産業医を選任している企業では、「職場巡視は毎月必要なのか」「2か月に1回へ減らしても問題ないのか」と迷う人事担当者も少なくありません。
産業医の職場巡視は、原則として少なくとも毎月1回必要です。ただし、産業医が所定の情報を毎月受け取り、事業者の同意を得ている場合は、2か月に1回以上へ変更できます。本記事では、法令上の頻度、変更条件、巡視内容、実施プログラム、注意点を解説します。
職場巡視の頻度は労働安全衛生規則で定められている
労働安全衛生規則では、産業医は少なくとも毎月1回、作業場等を巡視することとされています。
作業方法や衛生状態に有害のおそれがある場合は、労働者の健康障害を防止するため、必要な措置を講じなければなりません。
このルールは、常時50人以上の労働者を使用し、産業医の選任義務がある事業場が主な対象です。企業全体の人数ではなく、工場、店舗、営業所などの事業場単位で確認します。
| 巡視頻度 | 法令上の位置づけ | 主な条件 |
|---|---|---|
| 毎月1回以上 | 原則 | 通常の定期巡視として実施する |
| 2か月に1回以上 | 条件付きの例外 | 毎月の情報提供と事業者の同意が必要 |
常時50人以上の事業場では産業医の選任が必要
産業医の選任義務は、企業全体ではなく事業場ごとに判断します。例えば、本社に40人、工場に60人が勤務している場合、原則として60人が勤務する工場で産業医の選任が必要です。
複数拠点を持つ企業は、各事業場の常時使用する労働者数を確認しましょう。産業医を選任した事業場では、面談や健康診断後の措置だけでなく、法令に沿った職場巡視も実施する必要があります。
原則は少なくとも毎月1回の実地巡視
産業医は、原則として少なくとも毎月1回、実際の作業場を巡視します。産業医が会社を訪問していても、衛生委員会への出席や従業員面談だけで現場を見ていなければ、職場巡視を実施したことにはなりません。
巡視では、設備、作業方法、作業姿勢、換気、照明、騒音、休憩環境などを確認します。産業医が医学的な観点から、職場環境と健康障害の関係を評価することが目的です。
条件を満たせば2か月に1回以上へ変更できる
産業医が事業者から所定の情報を毎月1回以上受け取り、事業者の同意を得ている場合は、職場巡視を2か月に1回以上へ変更できます。
産業医または企業の一方だけで、自由に回数を減らすことはできません。情報提供の内容、担当者、実施日を明確にし、産業医が訪問しない月も職場の変化を把握できる体制を整える必要があります。
巡視頻度を変えてもほかの産業医業務は減らない
2か月に1回へ変更できるのは、産業医による定期巡視の回数です。衛生委員会への関与、従業員面談、健康診断後の就業判定、長時間労働者への対応など、ほかの産業医業務が半分になるわけではありません。
巡視を行わない月も、産業医が必要な情報を確認し、健康上の問題に対応できる体制が必要です。訪問費用の削減だけを目的に頻度を減らすことは避けましょう。
2か月に1回へ変更するための法定要件
職場巡視を2か月に1回へ変更するには、産業医へ所定の情報が毎月提供されていることと、事業者の同意を得ていることが必要です。
衛生委員会で変更理由や情報提供方法を審議し、記録することは、運用の透明性を高めるうえで有効です。ただし、法令上の変更条件と、社内で実施することが望ましい手続きを分けて理解しましょう。
衛生管理者の巡視結果を毎月提供する
産業医へ提供する情報の一つが、衛生管理者による作業場等の巡視結果です。衛生管理者は、少なくとも毎週1回、設備、作業方法、衛生状態を確認します。
提供内容には、巡視者、日時、場所、有害のおそれがある事項、講じた措置、産業医へ共有すべき変化などを含めます。「問題なし」という結論だけでなく、どこを確認したのかが分かる記録を作成しましょう。
