ストレスチェックは、従業員が自身のストレス状態に気付き、必要な相談や医師の面接指導へつなげるための制度です。さらに、回答結果を部署や職種ごとに集計・分析することで、仕事量、裁量、上司・同僚からの支援といった組織上の課題も把握できます。
健康経営では、従業員の健康課題を経営的な視点で捉え、施策を実行・評価することが重要です。
本記事では、ストレスチェックを法令対応だけで終わらせず、健康経営の改善サイクルへ組み込む方法を解説します。
健康経営とストレスチェックは役割が異なる
健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点から考え、健康保持・増進につながる取り組みを戦略的に実践する考え方です。一方、ストレスチェックは、心理的な負担や職場のストレス要因を把握するための制度・データに位置付けられます。
ストレスチェックを年1回実施しただけでは、健康経営を実践したことにはなりません。結果を経営課題と結び付け、施策の実施と効果検証まで行う必要があります。
| 比較項目 | ストレスチェック | 健康経営 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 個人と職場のストレス状態を把握する | 従業員の健康を経営戦略として支える |
| 対象範囲 | 心理的負担、仕事上の要因、周囲の支援 | 心身の健康、働き方、組織環境全般 |
| 主な取り組み | 質問票、結果通知、面接指導、集団分析 | 方針、体制、施策、評価、継続的改善 |
| 企業での活用 | 健康課題を把握するための情報 | 人材定着や組織活性化につなげる活動 |
ストレスチェックは法令に基づく安全衛生活動
ストレスチェック制度では、本人への結果通知や、高ストレス者から申出があった場合の医師による面接指導などが定められています。現在は常時50人以上の労働者を使用する事業場が実施義務の対象ですが、2028年4月1日からは50人未満の事業場にも義務が拡大されます。
企業は健康経営への活用以前に、個人情報の管理、面接指導体制、実施後の対応など、法令上必要な体制を確実に整える必要があります。
健康経営は企業が任意で進める経営上の取り組み
健康経営そのものは、すべての企業へ法律で義務付けられているものではありません。企業が経営理念や人材戦略に基づき、従業員の健康を支える施策を計画的に実践する取り組みです。
健康診断やストレスチェックなどの法定対応を基盤としながら、働き方、コミュニケーション、両立支援、休復職支援などへ範囲を広げます。認定取得だけを目標にせず、自社の経営課題を解決する手段として設計することが重要です。
ストレスチェックは健康経営の現状分析に活用できる
健康経営を始める際は、従業員が抱える健康課題を客観的に把握する必要があります。ストレスチェックの集団分析を活用すれば、仕事量、裁量、上司・同僚の支援など、職場単位の傾向を確認できます。
健康診断では把握しにくい心理的な負担や組織上の問題を補える点が特徴です。ただし、ストレスチェックだけで原因を特定できるわけではありません。勤怠や業務内容と組み合わせて評価します。
個人結果と集団分析を健康経営で使い分ける
ストレスチェック結果には、本人へ通知される個人結果と、部署や職種ごとに集計する集団分析結果があります。個人結果は本人のセルフケアや医師面接へ活用し、集団分析結果は組織の課題把握と職場改善へ利用します。
健康経営の施策を決めるために、企業が個人結果を収集する必要はありません。本人の同意なく個人結果を取得したり、人事評価へ利用したりせず、個人支援と組織改善を分けて運用しましょう。
個人結果は本人の健康支援に利用する
個人結果では、仕事の負担、心身に表れている反応、上司・同僚からの支援などを確認できます。本人が自身の状態に気付き、休養、セルフケア、産業医相談などを検討するために利用します。
高ストレス者として選定され、実施者が必要と認めた場合は、本人の申出に基づき医師の面接指導を行います。個人結果を健康経営のKPIとして人事部が一覧化したり、配置や評価へ利用したりすることは避けなければなりません。
集団分析は組織の課題把握に利用する
集団分析では、部署、職種、拠点などの単位でストレスチェック結果を集計し、職場に共通する特徴を把握します。仕事量が高い、裁量が低い、上司からの支援が不足しているなど、健康経営施策を検討する手掛かりになります。
