ストレスチェックで高ストレス者と判定され、実施者が医師による面接指導を必要と認めた従業員から申出があった場合、企業は医師による面接指導を実施しなければなりません。
しかし、産業医の訪問日が限られている企業や、複数の支店・店舗を持つ企業では、申出から面談までに時間がかかることがあります。
こうした課題を解決する方法の一つが、情報通信機器を使用したオンライン面談です。所定の要件を満たせば、法定の面接指導もオンラインで実施できます。
本記事では、高ストレス者面談をオンライン化するメリット、面談内容、導入プログラム、成功させるポイント、企業が守るべき注意点を解説します。
高ストレス者面談の目的とオンライン実施の位置づけ
高ストレス者面談は、ストレスチェック後のフォローとして、従業員の健康障害を防ぎ、必要な就業上の配慮につなげるために行います。一定の要件を満たせばオンラインでも実施できますが、単にWeb会議へ置き換えればよいわけではありません。企業は、法定面接と任意の健康相談を区別し、対象者への案内、本人の申出、医師への勤務情報の提供、面談後の意見聴取までを一連の運用として整備する必要があります。
高ストレス者面談は健康障害を未然に防ぐための面接指導
高ストレス者面談は、ストレスチェックで高ストレス者と判定され、実施者が面接指導を必要と認めた従業員に対して、医師が行う面談です。高ストレスという結果だけで、うつ病などの精神疾患があると診断されるわけではありません。医師は、睡眠や疲労、心身の自覚症状に加え、残業時間、業務負荷、役割変更、職場の支援状況などを確認します。そのうえで、受診勧奨やセルフケアの助言、残業制限、業務軽減などの必要性を判断します。
法定の面接指導と通常の産業医面談は異なる
高ストレス者への法定面接は、対象者本人の申出を受けて医師が実施する制度です。企業は面談後、医師から意見を聴き、必要な就業上の措置を検討するとともに、面接指導の記録を作成して保存します。本人の申出がないまま、法定面接として受診を強制することはできません。一方、通常の産業医面談は、健康相談、長時間労働、勤怠の変化、休職・復職対応などを目的に実施できます。申出方法、記録様式、情報共有の範囲を分けて管理しましょう。
企業が高ストレス者面談で抱えやすい課題
高ストレス者面談では、産業医の日程調整、複数拠点への対応、従業員のプライバシー確保など、実施前の運用面で課題が生じやすくなります。面談制度を用意していても、申出から実施までに時間がかかったり、利用への不安が残ったりすると、必要な従業員を早期支援につなげられません。企業は、面談枠、申出窓口、実施場所、情報共有の範囲を事前に整理し、誰が申し出ても同じ手順で対応できる体制を整える必要があります。
産業医の訪問日まで面談を実施できない
嘱託産業医の訪問が月1回の場合、申出のタイミングによっては面談まで数週間空くことがあります。さらに、従業員の出勤日や会議室の空き状況が合わなければ、次回以降へ先送りされる可能性もあります。企業は、ストレスチェックの実施前に面談用の予備枠を確保し、通常の訪問日以外でもオンラインや臨時訪問で対応できるかを産業医へ確認しましょう。申出受付後の連絡期限や日程確定までの担当者も、あらかじめ決めておくことが重要です。
支店や店舗によって面談体制に差が生じる
複数の支店、店舗、工場を持つ企業では、本社では面談を受けられても、地方拠点では産業医の確保や日程調整が難しい場合があります。本社への移動を求めると、交通費や移動時間が発生し、体調が不安定な従業員の負担にもなります。拠点ごとの対応差を防ぐには、申出方法、事前問診票、勤務情報の提出様式、意見書の書式を統一しましょう。オンライン面談を共通窓口として整備し、人事部門が進捗を一元管理する方法も有効です。
従業員が周囲の目を気にして申出をためらう
社内の会議室で面談を行うと、入退室を同僚や上司に見られ、面談対象者であることを推測されるおそれがあります。また、「相談内容が人事評価に使われる」「面談を受けると休職になる」と誤解し、申出を控える従業員もいます。企業は、上司を経由しない専用窓口を設け、面談内容がすべて会社へ共有されるわけではないことを明示しましょう。オンライン、自宅以外の個室、対面など、本人が安心して話せる方法を選べる体制も必要です。
高ストレス者面談をオンラインで実施する6つのメリット
高ストレス者面談をオンライン化すると、産業医の移動や会議室の確保が不要になり、申出後の面談を速やかに設定しやすくなります。また、地方拠点やテレワーク勤務者にも同じ水準の支援を提供でき、従業員の移動負担や人事担当者の日程調整業務も軽減できます。オンライン化を単なる効率化で終わらせず、面談形式、申出窓口、緊急時対応を整備することで、健康障害の早期発見と就業上の措置につなげやすくなります。
