会社から「診断書を提出してください」と言われると、「なぜ必要なのか」「費用は自分で払うのか」「提出を断ることはできるのか」と戸惑う方もいるでしょう。
会社提出用の診断書について、発行費用を会社と従業員のどちらが負担するかを一律に定めた法律上のルールはありません。実際の負担は、診断書を必要とする目的、就業規則や社内規程、会社指定書式・指定医による追加受診の有無などによって異なります。
この記事では、診断書の費用相場や提出を求められた場合の対処法、拒否を検討できるケース、提出できない場合の対応まで解説します。企業の人事担当者に向けて、診断書を受け取った後の産業医との連携についても紹介します。
会社に診断書を出せと言われた場合の費用は誰が負担する?
会社へ提出する診断書の費用について、「原則として必ず従業員負担」「会社から提出を命じられた場合は必ず会社負担」と定めた一般的な法律上のルールはありません。
実際には、就業規則や社内規程、診断書を取得する目的などに応じて決まります。
確認したいのは、①就業規則に費用負担の規定があるか、②本人の休職申請などに必要な書類か、③会社独自の書式や追加受診を求めているか、の3点です。
診断書を取得する前に人事・総務へ確認し、誰がどの費用を負担するのか明確にしておきましょう。
| ケース | 費用負担の考え方 |
|---|---|
| 自分から休職を申し出るため取得する | 従業員負担となる運用がみられる |
| 一般的な診断書を会社へ提出する | 就業規則や社内ルールを確認する |
| 就業規則で会社負担と定めている | 原則として規程に従う |
| 会社独自の追加書類を求める | 会社負担とするか事前確認が必要 |
| 会社指定医への追加受診を求める | 受診目的と費用負担を事前に確認する |
| 会社都合で再作成・再受診を求める | 会社負担を含めて協議することが望ましい |
従業員が自己負担するケース
従業員自身が病気やけがを理由として休職や欠勤を申し出、その手続きに必要な一般的な診断書を取得する場合は、本人が費用を負担する運用がみられます。診断書の文書作成料は通常、健康保険が適用されないため、医療機関が設定した料金を自己負担します。
ただし、本人負担を一律に定めた法律があるわけではありません。就業規則や休職・復職規程で会社負担と定めている場合もあります。受診前に「診断書の費用は会社で精算できますか」と人事担当者へ確認しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
会社が負担するケース
就業規則や社内規程で診断書の発行費用を会社が負担すると定めている場合は、その規程に沿って取り扱います。また、すでに必要な診断書が提出されているにもかかわらず、会社が独自書式への再記載や指定医への追加受診を求める場合は、会社側で費用を負担するか協議することが望まれます。
ただし、「会社指定医への受診なら必ず会社負担」という一般的な法律上のルールがあるわけではありません。企業は、休職・復職時の診断書、追加受診などについて費用負担のルールを事前に定め、従業員へ周知しておくことが重要です。
会社に診断書を出せと言われたら?診断書の費用相場
会社提出用の診断書に全国共通の料金はありません。公開されている医療機関の料金を見ると、一般的な診断書は1通3,000~6,000円程度の例があり、勤務先指定の書式や記載項目の多い意見書では5,000~10,000円程度、あるいはそれ以上となる場合があります。
料金は医療機関、書式、記載内容によって異なるため、以下はあくまで目安です。
診断書を申し込む際は、「一般診断書の料金」だけでなく、「会社指定書式の場合はいくらになるか」「再診が必要か」「完成まで何日かかるか」も確認しましょう。
| 診断書の種類・用途 | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 一般的な診断書 | 3,000~6,000円程度 | 傷病名や療養期間などを比較的簡潔に記載 |
| 会社提出用の指定書式 | 3,000~10,000円前後 | 勤務先独自の確認項目への記入が必要 |
| 詳細な主治医意見書 | 5,000~11,000円程度 | 就業上の配慮など詳細な記載を求める場合 |
| 障害年金など複雑な診断書 | 5,000~11,000円以上の場合もある | 評価項目が多く詳細な医学的記載が必要 |