分析は特定の個人を識別できない方法で行うことが必要です。少人数部署では、他部署と統合するなど、改善への有用性とプライバシー保護を両立できる単位を設定します。
ストレスチェックが健康経営につながらない6つの理由
ストレスチェックを毎年実施していても、個人結果を通知して終わっている企業や、集団分析結果を人事部内で保管している企業では、健康経営へ十分に活用できません。
健康経営では、健康課題と経営課題を結び付け、改善施策を実施し、その効果を確認する必要があります。ここでは、ストレスチェックが形骸化しやすい代表的な原因を解説します。
1.法令対応を終えることが目標になっている
質問票を配布し、個人結果を通知し、労働基準監督署への報告を行った段階で対応を終えると、職場のストレス要因は改善されません。法令上必要な手続きと、健康経営として行う組織改善を分けて考える必要があります。
実施前から、高ストレス者への対応、集団分析、現場への聞き取り、改善施策、効果確認までを年間計画へ組み込みましょう。「実施したか」だけでなく、「結果から何を変えたか」を確認します。
2.経営課題と分析結果が結び付いていない
集団分析で仕事量や上司の支援に課題が見つかっても、自社が解決したい経営課題との関係が整理されていなければ、施策の優先順位を決められません。
若手社員の離職、管理職の疲弊、長時間労働、休職者の増加など、自社が抱える課題を明確にしましょう。そのうえで、どの指標と関係する可能性があるかを確認し、勤怠、異動、休職、離職などのデータと組み合わせます。
3.高ストレス者率だけを評価している
高ストレス者率が下がったことだけで、健康経営が成功したとは判断できません。従業員が個人情報の取扱いを不安に感じ、実態よりストレスを低く回答している可能性があります。実施時期や回答者の構成によっても結果は変化します。
高ストレス者率だけでなく、受検率、仕事量、裁量、周囲の支援、時間外労働、休暇、欠勤、離職など、複数の情報から職場の変化を評価しましょう。
4.分析結果を管理職へ渡すだけになっている
管理職へ部署別の数値を渡し、「改善してください」と求めても、結果の意味や具体的な改善方法が分からなければ対応は進みません。数値の悪化を管理職の責任とすると、問題を隠したり、回答を控えるよう求めたりするおそれもあります。
産業医や人事担当者が結果を説明し、管理職の負担も確認しましょう。人員、予算、業務量に関する課題は、経営層が判断しなければ改善できない場合があります。
5.セルフケア施策だけで対応している
仕事量や人員不足が問題となっている職場に対して、セルフケア研修やストレス対処法の案内だけを行っても、根本的な改善にはつながりません。
従業員個人が取り組む施策と、企業が変更する職場要因を分けて検討しましょう。業務配分、会議、承認手続き、納期、人員配置、管理職の負担など、組織側で改善できる内容を優先します。個人のストレス耐性だけに責任を負わせないことが重要です。
6.翌年度まで効果を確認していない
施策の効果を次回のストレスチェックまで確認しない場合、実施できていない施策や、効果の低い施策が長期間続く可能性があります。相談窓口を設けても認知されていない、業務を再配分しても別の人へ負担が移っているケースもあります。
施策の開始から3か月後、6か月後などに、実施状況、残業、休暇、相談利用、従業員の意見を確認しましょう。必要に応じて施策や目標を修正します。
ストレスチェックを健康経営戦略へ組み込む方法
ストレスチェックを健康経営へ活用するには、集団分析の数値から直接施策を選ぶのではなく、経営課題、健康課題、施策、評価指標を一つの流れで整理することが重要です。
健康経営戦略マップなどを利用し、「なぜその施策を実施するのか」「何が変われば経営課題の解決に近づくのか」を可視化しましょう。
| 整理する項目 | 具体例 |
|---|---|
| 経営課題 | 若手社員の離職、管理職の疲弊 |
| 健康・組織課題 | 業務集中、支援不足、心理的負担 |
| 確認するデータ | 集団分析、残業、休暇、離職、面談状況 |
| 実施する施策 | 業務再配分、管理職支援、相談体制 |
| 実施状況の指標 | 施策実施率、面談率、窓口認知率 |
| 変化を測る指標 | 仕事量、支援、残業、欠勤、離職 |
経営課題を具体的に設定する
健康経営で解決したい課題を、経営層と具体的に整理します。「従業員を健康にする」だけでは、施策や評価指標を決められません。
