産業医ナビは、3,500社以上・22,000事業場以上の産業保健を支援する株式会社Avenirが運営する、人事・労務担当者向けの専門メディアです。
産業医、産業保健師、ストレスチェック、メンタルヘルス、休職・復職、リワーク、健康経営について、実際の企業支援で得られた知見をもとに解説します。

高ストレス者面談で人事担当者が注意すべきこと|情報管理と面談後の対応を解説

高ストレス者面談を適切に運用するためには、産業医などの医師へ面談を依頼するだけでは不十分です。

企業側では、

従業員への制度案内
→ 申出の受付
→ 必要な勤務情報の準備
→ 面談日程の調整
→ 医師意見の受領
→ 必要な就業上の措置
→ 必要に応じたフォロー・再評価

まで、一連の流れを滞りなく進める体制を整える必要があります。

一方で、特に注意したいのが、「企業が健康確保のために取り扱う必要がある情報」と「企業内で広く共有する必要のない詳細な健康情報」を混同しないことです。

ストレスチェックや医師による面接指導では、

  • ストレスチェックの個人結果。
  • 心身の状態。
  • 治療状況。
  • 服薬状況。
  • 仕事以外のストレス要因。

など、機微性の高い情報が扱われる場合があります。

これらを人事担当者や管理職が必要以上に取得・共有すれば、

「産業医へ相談すると会社にすべて知られるのではないか」
「ストレスチェックの結果が人事評価へ使われるのではないか」

という不安につながる可能性があります。

その結果、本当に支援が必要な従業員が面接指導や健康相談を利用しにくくなっては、制度の目的を十分に果たせません。

健康情報を適切に管理することは、法令遵守だけではなく、従業員が安心して産業保健サービスを利用できる環境をつくるうえでも重要です。

一方で、「健康情報だから人事は何も知ってはいけない」という考え方も適切ではありません。

企業は、医師の意見を踏まえて必要な就業上の措置を実施する必要があります。

そのため、詳細な医学情報は主として産業保健業務従事者が適切に取り扱い、企業側の担当者には健康確保措置を実施するために必要な範囲の情報を提供するという役割分担が重要です。

本記事では、高ストレス者面談で人事担当者が注意すべき情報管理、産業医との連携、面談後の就業上の措置、必要に応じた再評価までを実務に沿って解説します。

コミュニケーションや事務能力に疑問…
質の高い産業医に依頼したいとお考えではないでしょうか?

産業医紹介サービスを検討している企業様必見!
産業医クラウドなら独自の研修を受け、スキルチェックも通過した、厳選された産業医をご紹介します。

お役立ち資料ダウンロード

目次

高ストレス者面談における人事担当者の役割

高ストレス者面談における人事担当者の役割は、ストレスチェック結果を独自に確認して高ストレス者を探し出すことではありません。

また、「高ストレス者なのだから必ず面接指導を受けてください」と法定の面接指導を強制することもできません。

企業側で重要なのは、ストレスチェックから面接指導、医師意見、必要な就業上の措置までが適切に進む制度と運用体制を整えることです。

具体的には、

  • 申出窓口の整備
  • 面接指導を担当する医師の確保
  • 面談日程の調整
  • 必要な勤務情報の準備
  • 医師意見の受領
  • 就業上の措置の検討・実施
  • 必要に応じたフォロー・再評価の管理