| 英文など特殊な診断書 | 10,000円以上の場合もある | 英文作成や特殊な書式への対応が必要 |
なお、上記は複数の医療機関の公開料金を参考にした目安であり、実際の料金は受診先へ確認する必要があります。
病気の診療として行われる診察は健康保険の対象になる場合がありますが、会社提出用診断書の文書作成料は通常、自費です。指定書式がある場合は最初の受診時に持参し、不要な再発行を防ぎましょう。
会社に診断書を出せと言われた場合の対策
会社から診断書を求められた場合は、すぐに提出する・拒否するという判断をするのではなく、まず「何を確認するための診断書なのか」を確認しましょう。病気欠勤の確認、休職手続き、復職判断、勤務上の配慮では、会社が必要とする医学情報も異なります。
そのうえで、就業規則、提出期限、指定書式、必要な記載項目、費用負担を確認します。健康情報は必要以上に提出するものではありません。会社が就業判断をするために必要な情報の範囲を整理し、不明点があれば人事担当者へ確認することが重要です。
提出義務の根拠となる規定を調べる
最初に就業規則、休職・復職規程、雇用契約などを確認しましょう。労働基準法に、すべての私傷病による欠勤や休職について診断書提出を一律に義務付ける規定があるわけではありません。一方、合理的な内容の就業規則が従業員へ周知されている場合、その規定が労働契約の内容となることがあります。
「連続○日以上の病気欠勤」「休職申請」「復職申請」などの場面で診断書を必要とする規定があるか確認します。企業側も、規定があることだけでなく、診断書を求める具体的な目的を本人へ説明することが大切です。
診断書を用意する
診断書の提出が必要になったら、まず会社へ指定書式、提出期限、必要な記載事項を確認し、その内容を医師へ伝えます。
「休職申請に使用する」「復職時の勤務上の配慮を判断するため」など、目的を具体的に説明すると医師も必要な情報を整理しやすくなります。
特に復職や就業配慮に関する診断書では、勤務時間、仕事内容、残業・夜勤・出張の有無などの職場情報が判断材料になります。診断書は当日に発行されない医療機関もあるため、提出期限に余裕をもって依頼しましょう。
提出をやめるよう会社へ申し入れる
会社から診断書を求められても、提出目的が説明されない、就業上必要とは考えにくい詳細な治療歴まで要求されるなど、情報の範囲に疑問がある場合は会社へ確認しましょう。
一方的に拒否するのではなく、「何を判断するために必要ですか」「就業可否や必要な配慮だけを記載した診断書では不足しますか」と相談する方法があります。
企業側も、健康情報を必要以上に収集するのではなく、安全な就業や休職・復職判断に必要な範囲を明確にし、取得する情報を限定することが重要です。
弁護士など専門家の力を借りる
「診断書を提出しなければ直ちに解雇する」と言われた、就業と関係のない詳細な診療情報を繰り返し要求されるなど、会社との協議だけでは解決が難しい場合は専門家への相談を検討しましょう。
個別の労働問題は労働問題に詳しい弁護士や都道府県労働局、就業規則や休復職制度の整備は社会保険労務士、健康状態と仕事内容を踏まえた就業判断は産業医が主な相談先になります。「法的判断」「労務制度」「医学的評価」を分け、課題に合った専門家へ相談することが重要です。
会社が診断書を必要とする理由
会社が診断書を求める目的は、単に「本当に病気なのか」を確認することだけではありません。健康状態によって勤務に影響が生じている場合、安全に働き続けられるのか、一定期間の療養が必要なのか、どのような就業上の配慮が必要なのかを判断する資料として利用します。
特にメンタルヘルス不調では、症状の程度と実際の業務遂行能力が必ずしも一致しません。主治医の医学的意見と職場側の情報を整理し、必要に応じて産業医が評価することで、より適切な休職・復職・就業措置につなげられます。
安全配慮義務が課されているため
労働契約法第5条では、使用者は労働者が生命・身体等の安全を確保しながら働けるよう、必要な配慮をすることとされています。明らかな体調不良が疑われる従業員について、健康状態を確認せず通常勤務を継続させることは、安全配慮の観点から問題になる可能性があります。
そのため、必要に応じて主治医の診断書や産業医面談を活用し、通常勤務、就業制限、休業などの必要性を検討します。会社が把握すべきなのは治療内容のすべてではなく、安全な就業判断に必要な範囲の健康情報です。
正当な理由があるか確かめるため
