目次
- 安全管理者と衛生管理者の違いを4つの観点で比較
- 安全管理者とは?
- 衛生管理者とは?
- 安全管理者と衛生管理者の違い【仕事内容】
- 安全管理者と衛生管理者の違い【選任義務】
- 安全管理者と衛生管理者の違い【資格要件】
- 衛生管理者の試験の難易度
- 安全管理者と衛生管理者は兼任できるか
- 安全管理者・衛生管理者は複数の事業場で兼務できるか
- 安全管理者・衛生管理者と間違えやすい関連職種
- 衛生管理者とあわせて産業医を選任するなら産業医クラウド
- 安全管理者・衛生管理者の選任から届出までの流れ
- 安全管理者・衛生管理者の選任時に確認したい要件
- 安全管理者・衛生管理者を選任しない場合のリスク
- 衛生管理者の有資格者がいない場合の対応
- 安全管理者と衛生管理者の違いに関するよくある質問
安全管理者と衛生管理者の違いを4つの観点で比較
安全管理者と衛生管理者は、どちらも事業場の安全衛生管理を担う役割ですが、担当する領域、選任が必要な業種、選任基準、資格要件が異なります。まずは4つの観点から違いを整理してみましょう。
| 比較項目 | 安全管理者 | 衛生管理者 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 労働災害・けがの防止 | 健康障害・疾病の防止 |
| 主な管理対象 | 設備、作業方法、作業場所など | 作業環境、健康管理、衛生教育など |
| 選任義務 | 一定の業種で常時50人以上 | すべての業種で常時50人以上 |
| 主な資格要件 | 一定の実務経験+安全管理者選任時研修など | 第一種・第二種等の免許または法令で認められた資格 |
守る対象がケガか健康か
安全管理者と衛生管理者の最も大きな違いは、安全管理者が主に「労働者の危険」を、衛生管理者が主に「健康障害」を防止する点です。安全管理者は、機械への巻き込まれ、墜落・転落などの労働災害を防ぐため、安全に関する技術的事項を管理します。
一方、衛生管理者は、有害物質、温熱環境、作業条件、健康診断、衛生教育などを通じて労働者の健康障害を防ぎます。ただし、安全と衛生は完全に分離できるものではなく、実務では双方が連携して職場のリスクを管理することが重要です。
業務対象が設備か作業環境か
安全管理者は、建設物、機械設備、作業場所、作業方法などを確認し、事故につながる危険を除去・低減します。安全装置や保護具の点検、作業方法の改善、災害原因の調査など、物理的な危険を防止する業務が中心です。
衛生管理者は、作業環境や作業条件を衛生面から確認し、健康障害につながる要因を管理します。換気や温熱環境、有害物質だけでなく、健康診断や衛生教育なども対象です。「安全=設備」「衛生=人」と単純に分けず、それぞれの技術的事項を管理すると理解しましょう。
選任が義務付けられる範囲はどこまでか
衛生管理者は、業種を問わず常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任が必要です。一方、安全管理者は、建設業、製造業、運送業、清掃業など、法令で定められた一定の業種で常時50人以上の事業場が対象です。
したがって、オフィス中心の業種では衛生管理者は必要でも、安全管理者は不要というケースがあります。選任義務は原則として会社全体ではなく事業場単位で判断するため、各拠点の業種と常時使用する労働者数を確認しましょう。
求められる資格要件は何か
安全管理者は、「安全管理者」という国家資格を取得する制度ではありません。一定の学歴や産業安全に関する実務経験を有し、安全管理者選任時研修を修了した人や、労働安全コンサルタントなどから選任します。
衛生管理者は、第一種・第二種・衛生工学衛生管理者免許を有する人のほか、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントなど法令で認められた人から選任します。業種によって第二種免許では選任できない点にも注意が必要です。
安全管理者とは?