などを行います。

ただし、「人事担当者」と一括りにするのではなく、ストレスチェック制度上の役割を区別することが重要です。

労働者の解雇、昇進、異動について直接の権限を持つ監督的地位にある者は、個人結果などを扱うストレスチェックの実施事務に従事できません。

一方、直接の人事権を持たない人事担当者は、実施事務従事者として適切に指名された場合には、実施者の指示の下で制度運用に必要な実施事務を担当することができます。

したがって、
「人事部だから見られない」
「人事部だからすべて見られる」
のどちらでもありません。

どの役割の担当者が、どの情報を、何の目的で取り扱うのかを明確にすることが重要です。

人事担当者が混同しやすい3種類の情報

高ストレス者対応では、少なくとも次の3種類の情報を区別して取り扱うと整理しやすくなります。

  • ストレスチェックの個人結果
  • 医師による面接指導結果
  • 医師が医学的評価のために取り扱う詳細な健康情報

なお、これは法令上「3種類」に分類されているという意味ではなく、適切な情報管理を行うための実務上の整理です。

それぞれ、
誰が取り扱うのか。
何の目的で利用するのか。
誰まで共有する必要があるのか。
が異なります。

すべてを通常の人事共有フォルダへ保存し、人事部内で自由に閲覧できるような運用は避ける必要があります。

ストレスチェックの個人結果

ストレスチェックの個人結果は、実施者から本人へ直接通知されます。

原則として、本人の同意なくストレスチェック結果を事業者へ提供することはできません。

そのため、実施事務に関与していない通常の人事担当者が、「高ストレス者一覧をください」と結果を取得し、対象者へ独自に連絡するような運用は適切ではありません。

一方、直接の人事権を持たず、ストレスチェックの実施事務従事者として適切に指名された人事担当者であれば、実施者の指示に基づいて、面接指導の申出勧奨など必要な実施事務を担当することは可能です。

また、本人が法定の面接指導を事業者へ申し出た場合には、事業者はその従業員が面接指導対象者であることを把握します。

事前に労働者へ周知している場合には、その申出をもってストレスチェック結果の事業者への提供に同意したものとみなす運用も認められています。

一方、衛生委員会等で方法を定め、ストレスチェック結果そのものを提供させず、実施者へ面接指導対象者であることだけを確認する方法もあります。

いずれの場合でも、取得したストレスチェック結果を人事担当者や管理職が健康確保に必要な範囲を超えて自由に閲覧・利用してよいわけではありません。

医師による面接指導結果

医師による面接指導後、事業者は健康保持のために必要な措置について医師から意見を聴取します。

例えば、

通常勤務を継続できるか。
時間外労働等を制限する必要があるか。
深夜勤務等への配慮が必要か。
業務負荷を調整する必要があるか。
療養が必要か。

などについて医学的意見が示される場合があります。

企業側の担当者が必要とするのは、健康確保措置を行うための具体的な判断材料です。

例えば、「業務負荷への配慮が必要」とだけ記載されていて具体的な対応を判断できない場合には、

どのような業務を制限すべきか。
どの程度の労働時間が適切か。
いつ頃状態を確認すべきか。

などを医師へ確認します。

ただし、
「1か月間残業禁止」
「2週間後に再面談」
といった数値・期間に一律の基準があるわけではありません。

本人の健康状態や仕事内容等に応じて個別に設定します。

人事担当者に必要なのは病名そのものではなく、企業としてどのような健康確保措置を行う必要があるのかという情報です。

産業医が保有する詳細な面談記録

医師が面接指導や医学的評価のために取り扱う詳細な情報には、

  • 具体的な症状
  • 治療状況
  • 服薬状況
  • 家庭等の仕事以外の事情
  • 本人の具体的な訴え

などが含まれる場合があります。

こうした詳細な医学・健康情報を、人事担当者や管理職がすべて取得する必要はありません。

詳細な医学情報については、産業医等の産業保健業務従事者が中心となって取り扱い、事業者側の担当者へ提供する際には、健康確保に必要な範囲へ適切に整理・加工することが重要です。