申出から面談までの期間を短縮しやすい
対面面談では、産業医の訪問日、従業員の出勤日、個室の空き状況を同時に調整する必要があり、申出から実施まで数週間かかることがあります。オンラインであれば、産業医が移動せず、双方が参加できる時間に面談枠を設定できるため、早期対応が可能です。企業はストレスチェック実施前にオンライン用の予備枠を確保し、申出受付後何営業日以内に候補日を案内するかを決めておくと、対応の遅延を防げます。
複数拠点の従業員に均一な面談機会を提供できる
オンライン面談を導入すれば、本社、支店、店舗、工場など、従業員の勤務地にかかわらず、同じ医師や同じ産業保健サービスへ面談を依頼できます。地方拠点に産業医が訪問していない場合でも、映像と音声を用いた面談環境を整えることで対応できます。
同一の申出方法、事前問診票、勤務情報提供書、意見書を使用すれば、拠点ごとの運用品質の差も抑えられます。人事部門が面談予定日や医師意見の受領状況を一元管理できるため、面談の実施漏れや就業上の措置の遅れを防ぎやすくなる点もメリットです。
従業員の移動や業務調整の負担を軽減できる
対面面談のために従業員が本社や医療機関へ移動すると、移動時間、交通費、業務の引継ぎなどが必要になります。複数拠点を持つ企業では、面談時間よりも移動に長い時間を要するケースもあります。体調が不安定な従業員に長距離移動を求めることも適切ではありません。
オンライン面談であれば、勤務地の個室や自宅などから参加でき、拘束時間を短縮できます。人事担当者も会議室の確保や産業医の入館手続きなどを減らせるため、面談の調整だけでなく、日常的な産業保健業務の効率化にもつながります。
テレワーク勤務者が面談を利用しやすくなる
テレワークをしている従業員に対し、産業医面談のためだけに出社を求めると、申出の心理的・時間的なハードルが高くなります。遠方へ転居している従業員や、育児・介護と仕事を両立している従業員では、指定された日時に出社できないこともあります。
普段からオンラインで業務を行っている従業員であれば、同じ端末から面談を受けられるため、利用しやすい環境をつくれます。ただし、自宅で参加する場合も、家族に会話を聞かれない個室の確保や、イヤホンの使用など、プライバシーに関する具体的な案内が必要です。
オンライン対応が可能な医師を広い地域から探せる
対面訪問だけを条件にすると、事業場から通える範囲にいる医師へ候補が限定されます。特に地方の事業場では、産業保健の経験がある医師や、メンタルヘルス対応に詳しい医師を確保できないことがあります。
オンライン面談を選択肢に含めることで、地域だけでなく、企業面談の経験、休職・復職支援の実績、意見書作成の具体性などを基準に医師を探しやすくなります。ただし、オンラインで面談できることだけでは不十分です。企業の業務内容や職場環境を理解し、就業上の措置まで助言できる医師を選ぶことが重要です。
面談フローと記録管理を標準化しやすい
オンライン面談を導入する際に、申出受付、事前問診、勤務情報の提出、面談、意見書の受領、フォローアップまでを一つのプログラムとして整備すれば、担当者による対応のばらつきを抑えられます。
例えば、結果通知日、申出日、面談日、意見書受領日、就業措置開始日、再面談日を管理台帳へ登録することで、対応状況を確認しやすくなります。オンライン化を単なるWeb会議の導入で終わらせず、高ストレス者対応全体を見直す機会として活用することが重要です。
オンラインの高ストレス者面談で医師が確認する内容
オンラインの高ストレス者面談では、ストレスチェックの点数だけで就業上の措置を判断することはありません。医師は、勤務実態、心身の症状、職場での支援状況、生活への影響などを総合的に確認します。企業は面談前に、勤怠記録や担当業務、直近の異動、勤務形態などを整理し、安全な方法で医師へ提供しましょう。事前情報をそろえることで、オンラインでも職場の実態に即した具体的な助言を得やすくなります。
労働時間や業務負荷などの勤務状況
医師は、時間外・休日労働、深夜勤務、出張、休憩や休日の取得状況などを確認します。単に残業時間の合計を見るのではなく、突発的な業務が多い、担当者が一人しかいない、納期を自分で調整できないなど、仕事のコントロール度も確認事項となります。
企業は面談前に、勤怠記録、担当業務、繁忙状況、異動や役割変更、勤務形態などを整理して医師へ提供します。上司の主観的な人物評価ではなく、勤務実績や業務分担表など、客観的な情報を用意することが大切です。
