ストレスチェックで高ストレス者として選定され、実施者が医師による面接指導を必要と認めた従業員から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施し、その結果について記録を作成・保存する必要があります。
しかし実務では、
「何を5年間保存すればよいのか」
「医師が面談で確認した内容まで人事が管理するのか」
「上司にはどこまで共有してよいのか」
「面談後の就業上の措置は誰が管理するのか」
と迷う企業も少なくありません。
重要なのは、記録を残すこと自体を目的にしないことです。
高ストレス者への法定の面接指導では、
本人から面接指導の申出がある
→ 医師が面接指導を行う
→ 企業が医師から意見を聴取する
→ 医師意見を勘案して必要な就業上の措置を検討・実施する
→ 必要に応じて状態や措置を再評価する
という流れになります。
つまり、企業に必要なのは「面接指導結果を保存すること」だけではありません。
- 誰にどのような就業上の措置が必要なのか。
- 誰が実施するのか。
- いつまで実施するのか。
- 必要に応じていつ状態を確認するのか。
まで管理できる仕組みを整えることが重要です。
また、高ストレス者対応では、
- ストレスチェックの個人結果。
- 企業が保存する法定の面接指導結果。
- 医師が医学的評価のために取り扱う詳細な健康情報。
- 企業が実施した就業上の措置の履歴。
を、それぞれの利用目的に応じて適切に取り扱う必要があります。
本記事では、高ストレス者面談の記録に必要な項目、5年間の保存義務、閲覧権限、面談後の就業上の措置、必要に応じた再評価まで、企業が実務で運用できる形に整理して解説します。
高ストレス者面談の記録は保存するだけでは不十分
ストレスチェックで高ストレス者として選定され、実施者が医師による面接指導を必要と認めた従業員から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施します。
面接指導後は、その結果について法令で定められた事項を記録し、5年間保存しなければなりません。
ただし、ここで注意したいのが、「意見書をPDFで保存したので対応完了」という運用です。
面接指導後、事業者は医師から健康保持のために必要な措置について意見を聴き、その意見を勘案したうえで、必要があると認める場合には就業上の措置を講じます。
そのため実務上は、
- 企業が保存する法定の面接指導結果。
- 医師が医学的評価のために取り扱う詳細な健康情報。
- 企業が実施した就業上の措置に関する情報。
などを、それぞれの目的に応じて適切に管理することが重要です。
例えば医師から、「一定期間、時間外労働を制限することが望ましい」という意見が示された場合、意見書を保存するだけでは健康確保措置は実行されません。
企業側で、
- 誰が本人へ説明するのか。
- 現場には何を伝えるのか。
- いつから措置を開始するのか。
- いつ状態を確認するのか。
などを決める必要があります。
したがって、高ストレス者面談の記録管理は、単なる文書保存ではなく、医師意見を必要な健康確保措置へつなげ、その対応が途中で止まらないよう管理する仕組みとして設計することが重要です。
高ストレス者面談の記録管理が重要な理由
高ストレス者面談の記録管理は、法令上の保存義務を満たすことに加え、医師の医学的意見を実際の健康確保措置へつなげるためにも重要です。
医師は面接指導の結果を踏まえ、必要に応じて、
- 労働時間の短縮
- 業務内容の変更
- 深夜業の回数の減少
- 配置や勤務形態への配慮
- 一定期間後の再評価
などについて意見を示します。
事業者はその意見を聴き、労働者の実情や業務の状況も踏まえて必要な措置を判断します。
さらに、措置の内容や期間、確認時期などを適切に管理しておけば、担当者が異動した場合にも、
「現在どのような措置が行われているのか」
「次にいつ状態を確認する必要があるのか」
「いつ措置を見直すのか」