そのため、人事担当者が医師へ確認すべき中心的な内容は、「本人は何を話していましたか」ではなく、「企業としてどのような対応が必要ですか」です。

なお、詳細な面談記録を誰が保存するかは、社内産業医、外部産業医、外部委託機関など、企業の体制によって異なります。

「産業医個人が保管する」と一律に決めるのではなく、健康情報取扱規程や委託契約等で保存主体、保存場所、閲覧権限を定める必要があります。

高ストレス者面談で人事担当者が注意すべき9つのこと

高ストレス者への面接指導では、通常の人事面談とは異なり、健康情報を取り扱う範囲や役割分担について特に慎重な運用が必要です。

ここでは、人事担当者が注意したい9つのポイントを整理します。

1.本人の同意なく個人結果を確認しない

ストレスチェックの個人結果は、原則として本人の同意なく事業者へ提供することはできません。

そのため、ストレスチェックの実施事務に関与していない人事担当者が高ストレス者の個人結果を取得し、独自に対象者へ連絡するような運用は避けます。

一方、適法に指名された実施事務従事者は、実施者の指示の下で、高ストレス者への面接指導申出の勧奨などを行うことができます。

つまり重要なのは、「人事かどうか」ではなく、「ストレスチェック制度上どの役割として情報を取り扱っているか」です。

通常の人事担当者は、
案内文。
申出窓口。
面接指導を担当する医師。
面接後の企業側の対応フロー。
など、個人結果そのものを必要としない制度運営を中心に担当します。

2.直接的な人事権を持つ者を実施事務から外す

ストレスチェックを受ける従業員について、解雇、昇進、異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの実施事務に従事することはできません。

ここで重要なのは、「人事部に所属しているか」だけで判断しないことです。

人事部の職員であっても、対象労働者の解雇・昇進・異動について直接の権限を持っていなければ、実施事務従事者として指名することは可能です。

その場合には、実施者の指示の下で業務を行い、業務上知り得た秘密を適切に保持する必要があります。

誰がどの権限を持ち、どの情報まで取り扱えるのかを社内で明確にすることが重要です。

3.面接指導を受けるよう強制しない

高ストレス者への法定の医師による面接指導は、本人からの申出に基づいて実施します。

したがって、「対象者だから必ず受けてください」と法定の面接指導を強制することはできません。

一方で、実施者または実施事務従事者から、面接指導の対象であることを他の従業員に知られない方法で、申出を勧奨することは制度上想定されています。

本人が申出をしない場合にも、申出をしない理由を人事や上司が繰り返し詮索するような対応は避けます。

必要に応じて、通常の産業医相談、保健師相談、社内外の相談窓口など、法定面接指導以外の相談方法も周知しておくとよいでしょう。

4.申出後の面談実施を遅らせない

本人から医師による面接指導の申出があった場合、事業者は遅滞なく面接指導を実施する必要があります。

この「遅滞なく」は、原則として申出後、概ね1か月以内とされています。

そのため、「次回の産業医定例訪問まで長期間待ってもらう」という運用にならないよう、あらかじめ対応方法を整えておくことが重要です。

例えば、

  • 定例日以外の臨時面談
  • 適切な環境を確保したオンライン面談
  • 必要に応じた他の医師との連携

などを検討します。

また、健康状態から緊急に就業上の措置が必要と考えられる場合には、通常のスケジュールにこだわらず、可能な限り速やかに対応する必要があります。

5.面談に必要な勤務情報を客観的に整理する

面接指導を行う医師が適切に評価するためには、本人からの聞き取りだけでなく、必要に応じて企業から客観的な勤務情報を提供することも重要です。

例えば、

  • 労働時間
  • 休日勤務・深夜勤務
  • 欠勤・遅刻等の勤務状況
  • 担当業務
  • 異動・役割変更
  • 業務負荷の変化

などです。

さらに、自動車運転、危険性のある機械操作、高所作業など、健康状態の変化が本人や第三者の安全へ影響する可能性がある作業についても具体的に伝えます。

「最近元気がない」といった主観的な評価だけではなく、医学的評価の判断材料となる客観的な事実を提供することが重要です。

6.面談内容の詳細を産業医へ求めない

企業側の担当者が把握すべき中心的な情報は、本人が面談で具体的に何を話したかという内容ではありません。

必要なのは、

  • 勤務継続に問題がないか。
  • 時間外労働等の制限が必要か。
  • 業務内容を調整する必要があるか。
  • 医療機関への受診が必要か。
  • 療養を優先する必要があるか。