例えば、「若手社員の早期離職を減らす」「管理職の長時間労働を改善する」「休職の長期化を防ぐ」など、対象と目指す状態を明確にします。経営課題が決まれば、ストレスチェックのどの指標や、どの部署の状況を重点的に確認するかを判断しやすくなります。
経営課題に関係する健康・組織課題を整理する
経営課題の背景に、どのような健康・組織上の問題があるかを検討します。若手社員の離職であれば、仕事量、役割の不明確さ、上司からの支援不足などが関係している可能性があります。
ただし、集団分析だけで原因を断定してはいけません。残業、異動、休暇、面談、退職理由などを確認し、現場への聞き取りで仮説を検証します。原因と考えられる課題を絞り込んでから、施策を選びましょう。
施策と評価指標の因果関係を整理する
施策を決める際は、実施したことで何が変わり、最終的にどの経営課題へ影響するのかを整理します。例えば、管理職の業務を軽減し、部下との面談時間を確保することで、上司の支援を高め、離職防止につなげる流れです。
施策実施率だけでなく、面談の利用状況、上司支援の変化、欠勤・離職の推移も確認します。ただし、一つの施策と経営成果の間には複数の要因があるため、単純な因果関係として断定しないことも重要です。
ストレスチェックを健康経営へ活用する7つの手順
ストレスチェックを健康経営へつなげるには、経営層、人事、産業医、管理職、従業員がそれぞれの役割を担う必要があります。結果を受け取ってから施策を考えるのではなく、実施前に分析方法、共有範囲、改善責任者、評価時期まで決めましょう。
以下では、現状分析から改善、効果検証までの進め方を解説します。
1.経営層が方針と優先課題を示す
健康経営を人事部だけの活動にせず、経営層が取り組む理由と優先課題を示します。経営方針や人材戦略と関連付け、従業員の健康をどのような企業価値へつなげたいかを整理しましょう。
方針を社内へ発信する際は、健康管理を従業員個人の責任だけにしないことも伝えます。経営層が人員、予算、制度変更に関する判断を担い、人事や管理職が施策を実行できる環境を整えることが重要です。
2.集団分析を適切な単位で実施する
集団分析は、同じ上司、業務、勤務場所など、共通する職場要因を持つ単位で実施します。組織図上の部署だけでなく、拠点、職種、勤務帯など、自社の課題に合った単位を検討しましょう。
分析結果は、特定の個人を識別できない方法で作成する必要があります。人数が少ない部署では、共通性のある部署と統合するなど、プライバシーを守りながら改善へ活用できる方法を産業医や実施者と検討します。
3.勤怠や人事データと組み合わせる
集団分析の数値だけで原因を判断せず、時間外労働、休日勤務、休暇取得、欠勤、休職、離職、人員構成などと照合します。
仕事量の負担が高く、残業も多い場合は、業務量や人員の問題が考えられます。一方、残業が少なくても、勤務時間内の業務密度が高い、休憩を取りにくいといった可能性があります。複数のデータから原因の仮説を立て、現場への聞き取りへつなげましょう。
4.管理職と従業員へ聞き取りを行う
分析結果から考えられる課題が、実際の職場と一致しているかを確認します。「仕事量が多いですか」と尋ねるだけでなく、「手戻りが生じる作業」「不要と感じる会議」「相談しにくい場面」など、具体的に聞き取りましょう。
管理職だけに原因の説明を求めると、責任追及と受け取られる可能性があります。従業員の意見と、現在うまく機能している点も確認し、職場の強みを残しながら改善策を検討します。
5.優先順位を付けて改善策を決める
すべての課題を一度に解決しようとすると、担当者の負担が増え、施策が形骸化します。健康リスクの大きさ、対象人数、実行可能性、経営課題との関係から優先順位を付けましょう。
「コミュニケーションを改善する」といった抽象的な目標ではなく、「定例会議を30分短縮する」「問い合わせを複数担当制にする」など、具体的な行動に変えます。担当者、期限、予算、評価指標も決めます。
6.個人への支援を並行して行う
職場環境の改善には一定の時間がかかるため、既に強い心理的負担を抱える従業員への支援も必要です。高ストレス者から申出があった場合の医師面接指導に加え、判定結果にかかわらず利用できる産業医相談や外部相談窓口を整えましょう。
相談の申込方法、会社へ共有される情報、相談後の流れを具体的に周知します。組織改善と個人支援を並行することで、不調の予防と早期対応の両方を進められます。
7.改善内容を周知して効果を確認する