衛生委員会等で決めた健康管理情報を提供する
衛生管理者の巡視結果に加え、労働者の健康障害防止や健康保持に必要な情報のうち、衛生委員会等で調査審議し、産業医へ提供すると定めた情報も毎月共有します。
長時間労働の状況、労働災害、設備や作業方法の変更、健康相談の傾向などが候補です。個人の健康情報を無制限に共有せず、産業医が職場リスクを判断するために必要な範囲へ整理します。
事業者の同意を得る
毎月の情報提供体制を整えたうえで、巡視頻度を2か月に1回へ変更することについて、事業者の同意を得る必要があります。
同意日、変更後の頻度、開始時期、情報提供の担当者を記録しましょう。産業医との契約内容に毎月巡視と記載されている場合は、法令上の条件だけでなく、契約の変更手続きも確認する必要があります。
衛生委員会で変更方法を審議・記録する
巡視頻度の変更そのものについて、衛生委員会での決議が一律の法定要件とされているわけではありません。一方、産業医へ提供する健康管理情報は、衛生委員会等で調査審議して決めます。
実務上は、変更理由、情報提供方法、見直し時期、月1回へ戻す条件についても審議し、議事録へ残すことが望まれます。労使で運用を共有することで、形骸化を防ぎやすくなります。
産業医と衛生管理者の職場巡視の違い
産業医と衛生管理者は、いずれも作業場等を巡視しますが、頻度と役割が異なります。衛生管理者の巡視を行っていても、産業医の巡視が不要になるわけではありません。
衛生管理者が日常的な変化を把握し、産業医が医学的な観点から健康への影響を評価します。両者の巡視結果を連携させることで、問題の早期発見と具体的な改善につなげられます。
| 比較項目 | 産業医 | 衛生管理者 |
|---|---|---|
| 原則的な頻度 | 少なくとも毎月1回 | 少なくとも毎週1回 |
| 主な視点 | 医学・健康管理の視点 | 設備・作業方法・衛生管理の視点 |
| 主な役割 | 健康障害リスクの評価と医学的助言 | 日常的な現場確認と必要な改善 |
| 連携方法 | 巡視結果を踏まえて重点箇所を確認 | 毎週の巡視結果を産業医へ提供 |
衛生管理者は少なくとも毎週1回巡視する
衛生管理者は、少なくとも毎週1回、作業場等を巡視し、設備、作業方法、衛生状態に有害のおそれがないかを確認します。問題がある場合は、直ちに必要な措置を講じます。
現場に近い立場で継続的に変化を把握できることが特徴です。確認した場所、問題点、対応状況を記録し、産業医が訪問しない月にも情報を共有できるようにしましょう。
産業医は医学的な観点から健康への影響を評価する
産業医は、設備の不具合だけでなく、その環境や作業方法が従業員の健康へどのような影響を与えるかを確認します。
例えば、騒音と聴力、作業姿勢と腰痛、長時間のパソコン作業と眼精疲労などの関係を評価します。健康診断、面談、ストレスチェックなどの情報と現場の状況を結び付けられる点が、産業医巡視の特徴です。
職場巡視を行う目的
職場巡視の目的は、法令上の回数を満たすことではありません。産業医が実際の職場を確認し、健康診断や面談だけでは分からない作業環境、業務負荷、従業員の様子を把握することです。
巡視で課題を見つけた後は、改善担当者と期限を決め、再確認まで行います。巡視を単独の行事ではなく、職場環境を継続的に改善するプログラムとして運用しましょう。
作業環境による健康リスクを発見する
産業医は、温度、湿度、換気、照明、騒音、粉じん、臭気などを確認します。オフィス、店舗を確認します。オフィス、店舗、工場、倉庫では、重点的に見るべき環境が異なります。
設備上の数値だけでなく、従業員が暑さ、寒さ、息苦しさ、目の疲れなどを感じていないかも確認します。現場の訴えと客観的な測定を組み合わせて、改善の必要性を判断します。