安全管理者とは、一定の業種・規模の事業場で、労働者の危険を防止するため、安全に関する技術的事項を管理する担当者です。労働災害を未然に防ぐため、事業場の安全管理体制の中核を担います。
特に建設業や製造業など、設備や作業方法に伴う危険が生じやすい業種で重要な役割を担います。具体的な仕事内容については、後述する「安全管理者と衛生管理者の違い【仕事内容】」で詳しく解説します。
法令上の位置づけ
安全管理者は、労働安全衛生法第11条に基づく安全衛生管理体制上の役職です。対象事業場では安全管理者を選任し、総括安全衛生管理者が統括管理する業務のうち、安全に関する技術的事項を管理させる必要があります。
事業者は、安全管理者に対して安全上必要な措置を講じるための権限を与えなければなりません。名称だけの担当者を置くのではなく、現場の危険を把握し、改善を実行できる体制を整えることが重要です。
選任が必要になる業種
安全管理者の選任が必要なのは、林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、一部の卸売・小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業などです。
これらの業種で常時50人以上の労働者を使用する事業場では、安全管理者を選任します。すべての小売業が対象になるわけではないなど、業種区分には注意が必要です。判断しにくい場合は所轄労働基準監督署へ確認しましょう。
日常的に担当する業務
安全管理者は、安全に関する技術的事項について、職場の危険を把握し、必要な改善につなげる役割を担います。設備や作業方法の確認、職場巡視、労働災害発生時の原因調査、安全教育などが主な担当領域です。
ここで重要なのは、事故が起きてから対応するだけでなく、日常的に危険要因を把握して事故を予防することです。具体的な業務内容や衛生管理者との違いは、後の「仕事内容」の項目で整理します。
選任要件と必要な人数
安全管理者は原則として、その事業場に専属する資格要件を満たした人から選任します。代表的には、一定の学歴と産業安全に関する実務経験を有し、安全管理者選任時研修を修了した人、または労働安全コンサルタントが対象です。ただし、2人以上の安全管理者を選任し、その中に労働安全コンサルタントがいる場合は、そのうち1人について専属要件の例外が認められます。
さらに、建設業・有機化学工業製品製造業・石油製品製造業では300人以上、無機化学工業製品製造業・化学肥料製造業・道路貨物運送業・港湾運送業では500人以上、紙・パルプ製造業・鉄鋼業・造船業では1,000人以上の事業場で、安全管理者のうち少なくとも1人を専任とする必要があります。
そのほかの安全管理者選任対象業種では、常時2,000人以上を使用し、かつ過去3年間の休業1日以上の労働災害による死傷者数の合計が100人を超える事業場で、少なくとも1人を専任とする必要があります。
衛生管理者とは?
衛生管理者とは、職場で働く労働者の健康障害を防止するため、衛生に関する技術的事項を管理する担当者です。常時50人以上の労働者を使用するすべての業種の事業場で選任が必要となります。
事業場の日常的な衛生管理を担い、必要に応じて産業医や人事労務担当者などと連携しながら、労働者が健康に働ける環境づくりを進めます。具体的な仕事内容については後述します。
法令上の位置づけ
衛生管理者は、労働安全衛生法第12条に基づく役職です。事業者は、常時50人以上の労働者を使用する事業場について、業務の区分に応じた資格者から衛生管理者を選任し、衛生に関する技術的事項を管理させなければなりません。
また、事業者は衛生管理者に必要な措置を行える権限を与える必要があります。選任すべき事由が発生した場合には14日以内に選任し、選任後は遅滞なく選任報告を行います。
ここでいう「選任すべき事由が発生した日」とは、たとえば事業場で常時使用する労働者数が50人以上となり、新たに選任義務が生じた日や、退職などにより後任者の選任が必要になった日などを指します。
選任が必要になる業種
衛生管理者は、業種を問わず常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任が必要です。したがって、工場や建設現場だけでなく、事務職中心のオフィスでも50人以上であれば対象となります。
