ストレスチェック義務化への対応は、従業員へ質問票を配布するだけでは完了しません。対象者の判定、実施者の選任、個人結果の通知、高ストレス者への面接指導、医師意見に基づく措置、記録管理まで一連の体制が必要です。
2028年4月1日からは、労働者数50人未満の事業場にも実施義務が拡大されます。未実施だけでなく、情報管理や事後対応の不備によって生じる企業リスクを理解し、早めに準備することが重要です。
目次
- 義務化によって企業が管理すべき工程が増える
- 企業リスク1|対象事業場や対象者の判定を誤る
- 企業リスク2|実施者や運用体制に不備がある
- 企業リスク3|労働基準監督署への報告を怠る
- 企業リスク4|高ストレス者への事後対応が遅れる
- 企業リスク5|安全配慮義務をめぐる紛争が起こる
- 企業リスク6|個人情報の漏えいと不適切な利用が起こる
- 企業リスク7|不利益取扱いによる労務トラブルが起こる
- 企業リスク8|担当者負担と追加費用が想定以上に増える
- 企業リスク9|制度への不信から正確な結果を得られない
- ストレスチェック義務化のリスクを減らす8つの対策
- 義務化対応で確認すべきチェックリスト
- 義務化への準備不足によって対応が遅れた想定事例
- ストレスチェック義務化への対応は産業医クラウドへ
- ストレスチェック義務化の企業リスクに関するよくある質問
- まとめ|義務化後は未実施以外の企業リスクにも備える
義務化によって企業が管理すべき工程が増える
義務化によって増えるのは、ストレスチェックの受検費用だけではありません。事業場ごとの人数管理、専門職の確保、実施規程の整備、従業員への周知、面接指導の調整など、継続的な実務が発生します。
一つの工程でも担当者や期限が曖昧であれば、報告漏れ、面接指導の遅延、個人結果の誤共有につながります。制度を年1回のアンケートではなく、年間の健康管理プログラムとして設計しましょう。
| リスク区分 | 主な問題 | 想定される影響 |
|---|---|---|
| 法令対応 | 未実施、報告漏れ、実施者の不備 | 行政指導、罰則、再実施の負担 |
| 健康管理 | 面接指導や医師意見への未対応 | 不調の悪化、休職、労務紛争 |
| 個人情報 | 無断閲覧、誤送信、過剰共有 | 従業員の不信、情報漏えい |
| 労務管理 | 不利益取扱い、不適切な配置判断 | 紛争、損害賠償、離職 |
| 業務運用 | 担当者不足、医師不足、対応遅延 | 人事負担、追加費用、対応漏れ |
| 組織運営 | 結果を職場改善へ活用しない | 制度の形骸化、同様の不調再発 |
企業リスク1|対象事業場や対象者の判定を誤る
ストレスチェック制度は、原則として企業全体ではなく事業場単位で適用されます。本社、支店、工場、店舗などが場所的・組織的に独立している場合は、それぞれの人数と実施状況を管理する必要があります。
また、義務対象となる事業場の人数と、実際にストレスチェックを受ける対象者の基準は同じではありません。人数の数え方を誤ると、義務発生や報告の要否を見落とす可能性があります。
会社全体の人数だけで義務対象を判断する
本社に40人、支店に20人いる企業で、全社60人だから両拠点とも現在の義務対象になるとは限りません。反対に、本社と同じ会社だから支店を別管理しなくてよいとも限りません。
各拠点が一つの事業場として扱われるかを確認し、所在地、労働者数、実施者、実施時期、管轄する労働基準監督署を一覧化しましょう。全社共通の制度を導入する場合も、事業場ごとの管理が必要です。
パートや派遣労働者を人数に含めていない
義務対象となる事業場かを判断する「常時使用する労働者」には、勤務時間の短いパートやアルバイト、派遣先で継続して働く派遣労働者も含まれる場合があります。
一方、実際の受検義務対象者は、契約期間や週の所定労働時間などの条件から判断します。事業場の人数判定と受検対象者の抽出を同じ名簿だけで処理せず、それぞれの基準で確認しましょう。
派遣元と派遣先の役割を混同する
派遣労働者に対する法定ストレスチェックは、原則として雇用関係のある派遣元が実施します。一方、派遣先では、事業場の義務判定人数に派遣労働者を含めて判断する必要があります。