など、健康確保のための医学的意見です。

診断名、検査値、服薬内容、家庭事情などの詳細な医学・健康情報を、一律に人事担当者へ提供する必要はありません。

取得する健康情報を必要な範囲へ限定することは、従業員のプライバシーを守るだけでなく、企業側の情報管理リスクを抑えることにもつながります。

7.抽象的な医師意見をそのままにしない

医師意見に、「業務上の配慮を要する」とだけ記載されている場合、企業側が具体的な措置を判断できないことがあります。

その場合には、必要に応じて、

  • どの業務を制限する必要があるか
  • 労働時間についてどの程度の配慮が必要か
  • 措置をどの程度継続することを想定しているか
  • いつ頃状態を再確認する必要があるか

などを医師へ確認します。

なお、「1か月残業禁止」「2週間後に再面談」などの期間・数値は、すべての高ストレス者に共通する医学的基準ではありません。

本人の健康状態や仕事内容に応じて個別に設定します。

また、医師から提案された措置を企業側でそのまま実施することが難しい場合には、人事担当者の判断だけで内容を変更するのではなく、

「この業務の完全停止は難しいが、別の方法で負荷を軽減できないか」

など職場の実情を医師へ伝え、代替可能な措置を検討します。

医学的な必要性と職場で実施可能な方法をすり合わせることが、産業医と人事の重要な連携です。

8.面談の申出を不利益な取扱いにつなげない

ストレスチェック制度では、
面接指導を申し出たこと。
ストレスチェック結果の事業者への提供に同意しなかったこと。
などを理由として不利益な取扱いを行ってはいけません。

また、面接指導結果に基づく措置であっても、医師意見と内容・程度が著しく異なる措置や、本人の実情を十分に考慮していない不利益な取扱いは避ける必要があります。

例えば、「産業医面談を申し出たから評価を下げる」といった運用は適切ではありません。

また、健康確保のため時間外労働や特定業務を制限されているという事実だけを、直ちに「能力不足」と評価することにも慎重である必要があります。

健康確保のための措置と、人事評価の根拠となる能力・成果・行動を安易に混同しないことが重要です。

9.上司へ共有する情報を必要最小限にする

直属の上司は、健康確保措置を現場で実施するために一定の情報を把握する必要があります。

しかし、面接指導結果報告書や医師意見書を、そのまま管理職へ共有する必要があるとは限りません。

例えば、
「一定期間、時間外労働を制限する」
「深夜勤務から外す」
「担当業務を一部調整する」
など、現場で実施するために必要な情報を中心に共有します。

一方、診断名、服薬状況、家庭事情、面談で本人が話した詳細な内容など、措置の実施に不要な健康情報まで共有することは避けます。

また、誰へ、どの情報を、何の目的で共有するのかについて、あらかじめ健康情報取扱規程等でルール化しておくことが重要です。

高ストレス者面談を適切に進める7つの手順

高ストレス者への面接指導は、対象者から申出があってから初めて運用方法を考えるのではなく、ストレスチェック実施前から制度設計を行うことが重要です。

実施者、実施事務従事者、人事担当者、面接指導を担当する医師など、それぞれの役割と権限を整理し、担当者が変わっても一定の手順で対応できる体制を整えます。

1.実施体制と社内ルールを決める

まず、

  • ストレスチェックの実施者
  • 実施事務従事者
  • 制度全体を運営する担当者
  • 面接指導を担当する医師

などを決めます。

さらに、

  • 高ストレス者の選定方法。
  • 個人結果の保存方法。
  • 個人結果の事業者への提供方法。
  • 面接指導の申出窓口。
  • 面接指導後の医師意見の取扱い。
  • 健康情報を取り扱う担当者と権限。