作業方法や身体的負担を確認する
長時間の座位、不自然な姿勢、重量物の運搬、反復作業などは、腰痛、肩こり、眼精疲労などにつながる可能性があります。
産業医は、机や椅子の高さ、モニターの位置、作業動線、休憩の取り方などを確認します。高額な設備投資だけでなく、作業手順、配置、休憩時間を見直すことで改善できるケースもあります。
過重労働やメンタルヘルスの兆候を把握する
職場巡視では、設備だけでなく、従業員の働き方や職場の様子も確認します。休憩が取れていない、特定の人へ業務が集中している、コミュニケーションが減っているといった状況は、過重労働や不調の兆候となる場合があります。
勤怠やストレスチェックの集団分析と現場の状況を組み合わせ、個人面談だけでは見えない組織課題を確認します。
前回の指摘事項が改善されたか確認する
職場巡視では、新しい問題だけでなく、過去に指摘した事項が改善されたかを確認します。対応済みと報告されていても、実際の現場では運用されていない場合があります。
改善が進んでいないときは、予算不足、人員不足、担当者不在などの原因を整理します。暫定措置と恒久対策を分け、次回までの対応を具体的に設定しましょう。
職場巡視で確認する主な項目
巡視内容は、業種や作業内容によって異なります。すべての事業場へ同じチェックリストを適用するのではなく、過去の労働災害、健康診断結果、従業員からの相談などを反映させることが重要です。
毎回確認する共通項目と、月ごとの重点テーマを分けると、形式的な巡視を防げます。季節や設備変更に応じて項目を見直しましょう。
オフィスで確認する項目
オフィスでは、照明、換気、室温、通路、机・椅子、パソコンの配置、休憩スペースなどを確認します。長時間のデスクワークによる眼精疲労や腰痛への配慮も必要です。
会議室不足によるオンライン会議の負担、休憩を取りにくい雰囲気など、設備以外の問題も確認しましょう。テレワーク勤務者が多い場合は、在宅勤務環境に関する相談状況も共有します。
製造現場や倉庫で確認する項目
製造現場や倉庫では、機械の安全性、騒音、粉じん、化学物質、保護具、重量物、作業動線などを確認します。
設備が基準を満たしていても、保護具が正しく使用されていない、繁忙時だけ作業手順が省略されるといった問題があります。実際の作業方法を観察し、現場の従業員からも困りごとを聞き取りましょう。
店舗や営業所で確認する項目
店舗や営業所では、バックヤード、休憩場所、立ち作業、冷暖房、荷物の保管、従業員の動線などを確認します。
少人数の拠点では、休憩を交代できない、責任者へ業務が集中するなどの問題も起こります。設備だけでなく、勤務シフトや休憩の取得状況も確認し、本社の人事部門と共有しましょう。
2か月に1回へ変更できるか判断するチェックポイント
法定要件を満たしていても、すべての事業場で2か月に1回が適切とは限りません。作業環境の変化や健康問題が多い職場では、毎月の巡視を継続したほうがよい場合があります。
企業は、費用や産業医の予定ではなく、現場の健康・安全リスクを基準に判断しましょう。変更後も定期的に妥当性を評価し、必要に応じて月1回へ戻します。
毎月の情報提供が確実に行えるか
衛生管理者の巡視結果や健康管理上の情報を、毎月決まった日までに産業医へ提供できるか確認します。
担当者が不在になると情報が届かない運用では、2か月に1回へ変更する前提を維持できません。提出様式、提出日、確認者、代行者を決め、産業医が追加質問できる連絡先も設定しましょう。
職場環境や作業方法が安定しているか
設備、化学物質、製造工程、レイアウト、勤務シフトなどの変更が頻繁にある事業場では、新たな健康リスクが発生しやすくなります。
大きな変更を行った直後は、毎月の巡視を継続し、従業員の健康状態や作業状況を確認することが望まれます。リスクが安定し、改善事項への対応が完了してから頻度変更を再検討しましょう。