睡眠や疲労などの心身の状態
面談では、睡眠時間、中途覚醒、食欲、疲労感、集中力、意欲、気分の落ち込み、不安、動悸や頭痛などの身体症状を確認します。遅刻や欠勤、仕事上のミス、飲酒量の増加など、行動面の変化も健康状態を評価するための材料です。
医師は、ストレスチェックの点数だけで就業上の措置を判断するわけではありません。症状の程度や継続期間、日常生活への影響、現在の受診・服薬状況などを総合的に確認し、セルフケア、医療機関への受診、業務上の配慮が必要かを判断します。
上司・同僚からの支援と職場環境
業務量が極端に多くなくても、上司へ相談できない、人間関係が悪化している、役割が不明確であるなど、職場環境が強いストレス要因になる場合があります。医師は、相談相手の有無、上司や同僚からの支援、職場内のコミュニケーションなども確認します。
オンライン面談では、勤務場所から離れた環境で相談できるため、対面より話しやすいと感じる従業員もいます。一方、医師が把握した私生活上の事情や具体的な相談内容を、そのまま人事や所属長へ共有することは避けなければなりません。
オンライン高ストレス者面談の導入プログラム
オンライン高ストレス者面談を導入する際は、Web会議システムを用意するだけでなく、申出受付、日程調整、事前情報の共有、面談、医師意見の受領、就業上の措置、記録保存までを一つのプログラムとして設計します。各工程の担当者と対応期限を明確にし、通常の産業医相談と法定の面接指導を区別して管理することが重要です。運用開始前に模擬接続を行い、通信障害や緊急時の対応も確認しましょう。
手順1.実施方法と担当医を決める
まず、オンライン面談の対象、使用するシステム、申出窓口、面談担当医、個人情報の管理者、緊急時の対応方法を決めます。法定の面接指導として実施する場合は、通常の健康相談と記録や情報共有の方法を分けておくことが重要です。
オンライン面談の実施方法については、衛生委員会などで調査審議したうえで、事前に従業員へ周知します。担当医とは、面談時間、意見書の様式、提出期限、緊急時の連絡方法、対面面談へ切り替える条件まで確認しておきましょう。
手順2.対象者へ申出方法と情報の取扱いを案内する
面接指導の対象者には、面談の目的、申出期限、申出先、オンラインと対面の選択肢、費用負担、面談結果の取扱いを案内します。本人が安心して申し出られるよう、不利益な取扱いを行わないことや、会社へ共有される情報の範囲も説明します。
申出は、所属長を経由させるのではなく、産業保健担当者や専用フォームなど、健康情報を扱える窓口で受け付けます。共有メールや部署内で閲覧できるシステムへ登録すると、対象者であることが不要な範囲へ伝わるおそれがあるため注意が必要です。
手順3.勤務情報を医師へ提供して接続確認を行う
面談前に、対象者の労働時間、業務内容、作業環境、深夜勤務、休日労働、出張、役割変更などを医師へ提供します。医師が会社や業務の実態を把握できなければ、具体的な就業上の意見を示すことが難しくなります。
同時に、使用端末、カメラ、マイク、インターネット回線を確認します。従業員が初めてシステムを利用する場合は、接続テストや簡単な操作マニュアルを用意しましょう。接続トラブル時の連絡先や、再接続できない場合の日程変更方法も決めておきます。
手順4.プライバシーを確保して面談を実施する
面談は、医師と従業員が互いの表情、顔色、声、しぐさなどを確認できる状態で実施します。映像と音声が途切れる場合や、本人の様子を十分に把握できない場合は、そのまま続行せず、再接続や対面への切替を検討します。
従業員側だけでなく、医師側も第三者に会話を聞かれない環境を確保しなければなりません。面談開始時には本人確認、周囲に第三者がいないこと、緊急時の現在地や連絡先を確認しておくと、面談中に緊急性の高い状態が判明した場合にも対応しやすくなります。
手順5.医師意見を受けて就業上の措置を具体化する
面談後は、医師から就業上の措置の必要性について意見を聴きます。意見書には、通常勤務の可否、時間外・深夜勤務の制限、業務負担の軽減、出張への配慮、受診の必要性、再面談の時期などを具体的に記載してもらいます。
「業務量を減らす」といった抽象的な内容では、所属長が対応できません。「1か月間は時間外労働を禁止する」「夜勤から外す」など、対象業務、期間、再評価日を明確にします。措置を決める際は、本人の意見も確認し、一方的な配置変更にならないよう配慮します。
手順6.フォローアップと記録保存を行う