などについて、衛生委員会等で調査審議したうえでルールを定めます。

目的は、担当者の裁量によって健康情報の取扱いや制度運用が変わらない状態をつくることです。

2.面談の目的と情報の流れを周知する

従業員には、ストレスチェック制度が人事評価や精神疾患の診断を目的としたものではないことを説明します。

さらに、

  • ストレスチェック結果は誰が見るのか。
  • どのような場合に会社へ提供されるのか。
  • 面接指導を申し出ると会社は何を把握するのか。
  • 医師から会社へどのような情報が伝えられるのか。
  • 管理職へはどの情報が共有されるのか。

など、情報の流れを分かりやすく説明します。

特に、面接指導の申出をストレスチェック結果の事業者への提供への同意とみなす運用を行う場合には、その取扱いをあらかじめ従業員へ周知しておく必要があります。

健康情報がどのように利用されるのかを見える化することは、制度への不安を減らすうえでも重要です。

3.申出の受付から面談までの流れを整える

あらかじめ、

  • 申出窓口。
  • 申出方法。
  • 受付担当者。
  • 面接指導担当医。
  • 面接方法。
  • 面接場所。

などを決めておきます。

面接指導の申出は、対象者であることを必要以上に周囲へ知られない方法で受け付けることが重要です。

申出窓口を産業医や産業保健スタッフ等とする方法も考えられます。

本人から申出があった場合には、原則として概ね1か月以内に医師による面接指導を実施できるよう体制を整えます。

また、担当者個人のメールボックスだけで案件を管理し、担当者の不在によって対応が止まるといったことがないよう、適切な権限管理の下で進捗を把握できる仕組みを整えます。