さらに、職場環境改善の観点では、派遣先が派遣労働者を含めて集団分析を行うことが望まれます。派遣元と派遣先で、受検、結果管理、面接指導、集団分析の役割を整理しましょう。
企業リスク2|実施者や運用体制に不備がある
ストレスチェックは、通常の社内アンケートとは異なり、法令上定められた資格を持つ実施者が関与しなければなりません。システムによる自動計算だけで制度を完結させることはできません。
また、個人結果を扱う実施事務従事者と、全体の進行を管理する人事担当者は役割が異なります。担当者の資格、人事権、アクセス権限を確認し、実施前に業務分担を定めましょう。
資格を持たない人を実施者にしている
実施者になれるのは、医師、保健師のほか、原則として所定の研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師です。人事担当者や衛生管理者の資格だけでは実施者になれません。
外部サービスを利用する場合は、システム提供会社の名称だけでなく、実際に誰が実施者となり、どの資格を持ち、どの工程で結果を確認するのかを確認しましょう。
産業医が自動的に実施者になると考えている
産業医を選任していても、その産業医が自動的にストレスチェックの実施者になるわけではありません。事業者が正式に選任し、産業医本人が調査票、評価方法、結果確認などの業務を引き受ける必要があります。
既存の産業医契約にストレスチェック業務が含まれていない場合もあります。業務内容、対応件数、追加費用、結果確認日を事前に確認しましょう。
人事権を持つ人が個人結果を処理している
解雇、昇進、異動について直接の権限を持つ人は、その権限が及ぶ従業員の個人結果を扱う実施事務に従事できません。人事部に所属しているかだけでなく、実際の決裁権限から判断します。
人事権を持たない担当者を選任しても、その上司が同じ管理画面や共有フォルダへアクセスできれば、情報を分離したことにはなりません。権限設定まで確認しましょう。
企業リスク3|労働基準監督署への報告を怠る
常時50人以上の労働者を使用する事業場は、ストレスチェックの実施状況を1年以内ごとに1回、所轄の労働基準監督署へ報告する必要があります。実施していない場合も、報告義務がなくなるわけではありません。
未報告は労働安全衛生法に基づく罰則の対象となり、50万円以下の罰金が科される可能性があります。報告は企業単位ではなく、原則として事業場ごとに行います。
ストレスチェックを未実施だから報告しない
義務対象となる事業場がストレスチェックを実施できなかった場合も、実施結果等報告書を提出する必要があります。未実施であることを理由に報告書を出さないと、実施義務と報告義務の両方に問題が生じます。
実施できなかった年度も報告し、未実施となった原因を整理しましょう。翌年度まで放置せず、実施者や委託先を確保し、早期に改善計画を作成することが重要です。
本社が全拠点分を一括して報告する
本社で各事業場のデータを集約することはできますが、報告書は原則として事業場ごとに、その所在地を管轄する労働基準監督署へ提出します。
本社だけが提出し、支店や工場の報告を省略すると、未報告となる可能性があります。事業場名、管轄署、実施年月、提出日を管理する台帳を作り、提出済みの控えを保存しましょう。
50人未満の事業場にも報告義務があると誤解する
2028年4月1日以降、50人未満の事業場にもストレスチェックの実施義務は広がりますが、労働基準監督署への実施結果報告は50人以上の事業場に限られます。
実施義務と報告義務の基準が異なるため、拠点ごとに分けて管理しましょう。報告が不要な小規模事業場でも、実施者、結果通知、面接指導、情報管理などの制度運用は必要です。
企業リスク4|高ストレス者への事後対応が遅れる
高ストレス者として選定され、実施者が医師による面接指導を必要と認めた従業員から申出があった場合、企業は医師による面接指導を実施する必要があります。
受検システムだけを導入し、面接指導医や申出窓口を用意していないと、結果通知後に対応が止まります。面接指導から医師意見、就業上の措置までを実施前に設計しましょう。