病気やけがを理由とした欠勤が一定期間続く場合、会社は勤怠管理や休職制度の適用を判断するため、欠勤の背景に療養を要する健康上の事情があるか確認する必要があります。その客観的な資料の一つとして診断書が用いられます。
ただし、短期間の体調不良を含め、すべての欠勤について診断書が必要とは限りません。「連続○日以上の病気欠勤」「休職を申請する場合」など提出条件を就業規則等で明確にし、同じ条件の従業員へ一貫した基準を適用することが適切な運用につながります。
休職を命じるべきか判断するため
主治医は病気の診断や療養の必要性について医学的な意見を示しますが、最終的に休職制度を適用するかどうかは、会社が就業規則や本人の状態などを踏まえて判断します。人事担当者や上司だけで医学的な状態を判断するのではなく、医師の意見を適切に活用することが重要です。
特にメンタルヘルス不調では、診断書に加えて産業医面談を行うことで、健康状態と実際の仕事内容を照らし合わせて検討できます。誰が情報を集め、誰が医学的評価を行い、誰が休職を決定するのかを社内プログラムで明確にしておきましょう。
労災の申請手続きの際に必要になるため
業務上または通勤によるけが・疾病について労災保険給付を請求する際には、給付の種類に応じた請求書で医療機関による証明などが必要となる場合があります。このため、会社から医療機関への確認や必要書類の準備について案内されることがあります。
ただし、労災申請を行うからといって、必ず別途「会社提出用の一般診断書」が必要になるわけではありません。労災保険の請求書類と会社独自の診断書は目的が異なります。企業は必要書類を確認し、同じ内容の証明を重複して取得させないよう配慮することが重要です。
会社に診断書を出せと言われる主なケース
会社から診断書を求められやすいのは、病気やけがによる欠勤、健康上の勤務配慮、休職、休職期間の延長、復職などの場面です。共通するのは、健康状態を踏まえて会社が何らかの就業上・人事上の判断を行う必要があることです。
企業では、診断書を一種類に統一するのではなく、「休職開始時は療養の必要性と期間」「復職時は就業可能性や必要な配慮」など、目的ごとに必要な情報を整理しておくと、従業員や主治医にも依頼内容を説明しやすくなります。
病気やけがで欠勤する場合
風邪などによる短期間の欠勤であれば本人からの連絡だけで対応する企業もありますが、欠勤が一定期間続く場合には、就業規則に基づいて診断書の提出を求められることがあります。診断書が必要となる欠勤日数は会社によって異なります。
従業員は欠勤が長引きそうな場合、早めに就業規則や人事担当者へ提出条件を確認しましょう。企業側も担当する上司ごとの判断にせず、「連続○日以上の病気欠勤」などの基準を定めておくことで、公平性を保ちながら運用しやすくなります。
業務上の配慮を申し出る場合
「残業を制限してほしい」「夜勤を避けたい」「通院のため勤務時間を調整したい」など健康上の配慮を申し出た場合、その必要性を確認するため、診断書や主治医意見書を求められることがあります。
この場合に重要なのは、詳細な病歴よりも「時間外労働を避ける」「深夜業を制限する」「一定期間は負荷の高い業務を控える」といった就業上の情報です。産業医が本人の健康状態と仕事内容を確認し、主治医の医学的意見を職場で実行可能な措置へ整理することで、適切な配慮につなげやすくなります。
休職申請をする場合
病気やメンタルヘルス不調によって一定期間働くことが難しい場合、休職手続きの条件として診断書の提出を求める企業があります。診断書では、療養が必要であることや療養期間の見込みなどを確認するのが一般的です。
厚生労働省の職場復帰支援の手引きでも、メンタルヘルス不調による病気休業開始時に、主治医が作成した病気休業診断書を提出する流れが示されています。会社は診断書を受領した後、休職期間や社内手続き、休職中の連絡方法、復職までの流れなどを本人へ説明しましょう。
休職の期間を延長する場合
当初予定されていた療養期間を過ぎても勤務再開が難しい場合は、休職期間の延長を判断するため、改めて診断書を求められることがあります。例えば、前回の診断書に記載された療養期間が終了する前に主治医が状態を再評価し、療養継続の必要性を判断します。
従業員は休職期限の直前になってから受診するのではなく、診断書の作成期間も考慮して再診しましょう。会社側も「期間満了の何日前までに診断書を提出するか」を事前に案内し、休職期間満了時の手続きが混乱しないようにすることが重要です。
会社に診断書を出せと言われたら拒否できる?