ただし、選任できる資格は業種で異なります。農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業、運送業、医療業、清掃業などでは第二種衛生管理者免許だけでは選任できず、第一種衛生管理者免許などが必要です。
日常的に担当する内容
衛生管理者は、作業環境や労働者の健康状態を把握し、健康障害につながる要因を発見・改善する役割を担います。健康管理、作業環境の確認、衛生教育、職場巡視などが主な担当領域です。
また、法令上、少なくとも毎週1回は作業場等を巡視する必要があります。具体的な業務内容や安全管理者との役割の違いについては、後の「仕事内容」の項目で詳しく整理します。
選任要件と必要な人数
衛生管理者は、原則としてその事業場に専属する資格者から選任します。必要な人数は事業場で常時使用する労働者数によって異なり、規模が大きくなるほど複数名の選任が必要です。
また、事業場の規模や有害業務の内容によっては、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任としたり、衛生工学衛生管理者を選任したりする必要があります。具体的な人数基準は後述します。
専任と専属の違い
「専属」は原則としてその事業場に所属し、その事業場の業務に従事すること、「専任」は原則として衛生管理者の職務に専念することを意味します。衛生管理者は原則として、その事業場に専属する人から選任します。
「専属」と「専任」は同じ意味ではありません。どのような事業場で専任の衛生管理者が必要になるかについては、後述する選任時の確認事項で詳しく解説します。
有害な業務を扱う事業場の定義
衛生管理者の選任基準でいう法定有害業務には、坑内労働、高温・低温環境、有害放射線、粉じん、異常気圧、有害物の粉じん・蒸気・ガスを発散する場所での業務などがあります。
こうした有害業務がある事業場では、労働者数や従事者数、業務の種類によって、専任の衛生管理者や衛生工学衛生管理者の選任が必要になる場合があります。
安全管理者と衛生管理者の違い【仕事内容】
安全管理者と衛生管理者では、担当する業務が異なります。安全管理者は主に労働災害の防止、衛生管理者は主に健康障害の防止に関する業務を担当します。具体的な仕事内容をそれぞれ確認してみましょう。
安全管理者
安全管理者は、機械設備、作業場所、作業工程・方法などに潜む危険を把握し、労働災害を防止する役割を担います。安全装置や保護具、作業通路、作業手順などを確認し、必要な改善を進めます。
また、災害が発生した場合には原因を調査し、再発防止策を検討します。安全教育や訓練、安全関係資料の整備なども含め、職場の安全水準を継続的に高めることが求められます。
衛生管理者
衛生管理者は、労働者が健康を損なわず働ける作業環境・作業条件を整える役割を担います。作業環境や衛生状態を調査し、健康障害につながるリスクがあれば必要な改善を行います。
健康診断、衛生教育、健康相談、衛生保護具の点検なども担当領域です。メンタルヘルスや長時間労働など、医学的な判断が必要となる事項については、産業医などと連携して対応します。
職場巡視はどちらも共通して実施する
安全管理者と衛生管理者はいずれも現場を確認しますが、法令上の規定には違いがあります。衛生管理者は少なくとも毎週1回、作業場等を巡視することが明確に定められています。
安全管理者についても作業場等を巡視し、設備や作業方法等に危険のおそれがある場合には直ちに必要な措置を講じなければなりません。ただし、衛生管理者のように「週1回以上」という頻度までは定められていません。
安全管理者と衛生管理者の違い【選任義務】
安全管理者と衛生管理者は、どちらも常時50人以上の労働者を使用する事業場が基本的な選任基準ですが、対象となる業種が異なります。また、衛生管理者は事業場の規模によって必要人数も変わります。
安全管理者
安全管理者は、建設業、製造業、運送業、清掃業、林業、鉱業など法令で定められた一定の業種で、常時50人以上の労働者を使用する事業場に選任義務があります。
卸売業・小売業についても一部の業種は対象です。一方、対象外の業種では50人以上であっても安全管理者の選任義務はありません。自社の業種がどの区分に該当するか確認したうえで判断しましょう。
衛生管理者
衛生管理者は、業種を問わず常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任が必要です。オフィス中心の事業場でも、人数基準を満たせば対象となります。