を必要な担当者が把握できます。
反対に、
意見書は保存されている。
しかし実際に何をしたのか分からない。
必要とされた再評価も行われていない。
という状態では、医師意見を十分に健康管理へ生かせません。
担当者個人の記憶や注意力ではなく、仕組みとして対応状況を確認できる状態にすることが記録管理の重要な役割です。
高ストレス者面談で区別すべき4種類の情報
高ストレス者対応では、関係するすべての情報を同じ場所へ保存するのではなく、実務上、
利用目的
→ 取り扱う担当者
→ 保存方法
→ 共有範囲
を情報の性質に応じて区別することが重要です。
なお、以下の4種類は法令上の正式な分類ではなく、適切な情報管理を行うための実務上の整理です。
ストレスチェックの個人結果
ストレスチェックの個人結果には、
- 質問への回答
- 個人のストレスプロフィール
- ストレスの程度
- 高ストレス者に該当するかどうか
- 医師による面接指導の対象かどうか
などの情報が含まれます。
個人結果は本人へ直接通知され、原則として、本人の同意なく実施者から事業者へ提供することはできません。
一方、本人が事業者へ医師による面接指導を申し出た場合には、その申出をもってストレスチェック結果の事業者への提供に同意したものとみなす運用も認められています。
そのため企業では、面接指導の申出を受けた場合に、
ストレスチェック結果のどの範囲が企業へ提供されるのか、誰がその情報を閲覧するのか、どのような目的で利用するのかを事前にルール化し、従業員へ周知しておくことが重要です。
また、衛生委員会等で方法を定め、ストレスチェック結果そのものではなく、面接指導の対象者であることを実施者へ確認する方法も考えられます。
いずれの場合も、面接指導を申し出たことを理由として、取得したストレスチェック情報を必要以上に社内へ共有してよいわけではありません。
健康確保に必要な範囲で取り扱うことが基本です。
面接指導結果報告書・医師の意見書
面接指導結果報告書や医師の意見は、企業が健康確保のために必要な措置を検討するための情報です。
例えば、
- 勤務を継続するうえでの配慮
- 時間外労働や深夜勤務等の制限
- 業務負荷の軽減
- 配置や勤務形態への配慮
- 必要に応じた再面談・再評価
などが考えられます。
重要なのは、企業が必要な措置を検討できる具体性です。
「業務上の配慮を要する」という記載だけでは、具体的な対応を判断しにくいことがあります。
その場合には、本人の健康状態に応じて、
「一定期間、時間外労働を制限する」
「深夜勤務を一定期間制限し、その後状態を再評価する」
など、医学的に必要な範囲で具体化してもらうことが有効です。
ただし、時間数や期間に一律の医学的基準があるわけではありません。
個々の健康状態、症状、勤務内容などを踏まえて医師が判断することが必要です。
産業医が作成する詳細な面談メモ
医師が面接指導や医学的評価のために取り扱う詳細な記録には、
- 具体的な症状
- 治療状況
- 服薬状況
- 家庭など仕事以外の事情
- 本人の具体的な訴え
など、機微性の高い健康情報が含まれる場合があります。
こうした詳細な情報を、そのまま人事担当者や上司へ提供する必要はありません。
事業者へ提供する面接指導結果については、健康確保措置に必要な範囲に情報を整理して取り扱うことが重要です。
人事担当者が確認すべき中心的な情報は、「本人は面談で何を話したのか」ではなく、「健康を確保して働くために企業としてどのような対応が必要なのか」です。
なお、詳細な記録を誰が、どこで、どのように保存するかは、社内産業医、外部産業医、外部委託機関など事業場の体制によって異なります。
「産業医個人が保管する」と一律に決めるのではなく、健康情報取扱規程や委託契約の中で保存主体、保存場所、閲覧権限などを明確にしておく必要があります。
企業が実施した措置とフォローの履歴
企業では、法定の面接指導結果とは別に、必要に応じて、
- 本人への説明日
- 実施する措置