4.面談前に勤務情報を産業医へ提供する

面接指導を行う医師が本人の勤務状況を踏まえて評価できるよう、必要に応じて、

  • 労働時間
  • 休日勤務・深夜勤務
  • 欠勤等の勤務状況
  • 担当業務
  • 業務上の負荷
  • 勤務形態
  • 異動・役割変更

などの客観情報を整理して提供します。

企業側から提供する勤務情報について共通様式を設定しておけば、担当者や医師によって判断材料が大きく変わることを防ぎやすくなります。

ただし、医師へ情報を多く渡せばよいというものではありません。

健康状態と就業との関係を評価するために必要な客観情報を整理することが重要です。

5.医師の意見を具体的な措置へ落とし込む

面接指導後には、医師から健康保持に必要な措置について意見を聴取します。

例えば、

  • 通常勤務。
  • 時間外労働等の制限。
  • 業務負荷の軽減。
  • 勤務形態への配慮。
  • 受診勧奨。
  • 療養。

などについて医学的意見が示される場合があります。

医師意見が抽象的で企業として具体的な措置を判断できない場合には、

  • 対象となる業務。
  • 制限の程度。
  • 措置の見直し時期。

など、健康確保措置を実施するために必要な範囲で確認します。

人事担当者が医学的判断を推測して補うのではなく、医学的な内容について不明点があれば担当医師へ確認することが重要です。

6.本人の意見を聴いて会社が措置を決める

事業者が就業上の措置を決定する際には、あらかじめ本人の意見を聴き、十分な話し合いを行います。

例えば、

  • 措置が必要と考えられる理由。
  • 具体的な勤務条件。
  • 見直しの時期。
  • 管理職へ共有する情報の範囲。
  • 給与・手当等へ生じ得る影響。

などを説明します。

本人が措置に不安を示している場合には、

  • 収入。
  • 人事評価。
  • 周囲への説明。
  • 仕事内容やキャリアへの影響。

など、何を懸念しているのかを確認します。

そのうえで、必要に応じて医師へ再度相談し、健康確保の目的を満たせる代替措置がないか検討します。

7.再面談と職場環境の改善まで継続する

就業上の措置を実施した後は、その必要性や本人の健康状態を適切に確認します。

医師から再面談が必要との意見が示されている場合や、医学的な再評価が必要な場合には、再面談を設定します。

ただし、すべての高ストレス者について、一定期間後の再面談が法律上一律に義務付けられているわけではありません。

本人の状態や医師意見に応じて、適切なフォロー方法を決めます。

また、職場環境の改善については、個々の高ストレス者を企業が特定して人数を数えるのではなく、ストレスチェックの集団分析などを活用します。

例えば、集団分析で特定の部署に継続して高いストレス傾向が確認された場合には、

  • 業務量。
  • 長時間労働。
  • 仕事の裁量。
  • 管理職からの支援。
  • 職場のコミュニケーション。

などについて検討します。

個人への支援と、個人を特定しない集団レベルの職場環境改善を適切に使い分けることが重要です。

人事担当者が用意しておきたい実務チェック項目

高ストレス者への面接指導を特定の担当者の経験だけに依存させないためには、ストレスチェック実施前、面接指導前、面接指導後に確認すべき事項を整理しておくことが有効です。

例えば、

  • 面接指導の申出窓口
  • 面接指導を担当する医師
  • 勤務情報を整理する共通様式
  • 医師意見の受領方法
  • 就業上の措置を判断する担当者
  • 管理職へ共有する情報のルール
  • 必要なフォロー・再評価の管理方法
  • 緊急時の連絡先・対応方法
  • 担当者不在時の代行者
  • 健康情報の保存場所・閲覧権限

などを決めておきます。

さらに、ストレスチェック実施後には、個人を特定する形ではなく制度運用全体について、

  • 案内方法は分かりやすかったか。
  • 申出から面接指導まで適切な期間で対応できたか。
  • 医師意見を具体的な措置へつなげられたか。
  • 健康情報を適切な範囲で共有できたか。
  • 必要なフォローが漏れていなかったか。

などを振り返ります。

問題が見つかった場合には、翌年度も同じ運用を続けるのではなく、衛生委員会等で必要な改善を検討します。

制度を作って終わるのではなく、実際の運用結果を踏まえて改善することが重要です。

高ストレス者面談から職場改善につなげた運用例

例えば、ストレスチェック後の医師による面接指導について、「申し出ると相談内容が上司へすべて伝わるのではないか」という不安が従業員の間にあり、制度全体として面接指導の申出が少ない企業があったとします。

この場合、「従業員の健康意識が低い」と個人側だけに原因を求めるのではなく、制度の説明や申出方法に改善できる点がないかを確認します。

例えば案内文へ、

  • 申出を理由とした不利益な取扱いを行わないこと
  • 面談で話した内容がそのまま上司へ共有されるわけではないこと
  • 企業へ共有される情報の目的と範囲

などを分かりやすく記載します。

また、本人が周囲に知られにくい申出窓口を設定するなど、申出方法も見直します。

面接指導後についても、必要な就業上の措置やフォロー予定を、アクセス権限を限定した方法で管理します。

そのうえで、

  • 制度全体の申出状況。
  • 従業員から寄せられる制度上の質問。
  • 面接までに要した期間。
  • 運用上発生した課題。


などを確認します。

課題を確認する→原因を検討する→運用を変更する→再び結果を確認する

という改善を繰り返すことが重要です。

高ストレス者面談の運用課題は産業医クラウドへご相談ください

高ストレス者への面接指導を適切に運用するには、「面談ができる医師」を確保するだけでは十分ではありません。

企業側でも、

  • 必要な勤務情報を医師へ提供する。
  • 医師から健康確保に必要な意見を受け取る。
  • 本人の意見を確認する。
  • 必要な就業上の措置へつなげる。
  • その後の状態を必要に応じて確認する。

という仕組みを整えることが重要です。

産業医クラウドでは、

  • 産業医の選任支援
  • 従業員面談
  • ストレスチェック
  • 衛生委員会運営支援
  • 産業保健業務の事務・運営支援
  • 各種マニュアル整備
  • 復職・就労支援

などを通じて、企業の産業保健体制づくりを支援しています。

特に、

  • 面接後の対応が担当者へ依存している。
  • 医師意見を具体的な措置へつなげられない。
  • 担当者によって健康情報の共有範囲が異なる。
  • 必要なフォローが漏れる。

といった課題がある場合には、医師を増やす・変更することだけではなく、人事・産業医・産業保健スタッフ・管理職の役割と情報の流れを標準化することが重要です。

産業医を「従業員の話を聞く医師」としてだけでなく、健康状態と仕事との関係を医学的に評価し、企業が適切な健康確保措置を検討するための専門家として活用しましょう。

コミュニケーションや事務能力に疑問…
質の高い産業医に依頼したいとお考えではないでしょうか?