労働者数は正社員だけで判断するものではありません。実際の使用関係を踏まえて常時使用する労働者を把握し、50人に近づいている場合は資格者の確保や社内育成を早めに進めましょう。
事業場の規模で必要な人数が変わる
衛生管理者は、事業場で常時使用する労働者数に応じて必要な選任人数が増えます。50人以上では少なくとも1人が必要となり、事業場の規模が大きくなるほど複数名の選任が必要です。
一方、安全管理者には衛生管理者と同じ人数表はありません。ただし、業種・規模によって専任の安全管理者が必要となる場合があります。具体的な人数基準については、後述する「事業場の規模に応じた人数はどれくらいか」で確認してください。
安全管理者と衛生管理者の違い【資格要件】
安全管理者と衛生管理者は、資格要件の仕組みそのものが異なります。安全管理者は実務経験や研修修了などによって要件を満たすのに対し、衛生管理者は免許や法令で認められた資格が基本です。具体的な要件をそれぞれ確認していきましょう。
安全管理者
安全管理者の代表的な資格要件は、一定の学歴と産業安全の実務経験を有し、安全管理者選任時研修を修了していることです。たとえば大学・高等専門学校の理科系課程卒業者は卒業後2年以上、高校等の理科系課程卒業者は4年以上の実務経験が必要です。
理科系以外でも、大学等卒業後4年以上、高校等卒業後6年以上、または一定の場合は7年以上の産業安全の実務経験などによって要件を満たせます。労働安全コンサルタントも安全管理者として選任できます。
衛生管理者
衛生管理者は、第一種衛生管理者、第二種衛生管理者、衛生工学衛生管理者などの免許保持者や、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントなどから選任します。
一般的には衛生管理者免許試験へ合格して免許を取得しますが、すべての衛生管理者が国家試験を受験して資格を取得するわけではありません。保有する資格や経歴によって、試験によらず選任資格を満たす場合もあります。
所持している資格によって異なる担当業種
第一種衛生管理者免許は、すべての業種で衛生管理者として選任できます。一方、第二種衛生管理者免許で選任できるのは、法令上「その他の業種」に区分される事業場です。
農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業、清掃業などでは、第一種衛生管理者免許などが必要となります。
有害業務がある職場で必要になる免許
有害業務を行っているだけで、すべての事業場に衛生工学衛生管理者が必要になるわけではありません。常時500人を超える労働者を使用し、法令で定める一定の有害業務に常時30人以上を従事させるなど、規模と業務の両方の条件を満たした場合に必要となります。
該当する場合は、衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を有する人から選任します。有害業務の種類によって条件が異なるため、対象業務を条文と照らして確認しましょう。
衛生管理者の試験の難易度
衛生管理者免許試験は第一種と第二種があり、第一種は有害業務に関する労働衛生・関係法令も試験範囲となるため、第二種より出題範囲が広くなります。
合格基準は原則として、科目ごとの得点が40%以上かつ総得点が60%以上です。総合点だけでは合格できないため、各分野をバランスよく学習する必要があります。
直近の合格率
公益財団法人安全衛生技術試験協会が公表する令和7年度(2025年度)の全国結果では、第一種衛生管理者は66,401人が受験し31,046人が合格、合格率46.8%でした。
第二種衛生管理者は40,653人が受験し19,796人が合格し、合格率48.7%です。どちらも半数前後が合格していますが、科目ごとの最低得点基準もあるため、苦手分野を残さない学習が重要です。
試験日と申し込みの方法
衛生管理者試験は、各地域の安全衛生技術センター・試験場などで実施されています。試験日は会場ごとに異なるため、公益財団法人安全衛生技術試験協会の最新日程を確認して申し込みます。
オンライン申請は、原則として希望する試験日の2か月前から14日前までです。郵送や窓口でも申請できますが、受付期間が異なります。また、受付期間内でも定員に達すると締め切られるため、早めに手続きしましょう。
受験資格と勉強の進め方