ストレスチェック結果を基に会社が改善しても、従業員へ伝えなければ「回答しても何も変わらない」と受け取られます。個人や少人数部署を推測できない範囲で、把握した課題、実施する施策、評価時期を周知しましょう。
施策開始から3か月後、6か月後などに、実施率、勤務状況、相談利用、従業員の意見を確認します。結果に応じて施策を修正し、翌年度の健康経営計画へ反映します。
集団分析結果に応じた健康経営施策の例
集団分析の結果が同じでも、原因は部署や職種によって異なります。全社一律の研修だけで対応せず、勤怠、業務内容、管理体制を確認したうえで、職場ごとに施策を選びましょう。
短期間で実施できる業務改善と、人員配置や制度変更など経営判断が必要な施策を分けると、改善を進めやすくなります。
| 確認された傾向 | 追加で確認する内容 | 改善施策の例 |
|---|---|---|
| 仕事量の負担が高い | 残業、人員、案件、会議、手戻り | 業務再配分、会議削減、応援配置 |
| 仕事の裁量が低い | 承認、決裁、役割、業務手順 | 権限移譲、役割明確化、手順改善 |
| 上司の支援が低い | 部下数、管理職負担、面談時間 | 管理職の業務軽減、面談、研修 |
| 同僚の支援が低い | 属人化、引継ぎ、相談経路 | ペア制、情報共有、相談体制 |
| 心身の反応が高い | 勤務、相談状況、組織変更 | 産業医相談、業務調整、休養支援 |
仕事量の負担が高い場合
仕事量の負担が高い場合は、人員不足だけでなく、特定の担当者への集中、会議、承認、手戻り、突発対応などを確認します。残業時間だけでは、勤務時間内の業務密度や休憩の取りにくさを把握できない場合があります。
担当の複数化、会議の削減、繁忙期の応援配置、業務の優先順位の明確化などを検討しましょう。受注量や納期に問題がある場合は、部署内だけでなく経営課題として対応します。
仕事の裁量が低い場合
細かな承認が多い、担当範囲が曖昧、業務の目的が共有されていない職場では、仕事を自分で調整しにくくなります。承認段階、決裁権限、目標設定、作業手順を確認しましょう。
一定範囲の判断を現場へ委譲する、担当者が作業順序を調整できるようにするなどの改善が考えられます。ただし、責任だけを増やさず、必要な情報、教育、相談先も併せて提供する必要があります。
上司からの支援が低い場合
上司の支援が低い場合、管理職研修だけでは改善しないことがあります。管理職自身が多くの実務や部下を抱え、面談や相談対応の時間を確保できていない可能性があるためです。
管理職の担当人数、会議、プレイング業務を見直し、部下と定期的に話せる時間を確保しましょう。産業医や人事へ相談する基準も整え、管理職が一人で部下の健康問題を抱え込まない体制をつくります。
同僚からの支援が低い場合
同僚からの支援が低い背景には、業務の属人化、引継ぎ不足、在宅勤務による接点の減少、過度な成果競争などが考えられます。懇親会だけでは、業務上の支援が改善しない場合があります。
ペア担当制、定期的な進捗共有、業務マニュアル、相談用チャネルなどを整えましょう。困ったときの相談先を明確にし、助けを求めたことで評価が下がらない職場運営も必要です。
健康経営の効果を測る指標を段階別に設定する
健康経営の成果は、高ストレス者率や離職率などの最終的な数値だけでは判断できません。施策が予定どおり実施されたか、従業員の意識や職場環境が変化したか、勤務や組織へどのような影響が表れたかを段階的に確認します。
短期間で変化する指標と、長期的に確認する指標を分けることで、施策の途中経過を評価しやすくなります。
| 評価段階 | 指標の例 |
|---|---|
| 体制・投入 | 担当者、予算、産業医面談枠、相談窓口 |
| 施策の実施状況 | 受検率、面談率、研修率、改善完了率 |
| 意識・職場の変化 | 仕事量、裁量、上司・同僚の支援 |
| 勤務への影響 | 残業、休暇、欠勤、休職、離職 |
| 組織への影響 | 活力、働きやすさ、エンゲージメント |
施策の実施状況を確認する
ストレスチェックの数値が改善しない場合でも、予定していた施策自体が実施されていなければ、効果を判断できません。管理職面談の実施率、相談窓口の認知率、業務改善の完了率などを確認しましょう。
未実施の場合は、担当者の努力不足と決めつけず、予算、権限、業務負担、施策の現実性を見直します。まず実施状況を確認し、その後に従業員や組織への影響を評価することが重要です。
従業員と職場の変化を確認する
施策の実施後は、仕事量、裁量、周囲からの支援などが変化したかを確認します。残業、休暇、欠勤、相談利用の状況とともに、従業員への聞き取りやアンケートで、職場の変化を実感しているかも確認しましょう。