労働災害や健康問題が増えていないか
労働災害、体調不良者、長時間労働者、高ストレス者、休職者などが増えている場合は、職場の実態を継続的に確認する必要があります。
データだけで判断せず、業務の偏り、作業環境、人員配置などを現場で確認します。産業医が毎月巡視する必要があると判断する場合は、頻度を維持しましょう。
月1回へ戻す条件を決めているか
2か月に1回へ変更した後も、職場の状況は変化します。労働災害の発生、新設備の導入、長時間労働者の増加などを、毎月巡視へ戻す判断基準として設定しましょう。
半年または1年ごとに巡視頻度を見直し、条件を満たさなくなった場合は速やかに変更します。一度決めた頻度を固定化しないことが重要です。
職場巡視が形骸化する5つの課題
法令どおりに職場巡視を行っていても、毎回同じ順路を歩くだけでは、健康障害の防止にはつながりません。指摘事項を記録しても、担当者や期限が決まっていなければ改善は進まないでしょう。
巡視前の情報提供、重点テーマの設定、巡視後の改善管理までを一連の業務として設計します。実施回数ではなく、健康リスクを減らせたかを評価することが重要です。
毎回同じ場所だけを形式的に確認する
同じ順路を短時間で歩き、整理整頓だけを確認していると、作業方法や業務負荷の変化を見落とす可能性があります。
対象部署や時間帯を変え、毎月の重点テーマを設定しましょう。昼間は問題がなくても、夜勤時や繁忙時間帯に休憩や人員配置の問題が起きている場合があります。
産業医へ事前情報が提供されていない
産業医が当日に現場を見るだけでは、長時間労働、体調不良者の増加、設備変更などを把握できない場合があります。
巡視前に、勤怠、労働災害、健康診断、ストレスチェック、従業員相談の傾向などを共有しましょう。事前情報があれば、限られた時間で確認すべき場所を絞れます。
産業医の指摘が抽象的で改善できない
「整理整頓を徹底する」「換気に注意する」といった抽象的な指摘では、現場担当者が何を変更すべきか判断できません。
対象場所、問題点、健康リスク、推奨する改善策を具体的に記録しましょう。すぐに実施できない場合は、応急措置と恒久的な対策を分けて設定します。
改善担当者と期限が決まっていない
産業医から指摘を受けても、「担当部署で検討する」としたままでは対応が進みません。
指摘事項ごとに、優先度、責任部署、担当者、期限を設定します。予算が必要な改善は、経営層への報告時期も決めましょう。人事担当者は期限前に進捗を確認します。
巡視結果が衛生委員会へ共有されていない
巡視結果を産業医と人事担当者だけで保管すると、組織的な改善につながりません。設備変更や人員配置には、現場責任者や経営層の協力が必要です。
指摘事項、改善策、担当者、期限を衛生委員会等へ報告します。次回会議で進捗を確認し、未対応の理由や追加施策を審議しましょう。
職場巡視を改善につなげる7つの実施手順
効果的な職場巡視は、当日に現場を歩くだけでは完了しません。年間計画、事前情報、実地確認、改善管理、再確認までを一つのプログラムとして運用します。
産業医、衛生管理者、人事担当者、現場責任者の役割を明確にしましょう。担当者が交代しても同じ基準で進められるよう、共通のチェックリストと改善台帳を使用します。
手順1.年間の巡視計画を作成する
年度の初めに、巡視日、対象部署、重点テーマを設定します。事務所、工場、倉庫、休憩室など、すべての作業場所を計画的に確認できるようにしましょう。
夏は熱中症、冬は換気、繁忙期は長時間労働など、季節や事業計画に合わせてテーマを設定します。新設備の導入時には臨時の巡視も検討します。
手順2.前回の指摘事項を確認する