衛生管理者試験には受験資格があり、学歴と労働衛生に関する実務経験などによって判断します。代表的には、大学・短期大学・高等専門学校卒業後1年以上、高校卒業後3年以上の労働衛生実務経験が必要です。
一定の場合は、学歴にかかわらず10年以上の実務経験でも受験できます。学習では、関係法令、労働衛生、労働生理をバランスよく進め、公表試験問題を活用して出題形式に慣れることが有効です。
安全管理者と衛生管理者は兼任できるか
同じ事業場において、安全管理者と衛生管理者の双方の資格要件を満たし、両方の職務を適切に遂行できる場合、一律に兼任が禁止されているわけではありません。
ただし、業種・規模によって安全管理者または衛生管理者を専任とする必要がある場合など、兼任に制約が生じるケースがあります。資格の有無だけでなく、専任要件や実際の業務量まで確認しましょう。
兼任が認められる条件
兼任する人は、安全管理者と衛生管理者それぞれの資格要件を満たす必要があります。また、安全・衛生双方の巡視や改善、安全衛生委員会への対応など、両方の職務を実質的に遂行できる体制が必要です。
特に、法令上「専任」の安全管理者・衛生管理者を置く必要がある事業場では、他の職務との兼務に制約があります。個別の要件に該当する場合は、所轄労働基準監督署へ確認すると安心です。
兼任することの利点と負担
安全管理者と衛生管理者を兼任する主な利点と負担は次のとおりです。
- 利点:安全・衛生に関する情報を一元的に把握でき、改善施策を横断的に検討しやすい
- 負担:担当する法定業務の範囲が広がり、巡視・記録・委員会・改善対応などが1人へ集中しやすい
単に人員削減を目的に兼任させるのではなく、実際に必要な時間を確保できるか確認しましょう。
兼任するときに気をつけたいこと
兼任するときは、資格要件、専属要件、専任要件、実際の業務量を確認することが重要です。安全管理者と衛生管理者は異なる法定職務を担うため、どちらか一方の業務が形骸化しない体制を整えましょう。
また、安全と衛生の課題は重なることもありますが、法令上の役割は別です。それぞれの巡視結果や改善事項を記録し、必要に応じて産業医や安全衛生委員会とも情報共有しましょう。
安全管理者・衛生管理者は複数の事業場で兼務できるか
安全管理者・衛生管理者は原則としてその事業場に専属する人を選任するため、複数の独立した事業場を自由に兼務できる制度ではありません。原則として事業場ごとに選任します。
ただし、分社化によって分割された親会社・子会社の事業場が同一敷地内または隣接し、安全衛生管理が密接に関連しているなど、一定の要件を満たす場合には例外的に兼務が認められることがあります。通常の複数拠点を当然に兼務できるわけではない点に注意しましょう。
安全管理者・衛生管理者と間違えやすい関連職種
安全衛生管理には、安全管理者・衛生管理者のほか、総括安全衛生管理者、安全衛生推進者、産業医など複数の役職があります。名称が似ていても、選任基準・資格・役割はそれぞれ異なります。
特に「総括安全衛生管理者」と「総括安全衛生責任者」は名前が似ていますが、対象となる事業場・現場が異なる別制度です。
総括安全衛生管理者
総括安全衛生管理者は、一定規模以上の事業場で、安全管理者・衛生管理者などを指揮しながら、安全衛生業務全体を統括管理する役割です。
資格や免許を取得した人を選ぶ制度ではなく、工場長や事業所長など、その事業場の事業実施を実質的に統括管理する権限・責任を有する人を充てます。安全・衛生の技術的事項を担当する安全管理者・衛生管理者とは役割が異なります。
総括安全衛生責任者
総括安全衛生責任者は、建設業・造船業などの混在作業現場で、元請と関係請負人等の作業従事者が同じ場所で作業する場合に、現場全体の安全衛生管理を統括する役割です。
事業場内の安全衛生管理体制を統括する「総括安全衛生管理者」とは別制度です。企業内の役職なのか、建設・造船等の混在作業現場の役職なのかを区別しましょう。
安全衛生推進者
常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場では、安全管理者・衛生管理者ではなく、業種に応じて安全衛生推進者または衛生推進者を選任する必要があります。
安全管理者の選任対象業種では安全衛生推進者、それ以外の業種では衛生推進者を選任します。労働基準監督署への選任報告は不要ですが、氏名を労働者へ周知する必要があります。
産業医
産業医は、医学的な専門性をもとに労働者の健康管理について事業者へ助言・指導する医師です。衛生管理者が日常的な衛生管理を担うのに対し、産業医は医学的判断が必要となる健康管理を専門的に支援する点が異なります。