数値が悪化した場合も、組織変更や繁忙期などの影響を考慮します。一つの指標だけで施策の成否を判断せず、複数の情報から総合的に評価することが重要です。
健康経営優良法人認定では継続的な実践が重視される
健康経営優良法人認定では、経営理念・方針、推進体制、制度・施策の実行、評価・改善など、健康経営を継続的に進める体制が確認されます。ストレスチェックやメンタルヘルス対策も関連する項目ですが、実施した事実だけで認定されるものではありません。
認定取得を目指す場合も、調査票の設問を埋めることを最終目標にせず、自社の経営課題に合う健康経営を実践することが重要です。
認定取得を取り組みのゴールにしない
健康経営優良法人認定は、自社の方針や体制を整理し、社内外へ取り組みを示す機会になります。一方、認定申請のためだけに研修やストレスチェックを実施すると、施策が一時的になり、従業員が効果を感じにくくなります。
自社が解決したい経営課題を起点に、施策と評価指標を選びましょう。認定取得後も効果を確認し、必要な改善を続けることが健康経営の定着につながります。
申請年度の最新要件を確認する
健康経営優良法人認定や健康経営度調査の設問、評価項目、認定基準は、年度によって変更される可能性があります。過去の申請書だけを参考にすると、必要な対応を見落とす場合があります。
申請を検討する年度の最新資料を確認し、自社が大規模法人部門と中小規模法人部門のどちらに該当するかを整理しましょう。ストレスチェックだけでなく、法令遵守、体制、施策、評価・改善を総合的に確認します。
ストレスチェックを健康経営へ活用した事例
従業員200人の企業で、若手社員の離職が続いていたとします。集団分析では、特定部署で仕事量の負担が高く、上司からの支援が低い傾向が確認されました。
勤怠と業務を確認したところ、若手社員へ定型業務と突発対応が集中し、管理職も顧客対応に追われて面談時間を確保できていませんでした。企業は問い合わせ対応を複数担当制へ変更し、管理職の一部業務を別担当へ移管します。
月1回の面談も導入し、3か月後に残業時間と面談実施率、6か月後に従業員の意見と離職状況を確認しました。集団分析を経営課題と結び付け、施策の実施後も評価・修正した点が重要です。
ストレスチェックと健康経営の推進は産業医クラウドへご相談ください
ストレスチェックを健康経営へ活用するには、集団分析の数値を確認するだけでなく、勤怠、業務内容、組織体制を組み合わせ、経営課題との関係を整理する必要があります。高ストレス者への個人支援と、職場全体の改善を並行して進める専門的な体制も重要です。
産業医クラウドでは、企業の規模、業種、健康課題に合う産業医の選任を支援しています。ストレスチェックの実施、集団分析、高ストレス者への面接指導、衛生委員会での助言、職場環境改善、健康経営の体制づくりまで相談できます。
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ストレスチェックと健康経営に関するよくある質問
ストレスチェックと健康経営は密接に関係しますが、法令上の位置付けや利用できる情報の範囲は異なります。ストレスチェックを実施すれば健康経営になるのか、個人結果を活用できるのかなど、判断に迷う企業も少なくありません。
ここでは、人事担当者や経営者から寄せられやすい質問を解説します。
ストレスチェックを実施すれば健康経営になりますか?
ストレスチェックは健康経営を進めるための重要なデータですが、実施しただけで健康経営になるわけではありません。健康経営では、経営課題と健康課題を結び付け、具体的な施策を実行し、効果を評価して改善する必要があります。
個人結果の通知や法定報告だけで終わらず、集団分析、現場への聞き取り、職場環境改善まで進めましょう。健康診断、勤怠、休職・離職などの情報も組み合わせます。
健康経営はすべての企業に義務付けられていますか?
健康経営そのものは、すべての企業に法律で義務付けられた制度ではありません。一方、健康診断、長時間労働者への面接指導、対象事業場におけるストレスチェックなど、安全衛生上の義務はあります。
まず法令上必要な対応を確実に実施し、その結果を職場改善や人材戦略へ活用しましょう。健康経営優良法人認定の申請も任意ですが、自社の方針、体制、施策を整理する機会として利用できます。
個人のストレスチェック結果を健康経営へ利用できますか?