- 対応担当者
- 措置開始日
- 措置の見直し予定日
- 再面談・再評価の予定
- 措置の変更・解除
などを管理しておくと、対応漏れを防ぎやすくなります。
ただし、この進捗管理用の記録へ、診断名、服薬内容、家庭事情、面談で話した具体的な内容まで転記する必要はありません。
目的は医学情報を蓄積することではなく、企業として必要な健康確保措置が実施されているか確認することです。
面接指導結果として記録・保存する7つの事項
高ストレス者への医師による面接指導結果について、事業者は記録を作成し、5年間保存しなければなりません。
記録する事項は次の7つです。
- 従業員の勤務の状況
- 従業員の心理的な負担の状況
- その他の従業員の心身の状況
- 面接指導の実施年月日
- 面接指導を受けた従業員の氏名
- 面接指導を行った医師の氏名
- 健康保持に必要な措置についての医師の意見
ここで「心理的な負担の状況」「心身の状況」を記録するといっても、詳細な診断名、検査値、具体的な訴えなどをすべて人事部へ提供するという意味ではありません。
労働者の健康を確保するために必要な範囲で情報を取り扱うことが基本です。
そのため、法定記録として必要な情報を確実に残しつつ、不必要に詳細な医学情報を社内へ広げないという考え方が重要です。
また、複数の医師が面接指導を担当する企業では、必要事項を漏れなく記録できる共通様式を用意すると運用を安定させやすくなります。
ただし、様式を統一することと、医学的判断を画一化することは別です。
必要な記載項目は共通化しつつ、具体的な医師意見は個々の健康状態や業務内容を踏まえて判断できる仕組みにします。
高ストレス者面談の記録管理で起こりやすい課題
人事部門の共有フォルダに保存している
避けたいのが、「人事部に所属しているため全員が閲覧できる」という運用です。
面接指導結果には、労働者の心身の状態に関する機微な情報が含まれます。
そのため、アクセス権限は所属部署だけで決めるのではなく、健康確保措置を実施するうえで、その情報を取り扱う必要があるかという観点から設定します。
例えば、通常の人事評価資料などとは適切に区分し、健康管理や就業上の措置を担当する必要な者だけが閲覧できる状態をつくります。
意見書を上司へそのまま転送している
直属の上司が必要とするのは、通常、詳細な診断名や治療内容ではありません。
例えば、
- 時間外労働を制限する
- 深夜勤務を制限する
- 出張を一時的に減らす
- 特定業務の負荷を軽減する
など、現場で実施する必要がある就業上の措置です。
そのため、面接指導結果報告書や医師意見書そのものを無条件に上司へ転送するのではなく、上司が措置を実行するために必要な情報へ限定して共有することが重要です。
誰へ、どの情報を、何の目的で共有するのかについても、社内の健康情報取扱ルールに定めておくとよいでしょう。
保存期限は管理しているが再面談を管理していない
「5年間保存する」という法定期間は管理できていても、医師から必要とされたフォローアップが管理されていないケースがあります。
例えば医師が、
「一定期間の時間外労働制限後に状態を確認する」
「必要に応じて一定期間後に再面談する」
と意見している場合には、その予定を管理する必要があります。
なお、再面談や再評価を一律に実施することが法律で義務付けられているわけではありません。
本人の健康状態や医師意見に応じて必要性や時期を設定します。
そのうえで、法定記録の保存期限、就業上の措置の見直し予定日、必要な再面談・再評価日などを管理できるようにすると、健康確保措置の実施漏れを防ぎやすくなります。
担当者の異動時に情報が引き継がれない
担当者個人のパソコン、個人メール、ローカルフォルダだけで健康情報を管理していると、担当者の異動・退職によって対応が止まる可能性があります。
引継ぎ時には、業務上必要な範囲で、
- 正式な保存場所
- 保存期限
- 現在実施している措置
- 今後必要な再評価
- 未完了の対応