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、衛生管理者と産業医の両方が必要です。どちらか一方を置けば他方が不要になるわけではありません。
労働衛生コンサルタント
労働衛生コンサルタントは、労働衛生に関する高度な専門知識をもとに、事業場の衛生について診断・指導を行う国家資格者です。
また、労働衛生コンサルタントは衛生管理者として選任できる資格者の一つです。2人以上の衛生管理者を選任する場合には、そのうち労働衛生コンサルタント1人については、事業場への専属要件の例外が認められています。
衛生管理者とあわせて産業医を選任するなら産業医クラウド
衛生管理者による日常的な衛生管理に加えて、健康診断後の措置、長時間労働者への対応、メンタルヘルス、復職支援など、医学的な判断が必要な場面では産業医との連携が重要です。
Avenirの「産業医クラウド」では、企業規模や業種、拠点数、健康課題などを踏まえて産業医をご紹介しています。産業医の選任や衛生委員会の運営、産業保健体制の整備でお困りの企業様は、お気軽にご相談ください。
安全管理者・衛生管理者の選任から届出までの流れ
安全管理者・衛生管理者は、選任義務が生じた場合、法令で定められた期限内に選任し、所轄の労働基準監督署へ選任報告を行います。選任期限と届出方法をそれぞれ確認しておきましょう。
選任期限と届出の流れ
安全管理者・衛生管理者は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任する必要があります。選任後は遅滞なく、様式第3号「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」により、原則として電子申請で報告します。
「選任後14日以内に届出」ではなく、14日以内なのはあくまで選任期限です。2025年1月1日以降は選任報告の電子申請が原則義務化されていますが、電子申請が困難な場合には当面の経過措置として書面による報告が認められています。
選任の基準となる事業場の規模
本社・支店・営業所・工場など複数の拠点がある企業では、それぞれの拠点が選任義務の判断単位となる「事業場」に該当するかを確認します。そのうえで、各事業場の業種や常時使用する労働者数を確認しましょう。
特に、新拠点の開設、増員、組織再編などで労働者数が増える場合は注意が必要です。選任義務が発生してから資格者を探すのではなく、基準人数へ近づいた段階で候補者を確保しておくとスムーズです。
安全管理者・衛生管理者の選任時に確認したい要件
安全管理者・衛生管理者を実際に選任する際は、「対象業種か」「労働者数はいくつか」「候補者が資格要件を満たすか」「必要人数を満たしているか」「専属・専任要件に該当するか」「有害業務があるか」の順に確認すると整理しやすくなります。
また、退職・異動や組織再編によって選任体制が変わる場合も注意が必要です。担当者が不在となる期間を生じさせないよう、後任候補や必要な報告まで含めて人事異動前に確認しておきましょう。
事業場の規模に応じた人数はどれくらいか
衛生管理者は、事業場で常時使用する労働者数に応じて、必要な選任人数が次のように定められています。
| 事業場の常時使用する労働者数 | 必要な衛生管理者数 |
|---|---|
| 50~200人 | 1人以上 |
| 201~500人 | 2人以上 |
| 501~1,000人 | 3人以上 |
| 1,001~2,000人 | 4人以上 |
| 2,001~3,000人 | 5人以上 |
| 3,001人以上 | 6人以上 |
事業場の規模だけでなく、有害業務の有無によって専任の衛生管理者や衛生工学衛生管理者が必要になる場合があります。
専属の衛生管理者が必要な事業場であるか
衛生管理者は原則として事業場に専属する人から選任しますが、選任人数や資格によって例外があります。たとえば、2人以上の衛生管理者を選任し、その中に労働衛生コンサルタントがいる場合は、そのうち1人について専属要件の例外が認められます。
また、常時1,000人を超える事業場や、常時500人を超え一定の有害業務に常時30人以上を従事させる事業場では、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任とする必要があります。自社がこれらの条件に該当しないか確認しましょう。