面接指導の申出を受けても医師を手配できない
面接指導の申出は、結果通知からおおむね1か月以内、面接指導は申出からおおむね1か月以内に行うことが目安とされています。申出後に医師を探し始めると、対応が遅れる可能性があります。
ストレスチェック開始前に、面接指導医、面接枠、オンライン対応、日程調整担当者を決めましょう。産業医がいる場合も、対応可能な件数を確認しておく必要があります。
高ストレス者全員へ面接を強制する
法定面接指導は、面接指導が必要とされた本人からの申出に基づいて実施します。企業が高ストレス者全員を強制的に呼び出したり、申出をしない理由を上司が確認したりすることは適切ではありません。
面接を希望しない従業員には、任意の産業医相談や外部相談窓口を案内できます。制度の違いと会社へ共有される情報の範囲を説明しましょう。
面接後に医師の意見を聴いていない
企業は面接指導後、医師から就業上の措置の必要性と内容について意見を聴きます。意見聴取は、面接指導後おおむね1か月以内に行うことが目安です。
面接を実施した事実だけを記録し、意見書を受け取っていなければ、必要な健康配慮を判断できません。報告書・意見書の書式、提出先、社内の確認担当者をあらかじめ決めましょう。
医師意見を現場の措置へ反映していない
産業医から残業制限、夜勤禁止、業務軽減などの意見が出ても、管理職へ伝わらず通常勤務が続けば、従業員の健康状態が悪化する可能性があります。
人事担当者は、開始日、措置内容、実施期間、再評価日を具体化し、本人と管理職へ説明しましょう。意見どおりの対応が難しい場合は、放置せず、代替措置を産業医へ相談します。
企業リスク5|安全配慮義務をめぐる紛争が起こる
ストレスチェックを実施しなかったことだけで、直ちに安全配慮義務違反が成立するわけではありません。実際の責任は、企業が不調の兆候を認識できたか、認識後にどのような措置を講じたかなど、個別の事情から判断されます。
ただし、ストレスチェック結果を把握できない場合でも、長時間労働、欠勤、相談内容などから健康リスクを把握できることがあります。
個人結果が分からないことを理由に何もしない
従業員が個人結果の提供へ同意せず、法定面接指導も申し出なかった場合、企業はストレスチェック結果を把握できません。しかし、企業の安全配慮義務が一切なくなるわけではありません。
長時間労働、遅刻・欠勤の増加、業務ミス、本人や家族からの相談など、別の情報から不調を認識できる場合があります。ストレスチェック以外の健康管理も継続しましょう。
不調の兆候を把握しても対応しない
管理職が、表情の変化、業務ミス、欠勤、睡眠不足の訴えなどを把握しているにもかかわらず、本人の努力不足として放置すれば、状態が悪化する可能性があります。
管理職に診断を求める必要はありません。普段との変化に気付き、人事や産業医へつなぐラインケアの流れを整えましょう。相談を受けた後の対応と経過も記録します。
対応経緯を記録していない
面談や業務軽減を行っていても、実施日、内容、本人への説明が記録されていなければ、後から対応経緯を確認できません。担当者の異動によって配慮が中断する可能性もあります。
面接申出、医師意見、企業の決定、本人への説明、措置開始日、フォロー結果を一つの台帳で管理しましょう。健康情報のため、通常の人事評価資料とは分けて保存します。
企業リスク6|個人情報の漏えいと不適切な利用が起こる
ストレスチェック結果には、心理的負担、心身の反応、職場の支援状況など、機微性の高い健康情報が含まれます。情報が人事評価へ利用されると従業員が感じれば、正確な回答を得にくくなります。
実施者、実施事務従事者、制度担当者、管理職でアクセス権限を分け、業務上必要のない人が個人結果を閲覧できない仕組みをつくりましょう。
本人の同意なく企業が個人結果を取得する
個人結果は実施者から従業員本人へ直接通知され、会社が結果の提供を受けるには、原則として結果通知後の本人同意が必要です。
人事担当者がシステム管理者として個人結果を閲覧する、高ストレス者一覧を委託先から受け取るといった運用は避けましょう。制度担当者には受検状況だけを表示し、結果閲覧権限を付与しない設定が必要です。
個人結果を共有フォルダやメールで管理する