就業上の措置を実施した後は、本人の健康状態、勤怠、業務負荷を継続的に確認します。措置が形だけになっていないか、新たな負担が生じていないかを確認するため、医師が指定した時期に再面談を設定します。
企業は、面接指導の実施日、本人と医師の氏名、勤務状況、心身の状態、医師意見などを記録し、5年間保存します。オンライン面談の映像を保存する必要があるわけではありません。健康管理に必要な記録を作成し、閲覧権限と保存場所を限定して管理します。
オンラインの高ストレス者面談を成功させるポイント
オンライン面談を成功させるには、利便性だけでなく、従業員が安心して相談できる環境と、医師が適切に状態を把握できる体制を整える必要があります。面談形式、通信環境、プライバシー、緊急時対応、面談後の情報共有までを事前にルール化しましょう。特に、オンラインでの確認が難しい場合に対面へ切り替える基準を明確にし、本人の希望と医師の判断を尊重できる運用が重要です。
オンラインと対面を選択できる体制にする
オンライン面談は利便性が高い一方、すべての従業員に適しているとは限りません。自宅で個室を確保できない、通信機器の操作に不安がある、医師と直接会って話したいといった従業員もいます。オンラインだけを一律に指定すると、かえって申出のハードルが高くなる可能性があります。
オンラインと対面の両方を用意し、本人の希望や医師の判断に応じて選択できる体制が理想的です。最初はオンラインで実施し、心身の状態を十分に把握できない場合や医師が必要と判断した場合に、対面へ切り替える手順も決めておきましょう。
面談前後の役割分担を明確にする
オンライン面談の運用では、日程調整だけに注目しがちですが、面談後の対応まで担当者を決めなければ制度は機能しません。申出を受け付ける人、勤務情報を準備する人、医師へ送付する人、意見書を管理する人、就業上の措置を決定する人を明確にします。
所属長には、診断名や相談内容ではなく、業務調整に必要な情報だけを共有します。「誰が・いつまでに・何を行うか」を運用フローへ記載し、担当者が不在の場合の代行者も決めておくと、対応の停滞を防げます。
面談実施件数だけでなく対応の質を評価する
オンライン面談を導入した後は、面談件数だけを成果指標にしないことが重要です。申出から面談までの日数、通信トラブルの発生状況、医師意見の受領までの日数、就業上の措置の実施率、フォロー面談の完了率などを確認します。
従業員の個人情報を保護したうえで、利用しにくかった点や説明不足だった点も収集します。毎年度、衛生委員会などで運用状況を振り返り、申出方法、面談枠、通信環境、社内案内を改善することで、継続的に利用しやすい制度へ近づけられます。
高ストレス者面談をオンラインで行う際の注意点
オンラインで高ストレス者面談を実施する場合は、通信環境だけでなく、本人確認、プライバシー、情報セキュリティ、緊急時対応まで事前に整備する必要があります。企業は、使用するシステム、面談場所、接続不良時の対応、対面へ切り替える基準を明文化しましょう。面談担当医と人事担当者の役割も整理し、従業員が安心して相談でき、医師が心身の状態を適切に確認できる環境を確保することが重要です。
映像と音声を安定して送受信できる環境を整える
オンラインの面接指導では、医師と従業員が相互に表情、顔色、声、しぐさなどを確認でき、映像と音声を安定して送受信できることが求められます。音声のみの電話では、表情やしぐさを確認できないため、情報通信機器を用いた面接指導の要件を満たしません。
情報漏洩や不正アクセスを防止できるシステムを選び、会議URLの使い回しや、誰でも入室できる設定は避けましょう。従業員が複雑な操作をせずに利用できることも重要です。操作方法が難しい場合は、社内担当者が事前に支援します。
医師へ事業場と従業員の勤務情報を提供する
オンライン面談を担当する医師には、事業概要、業務内容、作業環境、対象者の労働時間や勤務状況などを提供しなければなりません。医師が本人の話だけを聞く運用では、職場の実態に即した就業上の措置を判断しにくくなります。
オンライン面談を担当する医師は、その事業場の産業医、継続的に健康管理を担当している医師、過去1年以内に事業場を巡視した医師、対象者へ指導した経験がある医師など、会社や従業員の状況を理解していることが望ましいとされています。
面談内容を録音・録画することを前提にしない
オンライン面談の実施要件として、録音や録画は求められていません。詳細な相談内容を録画すると、情報漏洩が発生した場合の影響が大きくなり、従業員が率直に話しにくくなるおそれもあります。