巡視前に、過去の指摘事項、担当者、期限、対応状況を確認します。未対応の項目がある場合は、理由と現在の暫定措置を整理しましょう。
前回指摘した場所を再確認することで、書類上は完了していても、現場では運用されていない問題を発見できます。同じ指摘が続く場合は、改善方法自体を見直します。
手順3.産業医へ必要な情報を提供する
勤怠、労働災害、健康診断、ストレスチェック、設備変更、現場からの相談などを事前に産業医へ共有します。
個人の健康情報を広く提供するのではなく、部署別の傾向や職場環境との関係を判断できる情報へ整理しましょう。特に確認してほしい場所や作業も伝えます。
手順4.産業医が現場を実地で確認する
産業医、衛生管理者、人事担当者、現場責任者などが作業場を巡視します。設備だけでなく、実際の作業姿勢、動線、保護具の使用、休憩、従業員の様子も確認しましょう。
現場の従業員から短時間の聞き取りを行うことも有効です。巡視の目的を事前に周知し、監査や個人評価と誤解されないようにします。
手順5.指摘事項に優先順位を付ける
発見した課題を、直ちに対応する項目、短期的に改善する項目、中長期的に対応する項目へ分けます。
事故や重大な健康障害につながるおそれがある場合は、衛生委員会の開催を待たずに必要な措置を講じます。設備投資が必要な場合も、実施までの暫定対策を設定しましょう。
手順6.衛生委員会で改善方法を審議する
巡視結果、産業医の意見、改善案、担当者、期限を衛生委員会等へ報告します。
経営判断や予算が必要な項目は、必要性と健康リスクを具体的に整理しましょう。議事録には報告した事実だけでなく、企業として決定した対応内容を記載します。
手順7.次回巡視で改善効果を確認する
次回の巡視では、改善策が実施されたかだけでなく、実際に健康・安全リスクが下がったかを確認します。
設備を変更したことで作業しにくくなるなど、別の問題が生じる場合もあります。未対応事項は期限を見直し、必要に応じて経営層へ再度報告しましょう。
職場巡視を成功させる5つのポイント
職場巡視を成功させるには、法令上の回数を守るだけでなく、業種や職場の課題に合った確認項目を設定し、改善まで完了させることが重要です。
産業医任せにせず、衛生管理者、人事担当者、現場責任者が連携しましょう。指摘件数ではなく、改善完了率や同じ問題の再発状況によって成果を評価します。
業種に合ったチェックリストを作る
一般的なチェックリストだけでは、事業場固有のリスクを見落とす可能性があります。製造業では機械や化学物質、オフィスでは作業姿勢や換気などを重点項目に加えましょう。
過去の労働災害、健康診断、従業員相談も反映します。設備や働き方の変化に合わせて、毎年チェックリストを見直すことが重要です。
毎回の重点テーマを設定する
一度の巡視ですべてを詳しく確認することは困難です。共通項目に加え、作業姿勢、熱中症、休憩、メンタルヘルスなど、毎回一つの重点テーマを設定しましょう。
年間を通して複数のテーマを確認すれば、同じ場所を歩くだけの巡視を防げます。衛生委員会で課題となった事項も次回のテーマへ反映します。
従業員の意見を巡視へ反映する
管理職や産業医から問題がないように見えても、現場の従業員が負担や不便を感じている場合があります。
事前アンケートや衛生委員会を通じて、確認してほしい場所や作業を集めましょう。巡視後に改善内容を周知すると、従業員が職場環境改善へ参加しやすくなります。
担当者と期限を改善台帳で管理する
指摘事項ごとに、場所、問題点、優先度、担当者、期限、対応状況を記録します。写真を利用する場合は、個人情報や機密情報の写り込みへ注意しましょう。
期限が近づいたら人事担当者や衛生管理者が進捗を確認します。未対応事項が分かる状態にすることで、改善の先送りを防げます。
巡視結果をほかの産業保健施策へつなげる