個人結果を人事部の共有フォルダへ保存したり、パスワードを設定せずメールで送信したりすると、業務上必要のない人が閲覧できる可能性があります。
専用システムやアクセス制御された保存先を利用し、閲覧・出力・削除権限を分けましょう。担当者の異動や退職時には、旧アカウントを速やかに停止し、アクセスログも確認します。
少人数部署の集団分析から個人を推測される
部署の人数が少ない場合、集団分析結果から特定の従業員の回答や高ストレス状態を推測されるおそれがあります。分析項目を細分化するほど、識別のリスクは高まります。
複数部署を統合する、個人を識別できない分析方法を使うなど、実施者や産業医と方法を検討しましょう。分析単位と結果の共有範囲は、衛生委員会等で事前に決めることが重要です。
外部委託先の管理体制を確認していない
外部サービスへ委託しても、企業が委託先を適切に管理する責任は残ります。実施者の資格だけでなく、データの保存場所、アクセスできる担当者、再委託先を確認しましょう。
漏えい発生時の報告期限、原因調査、本人への連絡、契約終了後のデータ返却・削除も契約に明記します。料金や操作性だけで委託先を決めないことが重要です。
企業リスク7|不利益取扱いによる労務トラブルが起こる
ストレスチェック制度では、受検しないこと、個人結果の提供に同意しないこと、面接指導を申し出たことなどを理由とする不利益な取扱いが禁止されています。
健康確保を目的とする措置であっても、医師の意見や本人の状態を確認せず、降格、異動、退職勧奨へ直結させれば、労務トラブルにつながる可能性があります。
面接指導の申出を人事評価へ反映する
面接指導を申し出たことを理由に評価を下げる、昇進候補から外す、契約更新を見送るといった取扱いは認められません。
申出情報は、面接調整や就業上の措置に必要な担当者だけで共有します。評価を行う管理職には、申出の事実や面談内容ではなく、勤務上必要な配慮だけを伝える運用が重要です。
高ストレス判定だけで配置転換を決める
高ストレス者であることだけを理由に、本人の意に反する配置転換、降格、休職を行うことは適切ではありません。高ストレス判定は、精神疾患の診断や就業能力の判定ではないためです。
必要な措置は、医師の意見、本人の状態、業務内容、職場の受入体制を踏まえて判断します。措置の目的、期間、再評価時期を本人へ説明しましょう。
未受検者に制裁を加える
企業にはストレスチェックの実施義務がありますが、従業員本人に法令上の受検義務はありません。未受検を理由に懲戒処分を行う、評価を下げるといった取扱いは避ける必要があります。
受検率を高めるには、制度の目的、個人結果の取扱い、会社へ共有される情報を説明しましょう。未受検者への再案内も、直属の上司ではなく制度担当者から行うと安心感を保ちやすくなります。
企業リスク8|担当者負担と追加費用が想定以上に増える
ストレスチェックでは、対象者名簿の作成、社内周知、受検案内、問い合わせ、結果通知、面接指導、記録保存など、多くの実務が発生します。
人事担当者が少ない企業では、一部の作業が遅れるだけで、結果通知や面接指導にも影響します。システム利用料だけでなく、専門職費用と社内工数を含めた運用計画を作成しましょう。
実施者や面接指導医を確保できない
ストレスチェックには資格を持つ実施者が必要であり、面接指導の申出があった場合には医師を確保しなければなりません。産業医の選任義務がない小規模事業場では、依頼できる医師がいないことがあります。
外部実施者、産業医紹介サービス、地域産業保健センターなど、利用できる選択肢を早めに確認しましょう。申出後に探し始める運用は避けます。
実施時期に作業が集中する
対象者登録、メール未着、パスワード再発行、未受検者への案内などは、受検期間中に集中します。紙受検を併用する場合は、配布・回収・入力の負担も加わります。
年間スケジュールを作成し、名簿の締切、案内日、結果通知日、面接枠を設定しましょう。問い合わせ窓口や登録作業を外部へ委託する方法もあります。
システム料金以外の費用を予算化していない
ストレスチェックの費用には、初期設定、紙対応、実施者、高ストレス者面談、集団分析、データ保存などが含まれます。基本料金にすべて含まれているとは限りません。