面談記録として必要なのは、医師が作成する報告書や就業上の措置に関する意見などです。システムに自動録画機能がある場合は無効にし、やむを得ず記録する必要がある場合には、目的、閲覧者、保存期間、廃棄方法を明確にしたうえで、事前に本人へ説明する必要があります。
緊急時に近隣の医療機関へつなげる体制をつくる
面談中に、自傷のおそれ、強い抑うつ症状、意識状態の異常など、緊急に対応すべき状態が確認される可能性があります。オンラインでは医師がその場で直接対応できないため、本人がいる場所の近隣医療機関や、事業場の産業保健スタッフと連携できる体制が必要です。
面談開始時に本人の現在地、緊急連絡先、同席可能な家族の有無などを確認する方法を決めておきます。緊急性が高い場合は、オンライン面談だけで完結させず、医療機関の受診や救急要請など、本人の安全を優先した対応へ切り替えます。
本人の申出や面談結果を理由に不利益な取扱いをしない
高ストレス者への法定面接は、本人からの申出を前提とします。企業が面談を強制したり、申し出なかったことを理由に評価を下げたりすることはできません。また、面接指導を申し出たことや医師意見を理由として、不当な配置転換や退職勧奨を行うことも避けなければなりません。
面談後の情報共有は、健康確保と業務調整に必要な範囲に限定します。所属長には「一定期間は残業を制限する」など、実行すべき措置だけを伝え、診断名、家庭事情、具体的な相談内容まで共有しないようにします。
オンライン高ストレス者面談の活用事例
オンライン高ストレス者面談は、複数拠点を持つ企業や、テレワーク勤務者が多い企業で特に有効です。導入時は、面談方法だけでなく、申出受付、勤務情報の共有、意見書の管理、就業上の措置までを統一する必要があります。各拠点が個別に対応するのではなく、人事部門が進捗を一元管理することで、面談の遅延や対応漏れを防ぎ、勤務地にかかわらず同じ水準の支援を提供できます。
全国に店舗を持つ企業の事例
全国に店舗を持つ企業では、本社の産業医訪問日に合わせて面談を実施していたため、地方勤務者は本社への移動が必要でした。対象者と産業医の日程が合わず、面談実施までに時間がかかることも課題となっていました。
オンライン面談の導入後は、人事担当者が申出を一元管理し、各店舗にある個室から面談へ参加する運用へ変更できます。勤務情報の提出様式と医師意見書も統一することで、面談後の残業制限や業務調整まで、拠点による差を抑えて対応できるようになります。
テレワーク中心の企業の事例
テレワーク中心の企業では、対象者が各地に居住しているため、面談のためだけに本社へ出社させることが難しいケースがあります。従来は本人が希望しても日程を調整できず、通常の産業医訪問日まで面談を待つことがありました。
オンライン面談枠を複数設け、専用フォームから本人が希望日時を申請できるようにすると、申出から面談までの時間を短縮しやすくなります。自宅に個室がない従業員には、貸会議室や社内拠点の個室を案内するなど、参加場所を複数用意することが重要です。
産業医クラウドでオンライン面談の運用体制を構築
高ストレス者面談をオンライン化するには、Web会議システムを導入するだけでは不十分です。オンライン対応が可能な医師の確保に加え、申出受付、勤務情報の提供、プライバシー保護、意見書の管理、就業上の措置、緊急時対応、フォローアップまでを一つの運用として整える必要があります。
産業医クラウドでは、企業の規模、業種、拠点数、勤務形態、メンタルヘルス上の課題に合った産業医の紹介を行っています。高ストレス者面談をはじめ、衛生委員会、職場巡視、健康診断後の対応、休職・復職支援など、面談前後の産業保健業務も含めた相談が可能です。
「地方拠点の面談担当医を確保できない」「オンライン面談の運用ルールが分からない」「面談後の就業措置まで支援できる産業医を探している」といった課題がある場合は、産業医クラウドのお問い合わせフォームからご相談ください。
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オンラインの高ストレス者面談に関するよくある質問
オンラインでの高ストレス者面談を検討する際は、法的な取扱い、必要な通信環境、個人情報の管理、緊急時対応などを事前に確認する必要があります。Web会議システムを用意するだけでは、適切な面接指導とはいえません。実施前に、担当医、使用端末、面談場所、接続不良時の対応、対面へ切り替える基準を整理し、衛生委員会などで運用方法を確認したうえで従業員へ周知しましょう。
高ストレス者面談はオンラインでも法的に認められますか?