産業医紹介サービスを検討している企業様必見!
産業医クラウドなら独自の研修を受け、スキルチェックも通過した、厳選された産業医をご紹介します。

お役立ち資料ダウンロード

高ストレス者面談と人事担当者の対応に関するよくある質問

人事担当者は誰が高ストレス者か確認できますか?

原則として、個人のストレスチェック結果は本人の同意なく事業者へ提供できません。

そのため、ストレスチェックの実施事務に関与していない人事担当者が、高ストレス者一覧を独自に取得して確認することは適切ではありません。

ただし、直接の人事権を持たない人事担当者が実施事務従事者として適切に指名されている場合には、実施者の指示の下で、高ストレス者に関する必要な実施事務を担当できます。

また、本人が法定の面接指導を申し出た場合には、事業者は申出者を把握します。

その後も、健康情報は健康確保のために必要な範囲で取り扱うことが基本です。

人事担当者から面接指導を勧めてもよいですか?

面接指導の申出を勧奨すること自体は制度上想定されています。

ただし、個人のストレスチェック結果を利用して対象者へ勧奨する実施事務は、実施者または適法に指名された実施事務従事者が、他の従業員に対象者であることを知られないよう配慮して行います。

通常の人事担当者が、本人の同意なく入手した個人結果を基に直接連絡するような運用は避けます。

誰が、どの立場で、どの情報を用いて勧奨するのかをあらかじめ決めておくことが重要です。

面接指導を希望しない従業員にはどう対応しますか?

高ストレス者への法定の医師による面接指導は、本人からの申出を前提とするため、企業が強制することはできません。

制度の目的、個人情報の取扱い、不利益な取扱いを行わないことなどを分かりやすく説明し、本人が判断できる状態を整えます。

本人が法定面接指導を申し出ない場合にも、必要に応じて、

  • 通常の産業医相談。
  • 保健師相談。
  • 社内外の相談窓口。

などを利用できることを周知します。

また、ストレスチェックとは別に、長時間労働、欠勤、本人からの健康相談など企業が適法に把握している事情がある場合には、それらの情報に基づき通常の健康管理として必要な対応を検討します。

産業医から人事担当者へ何が共有されますか?

面接指導後、企業には、従業員の健康を確保するために必要な範囲の情報と医師意見が提供されます。

例えば、

  • 通常勤務を継続できるか
  • 時間外労働等の制限が必要か
  • 深夜勤務等への配慮が必要か
  • 業務内容の調整が必要か
  • 療養等が必要か

などです。

一方、診断名、検査値、具体的な訴え、詳細な家庭事情などの医学的情報をそのまま企業へ提供することは適切ではありません。

企業へ提供する情報は、健康確保措置を実施するために必要最小限の範囲へ整理することが重要です。

直属の上司へ面談結果を共有してもよいですか?

管理職が健康確保措置を実施するために必要な情報を共有することはあります。

例えば、

「一定期間、時間外労働を制限する」
「深夜勤務から外す」
「担当業務を一部調整する」

などです。

一方で、面接指導結果報告書や医師意見書をそのまま管理職へ渡す必要があるとは限りません。

診断名、治療状況、家庭事情など、業務上の措置に必要のない情報まで共有しないようにします。

面談結果を人事評価に反映してもよいですか?

面接指導を申し出たことや、ストレスチェック結果の事業者への提供に同意しなかったことを理由として、不利益に取り扱うことはできません。

また、健康確保のために労働時間や担当業務を制限されていること自体を、そのまま「能力不足」と評価することにも慎重である必要があります。

一方で、人事評価制度に基づき、健康情報とは独立した客観的な業績や行動等を評価することまで禁止されるわけではありません。

健康確保措置そのものと、人事評価の対象となる事実を明確に切り分けることが重要です。

面接指導結果の記録は何年間保存しますか?