などを確認します。
ただし、新たな担当者にも必要のない詳細な医学情報まで引き継ぐ必要はありません。
必要な情報だけを必要な担当者へ引き継ぎ、人が変わっても健康確保措置が継続する状態をつくることが重要です。
高ストレス者面談の記録を管理する7つの手順
高ストレス者面談の記録管理では、
受領
→ 内容確認
→ 保存
→ 必要な措置の検討・実施
→ 必要な範囲での情報共有
→ 必要に応じた再評価
→ 保存期間・利用目的に応じた廃棄
までを一つの管理プロセスとして整理します。
1.管理責任者と閲覧できる担当者を決める
まず、
誰が面接指導結果を受け取るのか。
誰が保存を管理するのか。
誰が就業上の措置を進めるのか。
を明確にします。
人事部全員へ閲覧権限を与える必要はありません。
健康情報を取り扱う必要のある担当者に限定し、
担当者が不在の場合の代行者。
本社と各事業場の役割。
産業医・産業保健スタッフとの連絡担当者。
なども決めておくと、担当者の異動や退職時にも運用を継続しやすくなります。
2.健康情報の取扱規程を整備する
心身の状態に関する情報については、事業場ごとに取扱規程を整備し、適切に管理することが重要です。
例えば、
- 利用目的
- 取り扱う情報の範囲
- 情報を取り扱う者と権限
- 本人への通知や同意取得の方法
- 保存・安全管理の方法
- 情報共有や第三者提供
- 組織変更時の引継ぎ
- 開示等への対応
- 苦情への対応
などを定めます。
従業員に対しても、
「どの情報を誰が取り扱うのか」
「何の目的で利用されるのか」
を分かりやすく周知することが重要です。
健康情報が不必要に人事評価などへ利用されない仕組みを明確にすることは、従業員が安心して産業保健サービスを利用できる環境づくりにもつながります。
3.報告書・意見書の書式を統一する
面接指導を行う医師によって書式が大きく異なると、必要情報の不足、不必要に詳細な情報の記載、就業上の意見の表現のばらつきなどが生じる可能性があります。
そこで、
- 法定記録に必要な事項
- 就業上の措置に関する意見
- 措置を行う期間
- 再面談・再評価の必要性
などを確認できる共通様式を用意すると、企業側の運用を標準化しやすくなります。
ただし、医師の判断内容まで統一するものではありません。
書式は標準化し、医学的判断は個別化することがポイントです。
4.受領時に必要事項と措置内容を確認する
面接指導結果を受け取ったら、「書類を受領した」だけで終わらせず、法定の必要事項がそろっているか、企業が必要な健康確保措置を検討できる内容になっているかを確認します。
例えば、「業務上の配慮が必要」という記載だけでは対応が判断しにくい場合には、
- どのような業務について配慮が必要なのか。
- どの程度の制限が必要なのか。
- どの程度の期間を想定しているのか。
- いつ再評価するのが適切なのか。
を医師へ確認します。
人事担当者が本人から詳細な症状を聞き出して医学的判断を補うのではなく、医学的判断について不明点がある場合は担当医師へ確認することが基本です。
5.紙・電子データを分けて安全に保存する
紙で保存する場合には、施錠できる場所など、必要な担当者以外が容易に閲覧できない環境を整えます。
電子データの場合には、専用フォルダや健康管理システムなどを利用し、必要な担当者だけがアクセスできるようにします。
担当者個人の、デスクトップ、メールボックス、USBメモリだけに依存した管理は避けます。
また、取り扱う情報の性質やリスクに応じて、
- アクセス制御。
- 認証管理。
- 利用状況を確認する仕組み。
- バックアップ。
- 異動・退職時の権限変更。
など、必要かつ適切な安全管理措置を検討します。
これらの具体的な対策がすべて一律に法律で指定されているわけではありません。
自社が取り扱う健康情報の性質、量、システム環境などを踏まえて安全管理措置を設計することが重要です。
6.就業上の措置と再評価を管理する