所定の要件を満たせば、労働安全衛生法に基づく医師の面接指導もオンラインで実施できます。医師と従業員が互いの表情、顔色、声、しぐさなどを確認でき、映像と音声が安定して送受信できることが必要です。
情報セキュリティ、機器の操作性、プライバシー、緊急時対応についても体制を整えます。また、オンラインでの実施方法を衛生委員会などで調査審議し、あらかじめ従業員へ周知しておく必要があります。
電話だけで高ストレス者面談を実施できますか?
音声のみの電話では、医師と従業員が互いの表情、顔色、しぐさを確認できないため、オンラインの面接指導に求められる要件を満たしません。カメラとマイクを使用し、映像と音声を安定して送受信できるWeb会議システムなどを利用します。
映像が途中で止まる、音声が頻繁に途切れるなど、医師が本人の状態を十分に把握できない場合は、そのまま面談を続けず、再接続、日程変更、対面面談への切替を検討します。
従業員は自宅からオンライン面談を受けられますか?
第三者に面談内容を聞かれない環境を確保でき、通信環境などの要件を満たしていれば、自宅から参加することも可能です。個室を使用し、家族が入室しないようにする、イヤホンを使用するなどの対策を案内します。
自宅でプライバシーを確保できない場合は、会社の個室、近隣拠点、外部の貸会議室など、別の参加場所を用意します。企業が自宅からの参加を一律に求めるのではなく、本人が安心して話せる環境を選択できるようにすることが大切です。
面談担当医は自社の産業医でなければなりませんか?
法定の面接指導は医師が実施する必要がありますが、必ずしも自社で選任している産業医に限定されるわけではありません。外部の医師へ依頼することも可能です。
ただし、勤務状況や作業環境を踏まえた就業上の意見を得る必要があるため、産業保健の知識と企業面談の経験を持つ医師が適しています。外部医師へ依頼する場合は、勤務情報の提供方法、意見書の内容、緊急時対応、自社産業医や人事部門との連携範囲を確認しましょう。
オンライン面談を録画する必要はありますか?
オンライン面談を実施した証明として、映像や音声を録画する必要はありません。むしろ、詳細な健康情報や私生活上の相談が含まれるため、録画データを残すことで情報漏洩のリスクが高まります。
企業は、法令上必要な面接指導の記録や、医師から提出された報告書・意見書を適切に保存します。使用するWeb会議システムに自動録画機能が設定されていないかを事前に確認し、閲覧権限や保存期間を明確にしましょう。
従業員が面接指導を申し出ない場合はどうしますか?
高ストレス者への法定面接は本人の申出に基づくため、企業が強制することはできません。ただし、面談の目的、申出方法、情報共有の範囲、不利益な取扱いを行わないことを説明し、面談を受けるよう勧めることは可能です。
本人が法定面接を希望しない場合は、通常の産業医相談、保健師面談、外部相談窓口、医療機関などを案内します。欠勤や長時間労働など、ストレスチェック結果とは別の健康リスクが確認されている場合は、通常の健康管理ルートとして対応を続けます。
まとめ|オンライン面談は高ストレス者への早期支援を実現する手段
高ストレス者面談をオンラインで実施すると、産業医と従業員の日程を調整しやすくなり、複数拠点やテレワーク勤務者にも均一な面談機会を提供できます。移動時間や会議室確保の負担を減らし、申出から面談までの期間を短縮しやすいことも大きなメリットです。
ただし、オンライン化の目的は、面談を効率よく消化することではありません。映像・音声、情報セキュリティ、プライバシー、勤務情報の提供、緊急時対応、対面への切替基準を整え、対面と同等に心身の状態を確認できる体制が必要です。
さらに、面談後は医師意見を受け取るだけで終わらせず、労働時間や業務内容を調整し、フォローアップまで実施しなければなりません。
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