無料プログラムを利用しても、担当者の作業時間や医師への報酬は必要です。必要な業務を一覧化し、初年度費用、毎年の運用費用、面接発生時の変動費を分けて予算化しましょう。
企業リスク9|制度への不信から正確な結果を得られない
従業員が「結果を人事に見られる」「高ストレスだと異動させられる」と感じれば、正直に回答しにくくなります。形式上の受検率が高くても、回答の信頼性が低ければ制度の目的を達成できません。
誰が個人結果を扱い、会社へどの情報が伝わるのかを具体的に説明しましょう。情報管理の仕組みと改善への活用方法を伝えることが重要です。
実施目的や情報の流れを説明していない
「法律で決まったため受けてください」という案内だけでは、従業員は制度の目的や結果の取扱いを理解できません。
個人結果は本人へ直接通知されること、会社が取得するには原則として同意が必要なこと、面接申出を理由に不利益な取扱いを行わないことを説明しましょう。実施者や相談窓口も併せて周知します。
結果を職場改善へ活用していない
毎年ストレスチェックを行っても、集団分析や改善策が示されなければ、「回答しても何も変わらない」と受け取られます。
個人を特定できない範囲で、確認された課題、実施する施策、評価時期を従業員へ伝えましょう。すぐに解決できない課題についても、検討状況を説明することで制度への信頼を維持しやすくなります。
ストレスチェック義務化のリスクを減らす8つの対策
企業リスクを減らすには、受検システムを導入する前に、対象事業場、実施者、情報管理、面接指導体制を整理する必要があります。
実施前から結果通知後までの工程を一覧化し、それぞれの担当者、期限、記録方法を決めましょう。以下の対策を年間の実施プログラムへ組み込むことが重要です。
1.事業場と対象者の管理台帳を作成する
本社、支店、工場、店舗ごとに、常時使用する労働者数、受検対象者数、実施義務、報告義務を整理します。人数の増減を年1回だけ確認するのではなく、採用や組織再編の際にも更新しましょう。
派遣労働者、パート、休職者、出向者についても取扱いを決めます。判断に迷う場合は、社会保険労務士や所轄の労働基準監督署へ確認することが有効です。
2.実施規程と役割分担を文書化する
対象者、実施時期、調査票、評価方法、結果通知、面接指導、記録保存などを社内規程へ記載します。
実施者、実施事務従事者、制度担当者、面接指導医の担当業務も明確にしましょう。「ストレスチェックに関する事務一式」と曖昧にせず、誰が個人結果を扱い、誰が全体進行だけを管理するかを分けます。
3.資格と契約内容を確認して専門職を確保する
法令上の資格を持つ実施者を選任し、高ストレス者への面接指導を担当する医師も確保します。自社の産業医へ依頼する場合は、通常契約に実施者業務や面接指導が含まれているか確認しましょう。
外部サービスでは、実施者の資格、面接指導の料金、対応可能件数、オンライン対応の可否を確認します。
4.個人結果へのアクセス権限を分離する
制度担当者には受検状況、実施者・実施事務従事者には個人結果、管理職には必要な就業上の措置だけを提供するなど、役割ごとに情報を分けます。
共通IDや共有フォルダは使用せず、アクセスログを確認できるシステムを利用しましょう。異動・退職時には権限を削除し、データの出力先も定期的に確認します。
5.面接指導から就業措置までの期限を決める
結果通知、申出受付、面接指導、医師意見の受領、就業措置、フォロー面談までを一つのフローにします。
申出窓口、日程調整担当者、産業医へ渡す勤務情報、意見書の提出先を事前に決めましょう。面接後は、措置の開始日、期間、再評価日を設定し、対応が止まらないよう台帳で管理します。
6.外部委託先を情報管理面から審査する
委託先を選ぶ際は、料金や操作性だけでなく、実施者、データ保存場所、アクセス権限、再委託、事故対応を確認します。
契約書には、利用目的、保存期間、漏えい時の連絡、契約終了後の返却・削除を明記しましょう。委託先へ任せきりにせず、年1回は運用状況や権限設定を確認します。
7.集団分析から具体的な職場改善を行う