医師意見を受け取ったら、企業として必要な就業上の措置を検討します。
事業者は医師の意見を聴取し、その意見を勘案するとともに、本人の実情などにも配慮して必要な措置を判断します。
企業側の管理記録には、必要に応じて、
- 医師意見の受領日
- 企業が決定した措置
- 本人への説明日
- 措置開始日
- 対応担当者
- 措置の見直し予定日
- 必要な再面談・再評価日
- 見直し結果
などを記録します。
また、医師意見と異なる対応を選択する場合には、それが医師の意見と著しく異なる不適切な措置とならないよう十分に検討する必要があります。
法定必須事項ではありませんが、どのような事情を踏まえて企業が措置を決定したのか、その判断経緯を確認できるようにしておくことは、その後の再評価を行ううえでも有用です。
7.引継ぎと保存期間満了後の廃棄まで行う
担当者が変わる場合には、必要な権限を持つ後任者へ、
- 保存場所。
- 閲覧権限。
- 保存期限。
- 継続中の措置。
- 今後必要な再評価。
などを適切に引き継ぎます。
また、法定保存期間を満たした後も情報を無期限に保存するのではなく、利用目的や社内規程、保存の必要性を確認します。
保存する必要がなくなった情報については、紙、電子データ、複製データなど、それぞれの媒体に応じて適切に廃棄します。
情報を収集・保存する仕組みだけでなく、不要になった情報を適切に廃棄する仕組みまで含めて設計することが重要です。
高ストレス者面談の管理台帳に記載する項目
面接指導後の対応漏れを防ぐため、法定の面接指導結果とは別に、進捗管理用の台帳を設ける方法があります。
例えば、
- 対象者の氏名・社員番号・所属
- 面接指導の申出日・実施日
- 面接指導を担当した医師
- 報告書・意見書の受領日
- 就業上の措置の要否
- 措置内容・開始日・見直し予定日
- 本人への説明日
- 上司へ伝えた内容・共有日
- 再面談・再評価の予定日
- 記録の保存場所・保存期限
などが考えられます。
ただし、これらは面接指導結果の法定7項目そのものではなく、企業が対応状況を確認するための実務上の管理項目です。
また、管理台帳自体も「誰が医師による面接指導を受けたか」などの健康情報を含むため、適切なアクセス管理が必要です。
さらに、
- 診断名。
- 服薬内容。
- 家庭事情。
- 面談で話した具体的な内容。
などを必要なく転記することは避けます。
管理台帳は、「本人に何が起きているか」を詳細に記録する医学情報台帳ではなく、「企業として必要な対応が止まっていないか」を確認するための管理ツールとして使用します。
複数拠点で記録管理を統一する運用例
複数の事業場がある企業では、健康情報の取扱いを各事業場へ完全に任せると、
- 報告書の様式。
- 保存方法。
- アクセス権限。
- 上司への共有範囲。
- フォロー方法。
などにばらつきが生じる可能性があります。
そこで、本社側で全社共通の基本ルールとして、
- 報告書・意見書の様式
- 情報の保存方法
- 管理台帳の項目
- 閲覧権限
- 就業措置後の確認方法
などを定める方法があります。
現場管理職には、時間外労働の制限、業務量の調整、勤務方法の変更など、実際の措置を実施するために必要な情報だけを共有します。
一方、人事・産業保健担当部門では必要な権限を設定したうえで、
- 面接指導日。
- 医師意見の受領日。
- 措置開始日。
- 必要な再評価日。
- 法定記録の保存期限。
などを管理します。
ただし、事業場ごとの法的責任や産業医との連携体制も踏まえ、本社へすべての詳細健康情報を集約する必要があるわけではありません。
全社で統一すべきルールと、各事業場で取り扱うべき情報を整理することが重要です。
外部サービスを利用する場合に確認すること
ストレスチェックや高ストレス者への面接指導、健康情報の管理業務などを外部へ委託しても、委託元である事業者に求められる管理・監督がなくなるわけではありません。
契約前には、例えば、
- 誰がどの記録を保存するのか