医師による面接指導を実施した場合、事業者は面接指導結果について所定の事項を記録し、5年間保存する必要があります。

記録には心身の状態に関する情報も含まれるため、通常の人事評価資料等とは適切に区分し、取り扱う担当者を必要な範囲へ限定します。

従業員が異動、休職、退職した場合でも、法定の保存期間が終了するまでは適切に管理する必要があります。

まとめ|人事担当者は情報管理と面談後の措置を仕組み化する

高ストレス者への面接指導で人事担当者が注意すべきなのは、健康情報を可能な限り多く集めることではありません。

重要なのは、それぞれの情報を誰が、何の目的で、どの範囲まで取り扱うのかを明確にすることです。

ストレスチェックの個人結果は、原則として本人の同意なく事業者へ提供しない。

解雇・昇進・異動について直接の権限を持つ者は、個人結果等を扱う実施事務に従事させない。

詳細な医学情報を必要以上に人事や管理職へ共有しない。

面接指導の申出を強制したり、不利益な取扱いへつなげたりしない。

こうした基本を守る必要があります。

一方で、「個人情報だから企業は何もできない」ということでもありません。

医師から、企業が健康確保措置を行うために必要な医学的意見を受け取ります。

その意見を踏まえて、
勤務時間。
担当業務。
深夜勤務。
勤務形態。
療養の必要性。

などについて必要な措置を検討します。

本人へ措置の理由と内容を説明し、管理職には実施のために必要な情報だけを伝えます。

さらに、本人の健康状態や医師意見に応じて、必要なフォローや再評価を行います。

この一連の流れを、特定の担当者の経験や判断だけに依存させないことが重要です。

誰が担当しても。
産業医が変わっても。
事業場が増えても。

実施者。
実施事務従事者。
人事担当者。
産業医。
管理職。

それぞれの役割と情報の取扱範囲を明確にし、

申出
→ 面接指導
→ 医師意見
→ 企業による措置
→ 必要なフォロー・再評価

まで一定のルールで運用できる体制を整えます。

また、
制度全体として申出が少ない。
申出から面接まで時間がかかっている。
医師意見を具体的な措置へつなげられない。
健康情報の共有範囲が担当者によって異なる。
といった課題が見つかった場合には、個々の担当者や従業員だけに原因を求めるのではなく、制度設計そのものを見直します。

さらに、集団分析で特定の部署に継続して高いストレス傾向が確認される場合には、
業務量。
労働時間。
仕事の裁量。
管理職からの支援。
職場の相談体制。
など、組織として改善できる要因を検討します。

産業医も、「従業員の話を聞いてくれる医師」としてだけではなく、機微な健康情報を適切に保護しながら、健康状態と仕事との関係を医学的に評価し、企業が必要な健康確保措置を検討するための専門家として活用することが重要です。

高ストレス者への面接指導を単なるストレスチェック後の事務処理で終わらせず、個人情報を適切に保護しながら必要な支援と就業上の措置につなげる。

その運用を継続的に見直すことで、従業員が安心して相談できる環境と、企業として安定した産業保健体制を構築しやすくなります。

コミュニケーションや事務能力に疑問…
質の高い産業医に依頼したいとお考えではないでしょうか?

産業医紹介サービスを検討している企業様必見!
産業医クラウドなら独自の研修を受け、スキルチェックも通過した、厳選された産業医をご紹介します。

お役立ち資料ダウンロード

株式会社Avenirは株式会社メンタルヘルステクノロジーズ(東証グロース9218)の100%子会社です。
Avenirは産業医クラウドを運営しています。

監修:刀禰真之介(株式会社メンタルヘルステクノロジーズ代表取締役社長、株式会社Avenir代表取締役社長)