会社から求められた診断書を拒否できるかどうかは、個別の状況によって異なります。
一般的な私傷病について、会社から求められたすべての診断書を提出しなければならないと定めた法律があるわけではありません。
一方、合理的な就業規則に提出条件が定められている場合や、安全な就業・休職判断のために医学情報を確認する必要性が高い場合は、正当な理由なく拒否すると問題になる可能性があります。
例えば、「診断書を求める目的が説明されない」「業務上の判断に必要とは考えにくい詳細な治療歴まで求められる」「必要な情報をすでに提出しているのに、合理的な理由なく同様の書類を繰り返し求められる」といった場合は、提出範囲について会社と協議する余地があります。
重要なのは、自己判断で会社からの依頼を無視しないことです。提出目的や根拠を確認したうえで、就業可否・療養期間・必要な配慮などに情報を限定した診断書や、産業医を介した情報共有で対応できないか相談しましょう。
会社に診断書を出せない場合の対処法
「初診予約が取れない」「診断書の完成が提出期限に間に合わない」「現時点では医師が医学的判断をできない」など、本人に提出する意思があっても診断書を用意できないことがあります。
その場合に避けたいのは、何も連絡しないまま提出期限を過ぎることです。受診予定日、診断書を依頼した日、医療機関から案内された完成予定日などを会社へ伝え、提出期限の延長や一時的な代替書類が認められるか相談しましょう。企業側も事情を確認し、合理的な範囲で対応することが重要です。
提出が難しい理由を会社へ具体的に伝える
期限までに診断書を用意できないことがわかったら、できるだけ早く人事担当者へ連絡しましょう。
「初診予約が○月○日」「医療機関から作成に2週間程度かかると言われた」など、具体的に説明すると会社側も対応を検討しやすくなります。
会社は、期限時点で診断書がないという結果だけで判断するのではなく、本人が受診や書類取得に向けて対応しているか確認することが重要です。そのうえで提出期限を延長するなど、本人の事情と社内手続きを両立できる方法を検討します。
診断書に代わる書類が使えないか相談する
正式な診断書の発行に時間がかかる場合、受診した事実を確認する目的に限って、領収書、受診証明書などを一時的な資料として利用できないか会社へ相談する方法があります。
会社の運用によっては、診断書が完成するまで仮の資料として扱える場合があります。
ただし、これらは「休職が医学的に必要」「復職可能」といった医師の医学的判断を示す書類ではありません。休職・復職など医学的評価が必要な手続きでは、最終的に診断書や主治医意見書が必要になる可能性があります。
取得できない事情を説明する
医療機関を受診しても、患者が希望した内容の診断書を必ず作成してもらえるわけではありません。初診時点では症状や経過を十分に判断できない、過去の欠勤期間について医学的な証明が困難などの理由から、希望どおりの記載ができない場合があります。
その際は「医師から現時点では判断できないと言われた」「次回診察後に改めて評価する予定」と会社へ説明しましょう。患者自身が病名や休職期間を決めて記載を求めるのではなく、医学的な内容については診察結果に基づく医師の判断を尊重する必要があります。
会社から指定された受診先に応じるか検討する
提出された診断書だけでは安全な就業を判断する情報が不足している場合、会社から産業医面談や指定医への受診を求められることがあります。
ただし、会社から指定されたという理由だけで、あらゆる追加受診に当然に応じる義務があるとは一律に判断できません。
まず、就業規則上の根拠、追加評価が必要な理由、取得する情報、費用負担などを確認しましょう。企業側では、産業医による面談を行い、さらに情報が必要な場合には、本人の同意を得て主治医から必要な範囲の情報提供を受ける方法もあります。
会社に診断書を出さない場合に生じるリスク
会社が合理的な理由で診断書を求めているにもかかわらず、事情を説明せず提出しない状態が続くと、病気欠勤、休職、復職などについて会社が必要な判断をできなくなる可能性があります。
ただし、「診断書を提出しなければ必ず無断欠勤」「提出を拒否すれば必ず懲戒処分」と自動的に決まるわけではありません。就業規則の内容、提出を求める必要性、本人が取得できない事情、会社との連絡状況などによって判断は異なります。提出できない場合ほど、早い段階で事情を伝えることが重要です。
無断欠勤として処理される可能性がある
就業規則で一定期間以上の病気欠勤について診断書提出を求めているにもかかわらず、診断書も欠勤理由の説明もなく欠勤が続いた場合、会社が病気欠勤として確認できず、勤怠の取扱いをめぐる問題につながる可能性があります。