- データをどのように管理するのか
- 誰がアクセスできるのか
- どのような安全管理措置が講じられているのか
- 再委託を行う場合の管理方法
- 漏えい等が発生した場合の連絡・対応体制
- 契約終了時のデータ返却・移管・削除方法
などを確認します。
なお、すべてのサービスに特定の暗号化方式やバックアップ方式が法律上一律に求められているという意味ではありません。
取り扱う健康情報の性質や量、システム構成などに応じて、必要かつ適切な安全管理措置が講じられているかを確認します。
また、外部事業者に法定記録の保存業務を委託している場合でも、事業者として保存義務を履行できる状態になっているかを把握しておく必要があります。
これは、自社でも同じ記録を必ず二重保存しなければならないという意味ではありません。
必要なときに記録を確認・取得でき、保存期間中に適切な管理が継続される仕組みを契約上・運用上確保することが重要です。
高ストレス者面談の運用は産業医クラウドへご相談ください
高ストレス者への医師による面接指導を適切に運用するには、面談を担当する医師を確保するだけでは十分ではありません。
必要なのは、
ストレスチェック
→ 面接指導
→ 医師意見の聴取
→ 必要な就業上の措置
→ 必要に応じたフォロー
→ 再評価
までを継続して運用できる体制です。
産業医クラウドでは、
- 産業医の選任支援
- 従業員面談
- ストレスチェック
- 職場巡視
- 衛生委員会運営支援
- 産業保健業務の事務・運営支援
- 各種マニュアル整備の支援
などを通じて、企業の産業保健体制づくりを支援しています。
特に、産業医によって意見書の形式が大きく異なる、面接後の対応が担当者任せになっている、必要なフォローが漏れるといった課題がある企業では、医師の人数だけを増やすのではなく、情報の取扱い、役割分担、就業措置、フォロー方法を含めた運用ルールを整理することが重要です。
そのうえで、企業の運用体制を理解し、適切に連携できる産業医を配置することで、継続しやすい産業保健体制につなげられます。
高ストレス者面談の記録管理に関するよくある質問
高ストレス者面談の記録は何年間保存しますか?
高ストレス者に対する医師の面接指導結果については、事業者が所定の事項を記載した記録を作成し、5年間保存する必要があります。
従業員がその後、異動、休職、退職した場合でも、法定保存期間が終了する前に廃棄することはできません。
一方、記録の受領日、保存期限、保存場所などは、面接指導結果の法定7項目そのものではありません。
ただし、5年間の保存義務を確実に履行するため、企業の文書管理・健康情報管理上の項目として管理しておくことは有効です。
担当者変更時には、必要な権限を持つ後任者へ、継続中の措置や必要な再評価予定とあわせて引き継ぎます。
人事担当者は面談記録をすべて閲覧できますか?
人事部に所属しているという理由だけで、すべての担当者が面接指導結果や詳細な健康情報を閲覧できるようにすることは適切ではありません。
健康管理や就業上の措置など、業務上必要な担当者へ取扱いを限定します。
また、担当業務によって必要な情報の範囲も異なります。
所属部署ではなく、「健康確保措置を行うためにその情報を取り扱う必要があるか」という観点でアクセス権限を設定することが重要です。
面接指導結果を直属の上司へ共有してもよいですか?
時間外労働の制限や業務調整など、健康確保措置を実施するために必要な情報を直属の上司へ共有することはあります。
ただし、面接指導結果報告書や医師意見書のすべてをそのまま渡す必要があるとは限りません。
上司へ共有する情報は、例えば、
- 時間外労働の制限
- 担当業務の調整
- 深夜勤務の制限
- 出張等への配慮
- 措置を行う期間
など、現場で対応するために必要な範囲へ限定します。
診断名、治療内容、服薬状況、具体的な相談内容など、措置に必要のない詳細情報まで共有しないことが重要です。
面接指導の記録を電子データで管理する際の注意点は?