安全管理者・衛生管理者を選任しない場合のリスク
選任義務があるにもかかわらず安全管理者・衛生管理者を選任していない場合は、労働安全衛生法違反となり、労働基準監督署から是正を求められる可能性があります。選任義務違反は50万円以下の罰金の対象となる可能性もあります。
また、法的リスクだけでなく、設備上の危険、健康障害、長時間労働などを日常的に把握・改善する担当者が不在となります。安全衛生管理が形骸化すれば、労働災害や健康障害の発生、企業の信用低下にもつながるため、実効性のある体制を整えることが重要です。
衛生管理者の有資格者がいない場合の対応
衛生管理者の選任義務が発生しているにもかかわらず社内に有資格者がいない場合でも、資格者がいないことだけを理由に選任義務が自動的に猶予・免除されるわけではありません。
50人へ達することが見込まれる場合は、早めに資格取得や有資格者の採用を進めることが基本です。一方、突然の退職・死亡など、やむを得ない事情で欠員が生じた場合には例外的な制度があります。
労働局へ免除を申請する
衛生管理者を通常の規定どおり選任できないやむを得ない事由があり、所轄都道府県労働局長の許可を受けた場合には、衛生管理者の選任について特例的な取扱いが認められることがあります。
これは、有資格者を準備していなかった企業が一般的に利用できる制度ではありません。突然の死亡・退職など特殊な事情で欠員が生じ、充足に時間を要することがやむを得ない場合などを対象とし、特定の人に衛生管理業務を担当させることなどを条件に、おおむね1年以内の暫定措置として扱われます。
代理となる人を立てる
選任済みの衛生管理者が、旅行、疾病、事故などのやむを得ない事情によって一時的に職務を行えない場合には、代理者を選任する必要があります。
ただし、これは一時的不在への対応です。衛生管理者そのものが退職して恒常的に欠員となった場合に、無資格者を「代理」として置くだけで選任義務を満たすわけではありません。欠員と一時的不在を区別して対応しましょう。
外部の専門家に委託する
衛生管理者は原則として事業場に専属する人を選任するため、外部業者へ衛生管理業務を委託するだけでは、法定の衛生管理者の選任に代えることはできません。
ただし、2人以上の衛生管理者を選任する場合に労働衛生コンサルタントを含めると、そのうち1人について専属要件の例外が認められます。外部専門家を利用する場合でも、自社が法定の選任要件を満たしているか確認しましょう。
安全管理者と衛生管理者の違いに関するよくある質問
最も大きな違いは何ですか?
安全管理者は主に労働災害につながる「危険」を管理し、衛生管理者は主に「健康障害」を防止する点が最も大きな違いです。
また、安全管理者は一定の業種で常時50人以上、衛生管理者はすべての業種で常時50人以上の事業場に必要です。担当業務だけでなく、対象業種や資格要件も異なります。
安全管理者と衛生管理者は兼務できますか?
双方の資格要件を満たし、それぞれの職務を適切に遂行できる場合には、一律に兼務が禁止されているわけではありません。ただし、専任の安全管理者・衛生管理者が必要となる事業場では兼務に注意が必要です。
また、資格上は兼務できても、業務量が過大となり職場巡視や改善対応が行えなければ適切とはいえません。事業場の規模と安全衛生リスクを踏まえて判断しましょう。
給与や年収はどのくらいですか?
安全管理者・衛生管理者について、法律で給与や年収が定められているわけではありません。実際の待遇は、業種、企業規模、職位、経験年数、担当業務、資格手当などによって異なります。
衛生管理者免許などに対して資格手当を設ける企業もありますが、資格取得によって必ず一定額の年収が上がるとは限りません。転職・採用時には資格だけでなく、安全衛生業務の範囲や責任も確認することが重要です。
安全管理者は国家資格ですか?
「安全管理者」という名称の国家資格・免許があるわけではありません。一定の学歴・産業安全に関する実務経験を有し、安全管理者選任時研修を修了した人などが、安全管理者として選任できます。
また、労働安全コンサルタントも選任資格を満たします。国家試験による免許取得が一般的な衛生管理者とは資格制度が異なるため、「安全管理者試験に合格すれば取得できる資格」と理解しないよう注意しましょう。
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