ただし、診断書を提出していないことだけを理由に、直ちにすべての欠勤が無断欠勤になるわけではありません。会社は本人から欠勤連絡があるか、診断書を取得できない事情がないかなどを確認する必要があります。従業員側も、診断書が間に合わなくても欠勤の連絡は継続しましょう。
懲戒処分を受ける可能性がある
合理的な診断書提出規定があり、会社から必要性を説明したうえで提出を求められているにもかかわらず、正当な事情を示さず拒否を続けた場合は、就業規則違反などが問題になる可能性があります。
もっとも、診断書を提出しなかったという事実だけで、直ちに重い懲戒処分が正当化されるものではありません。提出規定の合理性、会社の指示内容、従業員が拒否した理由、業務への影響など個別事情を踏まえた判断が必要です。企業側は処分を検討する前に、本人の事情を十分確認しましょう。
信頼関係が損なわれる可能性がある
診断書を提出できないことそのものより、会社からの連絡に回答せず、理由を説明しない状態が続くことが労使間の信頼関係を損なう原因となります。一方、会社側が提出目的を説明せず、必要以上に詳細な健康情報を要求することも従業員の不信感につながります。
企業は「療養期間を確認するため」「復職後の勤務制限を検討するため」など、診断書を必要とする目的を明確にしましょう。従業員側も提出できない事情や取得予定を早めに共有し、双方で手続きを確認しながら進めることが重要です。
会社に診断書を出せと言われた場合の対応の注意点
会社へ診断書を提出する際は、提出期限だけでなく「どの健康情報を会社へ伝える必要があるのか」にも注意が必要です。病状、診療内容、服薬情報などは取り扱いに特に配慮すべき情報であり、会社が無制限に取得・共有してよいものではありません。
企業では、診断書を取り扱う担当者、利用目的、保管方法、社内で共有する範囲などをあらかじめ定めておくことが重要です。特にメンタルヘルス不調では、必要に応じて産業医を介し、医学情報を就業上必要な情報へ整理して共有する仕組みが有効です。
提出するタイミングを見極める
診断書が必要になる時期は、病気欠勤の開始時、休職申請時、休職期間の延長時、復職申請時など、会社の就業規則や手続きによって異なります。まず会社から案内されている提出期限を確認しましょう。
症状が急に悪化して出勤できなくなった場合など、事前に診断書を準備することが難しいケースもあります。その際は書類が完成するまで連絡を待つのではなく、「○日に受診予定」「診断書は依頼済み」と先に会社へ伝えます。企業側も、緊急時の事後提出についてルールを定めておくと対応しやすくなります。
会社指定の書式があるか確認する
医療機関へ診断書を依頼する前に、会社指定の書式があるか必ず確認しましょう。
医療機関独自の診断書を取得した後で指定書式があると判明すると、再度作成を依頼することになり、追加の文書料や受診が必要になる場合があります。
特に復職時は、「勤務可能」という結論だけでなく、時間外労働、深夜業、出張、勤務時間などについて主治医の意見を確認したい企業があります。人事側では、職場復帰判断に必要な項目を整理した主治医意見書の書式を準備しておくと、情報不足による再照会を減らせます。
会社が求める情報の範囲を把握する
診断書に記載された病状や診療情報などは、取り扱いに十分な配慮が必要です。企業は「健康情報だからすべて確認してよい」と考えるのではなく、安全な就業や健康確保のために必要な範囲で取得・利用することが重要です。
例えば、直属の上司が業務管理のために必要とする情報は、詳細な病名や服薬内容ではなく、「時間外労働を制限する」「深夜勤務を避ける」「定期的に産業医が状態を確認する」といった就業上の措置で足りる場合があります。産業医などの医療職を介して情報を整理する方法も有効です。
提出時の伝え方に配慮する
診断書を提出するときは、書類を渡して終わりにするのではなく、その後の手続きについて確認しましょう。「主治医から○月○日まで療養が必要と説明されています。診断書を提出しますので、休職に必要な手続きを教えてください」と伝えると、次の対応を整理しやすくなります。
会社側も、診断書を受け取った後は、休職期間、給与・社会保険、傷病手当金などの手続き、休職中の連絡方法、復職申請の流れなどを説明しましょう。連絡窓口を一本化することで、療養中の従業員の負担軽減にもつながります。
会社に提出する診断書のもらい方
会社提出用の診断書を取得するときは、最初に会社へ「提出目的・期限・指定書式・必要項目」を確認します。そのうえで症状に応じた医療機関を受診し、医師へ会社へ提出するための診断書が必要であることを伝えます。