個人結果は、原則として本人の同意なく企業へ提供できません。人事担当者が個人の回答、高ストレス判定、症状などを収集し、健康経営施策や人事評価へ利用することは避ける必要があります。
組織課題を把握する場合は、個人を識別できない集団分析結果を利用します。個人への支援は、本人の申出に基づく医師面接指導や、任意の産業医相談など、適切な手続きで行いましょう。
集団分析は健康経営に必須ですか?
集団分析と、その結果を踏まえた職場環境改善は努力義務です。実施しなかったことだけで直ちに罰則が科されるものではありませんが、組織に共通する心理的負担を把握するうえで有効です。
個人結果だけでは、業務量、裁量、管理職支援などの職場課題を確認できません。ストレスチェックをメンタルヘルス不調の予防や健康経営へ活用する企業には、適切な集団分析が望まれます。
高ストレス者率が下がれば健康経営は成功ですか?
高ストレス者率の低下だけで、健康経営が成功したとは判断できません。個人情報への不安から正直に回答していない、受検者の構成が変化したといった可能性があります。
受検率、仕事量、裁量、周囲の支援、残業、休暇、欠勤、休職、離職などを組み合わせて評価しましょう。計画した施策が実施され、従業員が職場の変化を実感しているかも重要な判断材料です。
集団分析結果を管理職の評価に使えますか?
集団分析結果を、管理職の査定や部署の順位付けへ直接利用することは適切ではありません。数値の悪化を管理職の責任とすると、従業員へ回答を控えるよう求めたり、職場の問題を隠したりする原因になります。
分析結果は、管理職や職場を支援するために利用しましょう。数値の背景を確認し、管理職自身の業務負担、部下数、権限、人員体制なども改善対象として検討します。
健康経営施策は全社共通で実施すべきですか?
健康方針、相談窓口、情報管理などは全社共通で整える必要があります。一方、具体的な職場改善策は、部署や職種の課題に合わせることが重要です。
仕事量に課題がある部署と、同僚の支援に課題がある部署では、必要な施策が異なります。全社向けの研修だけで終わらず、集団分析、勤怠、現場への聞き取りから、部署別の施策を検討しましょう。
産業医は健康経営でどのような役割を担いますか?
産業医は、ストレスチェック、健康診断、勤務情報などを踏まえ、従業員と職場の健康課題を産業保健の視点から評価します。高ストレス者への面接指導だけでなく、集団分析の解釈、改善施策、評価指標についても助言できます。
ただし、人員、予算、制度変更などの経営判断は企業が行います。経営層や人事が産業医の意見を受け取り、実際の施策へ反映する体制が必要です。
健康経営優良法人認定にはストレスチェックが必要ですか?
健康経営優良法人認定では、企業規模に応じて、ストレスチェックやメンタルヘルス施策に関連する取り組みが確認されます。ただし、ストレスチェックを実施しただけで認定されるものではありません。
経営方針、推進体制、法令遵守、健康課題の把握、具体的な施策、効果検証などが総合的に確認されます。設問や認定要件は年度ごとに更新される可能性があるため、申請年度の最新資料を確認しましょう。
50人未満の事業場もストレスチェックを活用できますか?
50人未満の事業場でも、ストレスチェックを従業員の健康課題や職場環境の把握へ活用できます。また、2028年4月1日からは、50人未満の事業場にもストレスチェック本体の実施義務が拡大されます。
小規模な職場では、集団分析から個人を推測されやすいため、分析単位や共有範囲への配慮が必要です。会社全体で集計する、外部実施者を活用するなど、安全な方法を検討しましょう。
ストレスチェックや健康経営は外部委託できますか?
ストレスチェックの配布、集計、結果通知、集団分析などは、外部サービスへ委託できます。健康経営についても、現状分析、施策設計、効果検証、認定申請に関する支援を受けられる場合があります。
ただし、外部委託しても、経営方針の決定や職場環境改善を実行する責任は企業にあります。委託先の対応範囲を確認し、経営層、人事、産業医、管理職の役割を明確にしましょう。
まとめ|ストレスチェックを健康経営の改善サイクルへ組み込む
ストレスチェックは、従業員本人の気付きや高ストレス者への支援だけでなく、健康経営における組織課題の把握にも活用できます。集団分析から仕事量、裁量、上司・同僚の支援などを確認し、勤怠、業務内容、休職・離職などの情報と組み合わせましょう。
健康経営へつなげるには、経営課題、健康課題、改善施策、評価指標を一つの流れとして設計することが重要です。高ストレス者率だけで成果を判断せず、施策の実施状況、職場環境、勤務状況、従業員の実感を段階的に評価します。
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