面接指導結果は、要件を満たす形で電磁的記録として保存することができます。
電子管理では、専用フォルダや健康管理システムなどを利用し、必要な担当者だけがアクセスできる環境を整えます。
通常の人事共有フォルダ、担当者個人のパソコンやメールボックスだけに依存する管理は避けます。
また、情報の性質やリスクに応じて、
- アクセス制御。
- 認証。
- 利用状況の確認。
- バックアップ。
- 権限更新。
などの安全管理措置を検討します。
特定のシステム機能を導入すること自体ではなく、健康情報を安全かつ適切に管理できる仕組みになっていることが重要です。
面接指導を申し出なかった従業員についても記録は必要ですか?
本人から面接指導の申出がなく、医師による面接指導を実施していない場合には、面接指導結果についての5年間の法定保存記録は作成されません。
また、企業がすべての高ストレス者を把握し、「誰が申し出なかったか」を管理する制度でもありません。
本人から面接指導の申出があった場合には、その申出を確認できる書面や電子メール等の記録を5年間保存することが望ましいとされています。
企業が制度全体の運用状況として、
- 案内を行った時期。
- 申出方法の周知状況。
- 相談窓口の案内状況。
などを記録することは考えられますが、個人について不必要に「申し出なかった理由」や詳細な健康情報を収集・保存することは避けます。
個人の健康情報管理と、企業としての制度運用記録を分けて考えることが重要です。
外部委託先が記録を保存していれば、自社での管理は不要ですか?
外部委託先へ保存業務を委託することは可能ですが、事業者としての保存義務や、委託先への必要かつ適切な監督がなくなるわけではありません。
そのため、
- 誰が保存主体となるのか。
- どこに保存されているのか。
- 誰がアクセスできるのか。
- 法定保存期間を確保できるのか。
- 必要なときに記録を取得できるのか。
などを把握します。
また、契約終了時には、データの返却・移管、委託先に残るデータの取扱いなども確認します。
ただし、委託先で適切に保存している記録を、自社でも必ず同じ形で二重保存しなければならないという意味ではありません。
事業者として、法定保存義務を確実に履行できる管理体制を整えておくことが重要です。
まとめ|面接結果の保存から就業上の措置まで一元管理する
高ストレス者に対する医師の面接指導結果については、
- ・勤務の状況
- 心理的な負担の状況
- その他の心身の状況
- 面接指導の実施年月日
- 対象となった労働者の氏名
- 面接指導を行った医師の氏名
- 健康保持に必要な措置についての医師の意見
を含む記録を作成し、事業者が5年間保存する必要があります。
しかし、実務上重要なのは、「5年間保存できているか」だけではありません。
- ストレスチェックの個人結果。
- 事業者が保存する面接指導結果。
- 医師が医学的評価のために取り扱う詳細な健康情報。
- 企業が管理する就業上の措置・フォロー情報。
を、利用目的に応じて適切に区別します。
そのうえで、
面接指導
→ 医師意見の聴取
→ 企業による措置の検討
→ 必要な就業上の措置
→ 必要に応じた再面談・再評価
→ 措置の継続・変更・解除
までを途切れさせないことが重要です。
高ストレス者対応で避けたいのは、
「面談を実施した」
「意見書を保存した」
という手続の完了だけで健康管理まで終わったと考えることです。
重要なのは、医師意見を踏まえた必要な健康確保措置が実際に行われ、その後の状態に応じて適切に見直されているかです。
そして、
担当者が変わっても。
産業医が変わっても。
事業場が増えても。
情報の取扱い、アクセス権限、必要な措置の管理、フォローの流れを一定のルールで運用できる状態をつくります。
産業医についても、
「面談内容をそのまま会社へ報告する医師」
ではなく、
労働者の機微な健康情報を適切に保護しながら、企業が健康確保措置を検討するために必要な医学的意見へ整理して伝える専門家
として活用することが重要です。
法定記録を適切に保存する。
医師意見を必要な措置へつなげる。
措置の実施状況を確認する。
必要に応じて状態を再評価する。
必要なら対応を見直す。
この流れを継続することで、高ストレス者への面接指導を単発の法令対応で終わらせず、従業員の健康確保とメンタルヘルス不調の未然防止につながる産業保健の仕組みとして運用できます。
産業医紹介サービスを検討している企業様必見!