集団分析では、仕事量、裁量、上司・同僚からの支援などを確認します。数値だけで問題部署を決めず、勤怠、人員、業務内容、現場への聞き取りと組み合わせましょう。
業務再配分、会議削減、管理職支援、相談体制など、実行可能な施策を決めます。担当者、期限、評価指標も設定してください。
8.実施後に運用上の問題を振り返る
実施後は、受検率だけでなく、問い合わせ件数、結果通知までの日数、面接指導の実施状況、担当者の作業時間を確認します。
誤送信、アクセス権限の不備、面接対応の遅れがなかったかも振り返りましょう。問題点を翌年度の規程、システム設定、委託範囲、予算へ反映することで、継続運用の成功につながります。
義務化対応で確認すべきチェックリスト
ストレスチェック義務化への準備では、システム契約だけでなく、実施前から面接指導後までの体制を確認する必要があります。
以下の項目に未対応のものがある場合は、担当者と期限を決めて準備を進めましょう。
- 事業場ごとの労働者数を確認している
- 義務判定人数と受検対象者を分けて管理している
- 派遣労働者の取扱いを整理している
- 資格を持つ実施者を選任している
- 面接指導医を確保している
- 実施事務従事者の人事権を確認している
- ストレスチェック実施規程を整備している
- 個人結果へのアクセス権限を分けている
- 結果通知と面接申出の方法を周知している
- 医師へ提供する勤務情報の様式がある
- 意見書を就業上の措置へ反映する手順がある
- 面接指導記録を5年間保存できる
- 事業場ごとの報告期限を管理している
- 外部委託先の情報管理を確認している
- 集団分析後の改善責任者を決めている
義務化への準備不足によって対応が遅れた想定事例
従業員45人の事業場が採用拡大によって55人となったものの、人事担当者が義務対象になったことを把握していなかったとします。ストレスチェックの実施者や面接指導医も決まっておらず、従業員から不調の相談があった後も、産業医面談まで時間がかかりました。
企業は人数管理を見直し、外部実施者と産業医を確保します。対象者管理、面接指導、就業措置、集団分析を年間計画へ組み込み、担当者と期限を明確にしました。
単に受検システムを導入するのではなく、実施後まで含めた体制へ変更した想定事例です。
ストレスチェック義務化への対応は産業医クラウドへ
ストレスチェック義務化では、実施者の確保、個人結果の管理、高ストレス者への面接指導、医師意見に基づく就業上の措置など、専門的な対応が必要です。人事担当者だけで運用すると、負担が集中し、対応漏れが生じる可能性があります。
産業医クラウドでは、厚生労働省推奨の57項目に対応したストレスチェック、結果集計、集団分析、高ストレス者への産業医面談の調整などを支援しています。企業の規模や業種に合う産業医の選任についても相談可能です。
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ストレスチェック義務化の企業リスクに関するよくある質問
ストレスチェック義務化については、未実施時の罰則、50人未満の事業場の報告義務、高ストレス者への対応など、誤解されやすい点があります。
ここでは、人事担当者や経営者から寄せられやすい質問を解説します。
ストレスチェックを実施しないと罰則がありますか?
現行制度では、ストレスチェックを実施しなかった行為そのものに直接対応する罰則は設けられていません。ただし、義務対象事業場が実施しなければ、法令上の義務を履行していない状態となります。
また、50人以上の事業場では、未実施の場合も労働基準監督署への報告が必要です。罰則がないことを理由に、実施を見送ることは適切ではありません。
労働基準監督署へ報告しない場合の罰則はありますか?
常時50人以上の事業場が実施結果等報告書を提出しなかった場合は、労働安全衛生法に基づき、50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。
ストレスチェックを実施できなかった場合も報告義務は残ります。事業場ごとに管轄する労働基準監督署と提出日を管理し、報告漏れを防ぎましょう。
50人未満の事業場はいつから義務対象になりますか?