基本的な流れは、「①会社へ必要事項を確認→②医療機関を予約→③診察を受ける→④診断書を依頼→⑤料金と完成予定日を確認→⑥完成後に会社へ提出」です。
診察時には現在の症状だけでなく、仕事内容、勤務時間、残業・夜勤の有無、通勤状況なども伝えると、就業に関する医学的判断の参考になります。なお、診断書は患者の希望をそのまま記載する書類ではありません。休職期間や就業制限については、診察結果を踏まえて医師が医学的に判断します。
会社に提出する診断書の記載内容・書き方
会社提出用の診断書には、本人の氏名、傷病の状態、療養の必要性や期間、就業可否、就業上必要な配慮、医療機関名、医師名、発行日などが記載されることがあります。ただし、すべての項目を必ず記載するわけではなく、診断書の目的に応じて必要な情報は異なります。
休職時は療養の必要性と期間、復職時は就業可能性や必要な配慮が重要です。会社側も病名や治療内容を必要以上に求めるのではなく、人事上・就業上の判断に必要な事項を整理して医師へ依頼することが望まれます。
| 利用目的 | 確認したい主な内容 |
|---|---|
| 病気欠勤 | 療養の必要性や期間 |
| 休職開始 | 療養の必要性、療養期間の見込み |
| 休職延長 | 療養継続の必要性、追加療養期間 |
| 復職 | 就業可能性、復職可能時期 |
| 就業配慮 | 残業・夜勤・勤務時間などに関する医学的意見 |
| 復職後 | 必要な配慮の内容・期間、再評価の時期 |
特にメンタルヘルス不調からの復職では、主治医が「復職可能」と判断したことだけで会社が直ちに復職を決定するのではありません。主治医の診断書、本人の状態、生活リズム、勤務内容や職場環境などを確認し、必要に応じて産業医等が評価したうえで、事業者が最終的な職場復帰の可否や就業上の措置を決定します。
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会社に診断書を出せと言われた場合の費用に関するよくある質問
会社から診断書を求められた場合は、費用だけでなく「提出しなければ出勤できないのか」「医療費控除の対象になるのか」「発行が期限に間に合わない場合はどうすればよいのか」といった疑問も生じます。
診断書の提出条件や取り扱いは、会社の就業規則、提出を求める目的、本人の状況によって異なります。インターネット上の一般論だけで判断するのではなく、まず自社の就業規則と会社からの具体的な指示を確認しましょう。
診断書を出さないと出勤させないと言われた場合はどうすればよいですか?
まず、会社が「診断書を提出するまで出勤させない」とする理由を確認しましょう。例えば、長期休職後で安全に勤務を再開できるか判断できない場合に、復職診断書や産業医面談を求めることには一定の合理性が認められる場合があります。
一方、就業規則上の根拠や健康上の必要性が明確でない場合は、提出を求める目的や出勤を認めない理由について説明を求めましょう。自己判断で出勤を強行したり無断欠勤したりせず、人事担当者と協議することが重要です。解決が難しい場合は、労働局や労働問題に詳しい弁護士などへの相談を検討してください。
診断書の発行費用は医療費控除の対象になりますか?
会社へ健康状態を証明するために取得する一般的な診断書の文書作成料は、通常、医療費控除の対象にはなりません。診断書の発行料金は、病気を診療・治療するための費用ではなく、第三者へ提出する文書を作成するための費用と考えられるためです。
ただし、紹介状のように、その後の治療を受けるため直接必要となる文書については医療費控除の対象となる場合があります。「医療機関が作成した文書ならすべて対象外」というわけではない点に注意してください。個別の税務上の判断については、国税庁・税務署や税理士へ確認しましょう。
診断書の取得に時間がかかる場合はどうすればよいですか?
診断書は受診当日に必ず発行されるものではありません。医療機関や診断書の内容によっては数日から数週間かかる場合があり、実際に普通診断書でも作成に2~3週間程度、診療科によってはそれ以上かかると案内している医療機関があります。
提出期限に間に合わない可能性がわかった時点で、「○日に受診した」「診断書は○日頃完成予定」と会社へ伝え、期限の延長を相談しましょう。必要に応じて、受診した事実を確認できる資料で一時的に対応できないか確認します。提出期限を過ぎてから説明するのではなく、早めに情報共有することが重要です。
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