその旨の診断書が作成されることが少なくないため、主治医の意見をそのまま受け入れて復職と判断するのは相当ではありません
まず、主治医と面談し、従業員の病状を聴き、職務内容を説明したうえで結果をもってしても、復職判断が困難な場合には、当該従業員に産業医や専門医に受診させ、産業医や専門家の意見も聴取したうえで、会社が最終的に復職可否の判断を行うべきです。
この場合の産業医や専門医の受診費用や意見書作成費用の負担については、会社が従業員の提出した診断書の内容だけでは判断できないことから従業員に命じて受診させるものですから、会社が負担すべきと考えます。
なお、主治医から復職可の診断がなされている場合に、産業医等の意見を聴くことなく会社が復職不可と判断し退職させると、当該退職は無効と判断されるリスクがありますが、会社が費用を負担して従業員に産業医等に受診するように命じたにもかかわらず、産業医等に受診しない場合には、かかる事実と主治医の事情聴取結果を考慮して、最終的に復職不可と判断することはあり得ると考えます。
(弁護士・鳶近幸恵)
労務リスクを削減するには復職時の取り決めが大切
休職制度については、就業規則などにより合理的な制度を設けておくことが考えられ、また具体的に従業員がが休職に入ることになった場合には、休職と復職に関して合意しておくことも考えられます。また、診断書の内容はどういったものをもらう必要があるのか、どういった診断内容であれば復職が可能なのかなど産業医と実治療にあたっている医師との連携が復職には不可欠です。産業医クラウドでは復職プログラムに力をいれて対応しており、復職に至るまでにプロセスのアドバイスが可能な産業医をご紹介できます。ぜひ一度ご相談ください。
リワークについては「Rodina」さんのコラムにも
詳しい説明が記載されていますので、あわせてご参照ください。
関連記事:復職時の診断書のもらい方。主治医が認めないときの対策ポイントもご紹介|リワークセンター【Rodina】
復職診断書に関するよくある質問
診断書の記載日より早く復職することは可能ですか?
診断書に記載された復職可能日より早く復職することは、慎重に判断する必要があります。医師が「〇月〇日以降に復職可能」と記載している場合、それ以前は医学的に復職に適した状態ではないと判断している可能性があります。
本人が早く復帰したいと希望していても、無理な前倒し復職は再休職や症状悪化の原因になりかねません。どうしても復職時期を早めたい場合は、主治医に再度相談し、必要に応じて新たな診断書を発行してもらうことが望ましいです。
企業側も本人の希望だけで復職を認めるのではなく、産業医面談や人事面談を通じて、復職の安全性を確認することが重要です。
復職診断書はいつ提出すればいいですか?
復職診断書は、復職希望日より前に余裕を持って提出してもらうことが望ましいです。会社側では、診断書を確認した後に、人事面談、産業医面談、所属部署との調整、勤務配慮の検討を行う必要があるためです。
提出が復職直前になると、社内手続きが間に合わず、予定通りに復職できないことがあります。特にメンタルヘルス不調からの復職では、復職後の業務量や勤務時間を慎重に決める必要があります。
企業は、就業規則や休職規程で診断書の提出期限を定め、従業員へ早めに案内しておくとよいでしょう。
主治医の診断書と産業医の意見書の違いは何ですか?
主治医の診断書は、治療を担当する医師が病状や回復状況を医学的に記載する書類です。主に「病気がどの程度回復しているか」「復職可能と考えられるか」を示します。
一方、産業医の意見書は、従業員が実際の職場で安全に働けるか、どのような就業上の配慮が必要かを会社へ助言するものです。産業医は、本人の状態だけでなく、業務内容、勤務時間、職場環境、再発リスクを踏まえて判断します。
そのため、復職判断では主治医の診断書だけでなく、産業医の意見も確認することが望ましいです。両者の役割を分けて考えることで、より実態に合った復職支援を行いやすくなります。
【まとめ】復職診断書がすぐもらえるケース
復職診断書がすぐもらえるかどうかは、医師が症状の経過を把握しているか、病状が安定しているか、会社指定の書式や提出期限など必要な情報が揃っているかによって変わります。継続的に通院しており、主治医が復職可能と判断できる状態であれば、比較的短期間で発行されることがあります。
一方で、症状が十分に回復していない場合、生活リズムが整っていない場合、復職後の職場環境に不安がある場合は、診断書がすぐに発行されないこともあります。「早く診断書をもらうこと」だけを目的にするのではなく、安全に働き続けられる状態かを確認することが大切です。
企業側は、診断書が提出されたからといってすぐに復職を認めるのではなく、産業医面談や復職面談を通じて、職場での就業可否を慎重に判断する必要があります。主治医の診断書と産業医の意見を組み合わせることで、再休職防止と労務リスクの低減につながります。
産業医クラウドでは、復職診断書の確認、産業医面談、就業上の配慮、再休職防止に向けたフォローまで、企業の休職・復職対応を支援しています。復職判断に不安がある企業担当者の方は、専門家の助言を取り入れながら、従業員が安心して働き続けられる体制を整えていきましょう。
休職の際の際の手順や給与・復職について、