労働者数50人未満の事業場に対するストレスチェックの実施義務は、2028年4月1日から施行されます。
産業医の選任義務がない企業でも、資格を持つ実施者や面接指導を担当する医師の確保が必要です。外部委託先の選定や社内規程の整備には時間がかかるため、早めに準備しましょう。
50人未満の事業場にも労基署への報告義務がありますか?
2028年4月1日以降も、労働者数50人未満の事業場には、ストレスチェック実施結果の労働基準監督署への報告義務はありません。
ただし、報告が不要でも、ストレスチェックの実施、本人への結果通知、高ストレス者への面接指導、個人情報管理は適切に行う必要があります。
高ストレス者全員へ医師面接を行う必要がありますか?
高ストレス者として選定され、実施者が医師による面接指導を必要と認めた従業員のうち、本人から申出があった場合に面接指導を実施します。
高ストレス者全員へ法定面接を強制する制度ではありません。申出を希望しない従業員には、任意の産業医相談や外部相談窓口を案内できます。
従業員はストレスチェックを拒否できますか?
企業にはストレスチェックの実施義務がありますが、従業員本人には法令上の受検義務が課されていません。
企業が受検を強制したり、未受検を理由に評価を下げたりすることは避ける必要があります。制度の目的、個人結果の取扱い、守秘義務を説明し、安心して受検できる環境を整えましょう。
会社はストレスチェックの個人結果を見られますか?
個人結果は実施者から従業員本人へ直接通知され、企業は原則として本人の同意なく結果の提供を受けることができません。
本人同意によって取得した場合も、健康管理や就業上の措置に必要な範囲で利用しなければなりません。人事評価、昇進、契約更新の判断へ利用することは避けましょう。
面接指導を申し出た従業員を異動させてもよいですか?
面接指導を申し出たことだけを理由に、不利益となる異動、降格、退職勧奨を行うことは認められません。
健康確保のために配置変更が必要な場合は、医師の意見、本人の状態、業務内容を踏まえて判断します。措置の目的、期間、再評価時期を本人へ説明し、必要な範囲を超えないよう注意しましょう。
外部委託すれば企業の責任はなくなりますか?
外部サービスへ委託しても、制度を実施する責任は企業に残ります。企業は、委託先の実施者資格、情報管理、面接指導体制を確認する必要があります。
対象者の整理、従業員への周知、医師意見に基づく就業措置など、社内で行う業務もあります。委託先との役割を契約書と業務フローで明確にしましょう。
ストレスチェックを実施すれば安全配慮義務を果たせますか?
ストレスチェックを実施しただけで、安全配慮義務をすべて果たしたことにはなりません。長時間労働や不調の兆候、本人からの相談を把握した場合は、必要な健康配慮を検討する必要があります。
面接指導、産業医の意見、就業上の措置、日常的な健康相談、職場環境改善を組み合わせることが重要です。
集団分析を実施しない場合に罰則はありますか?
集団分析と、その結果を踏まえた職場環境改善は、事業場規模にかかわらず努力義務です。実施しなかったことだけで、直ちに罰則が科される制度ではありません。
ただし、個人対応だけでは職場に共通する業務量や支援不足を改善できません。可能な範囲で分析を行い、職場改善へ活用しましょう。
まとめ|義務化後は未実施以外の企業リスクにも備える
ストレスチェック義務化によって増える企業リスクは、未実施や報告漏れだけではありません。対象者の判定ミス、実施者の不備、高ストレス者対応の遅れ、個人結果の誤取扱い、不利益取扱いなども、労務トラブルや従業員からの不信につながります。
企業は、対象事業場の確認から面接指導、就業上の措置、記録保存までを一つのプログラムとして整備する必要があります。実施後は集団分析を活用し、同じ職場で不調が繰り返されないよう改善を進めましょう。
ストレスチェック義務化への対応や産業医体制に不安がある企業は、産業医クラウドへご相談ください。
産業医の選任、ストレスチェック、高ストレス者面談、集団分析、職場改善までの支援内容は、お問い合わせフォームまたは資料請求から確認できます。
産業医紹介サービスを検討している企業様必見!