巡視で長時間労働や不調の兆候を把握した場合は、産業医面談、衛生講話、管理職研修などへつなげます。
設備面だけでなく、業務量、人員配置、コミュニケーションの改善も検討しましょう。職場巡視を産業保健プログラム全体の情報収集機会として活用することが重要です。
職場巡視を改善につなげた想定事例
職場巡視の成果は、指摘した件数ではなく、発見した健康リスクをどのように改善したかで評価します。
ここでは、オフィス、製造現場、多拠点企業を想定し、巡視前の課題、産業医の指摘、企業の改善、再確認までの事例を紹介します。自社の事業内容に合わせて応用しましょう。
オフィスの作業姿勢を改善した事例
巡視で、モニターの位置が低く、前かがみで作業する従業員が多いことが分かりました。肩こりや眼精疲労に関する相談も増えていました。
企業はモニター台を導入し、椅子の調整方法を周知しました。次回の巡視で使用状況を確認し、改善されていない席について個別に配置を見直しました。
製造現場の騒音対策を見直した事例
製造現場の巡視で、特定設備の周辺では会話が聞き取りにくく、保護具の使用状況にも差があることが確認されました。
企業は騒音測定を行い、保護具の選定と着用教育を見直しました。次回巡視では、保護具の使用状況と従業員の聞こえに関する訴えを確認しました。
多拠点企業で巡視結果を水平展開した事例
複数店舗を持つ企業では、バックヤードの通路や休憩環境に共通した問題がありました。しかし、店舗ごとに対応していたため、改善状況に差が生じていました。
本社がチェックリストと改善基準を共通化し、各店舗へ展開しました。産業医が店舗を順番に巡視し、訪問しない月は各拠点の確認結果を共有する体制を整えました。
産業医クラウドで職場巡視の法令対応と改善を支援
職場巡視を適切に運用するには、法令上の頻度を理解するだけでなく、業種や作業内容に応じた健康リスクを把握し、具体的な改善策を提案できる産業医が必要です。
産業医クラウドでは、企業の業種、従業員数、拠点数に合った産業医の紹介に加え、職場巡視、衛生委員会、従業員面談、健康診断後の就業判定などを一体的に支援しています。
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職場巡視の頻度に関するよくある質問
産業医の職場巡視は毎月必ず必要ですか?
産業医の職場巡視は、原則として少なくとも毎月1回必要です。ただし、産業医が衛生管理者の巡視結果などの所定の情報を毎月受け取り、事業者の同意を得ている場合は、2か月に1回以上へ変更できます。
企業の都合や産業医の予定だけを理由に、自由に巡視頻度を減らすことはできません。
2か月に1回へ変更するための条件は何ですか?
産業医が、衛生管理者による巡視結果と、衛生委員会等で調査審議して提供すると定めた健康管理上の情報を、事業者から毎月1回以上受け取っていることが必要です。
そのうえで、産業医が巡視頻度を変更することについて事業者の同意を得ます。情報提供と同意の両方を確認しましょう。
衛生委員会の決議がなければ変更できませんか?
巡視頻度の変更そのものについて、衛生委員会の決議が一律の法定要件とされているわけではありません。ただし、産業医へ提供する健康管理上の情報は、衛生委員会等で調査審議して決めます。
実務上は、変更理由や情報提供方法、見直し時期も衛生委員会で審議し、議事録へ残すことが適切です。
職場巡視はオンラインで実施できますか?
産業医の法定の定期巡視は、産業医が事業場を訪問して実地で行う必要があります。写真、動画、オンライン中継だけで定期巡視を完結させることはできません。
映像や図面は、巡視前の情報共有や、巡視後の改善状況を確認するための補助資料として活用できます。
産業医が毎月訪問していれば巡視したことになりますか?
産業医が毎月事業場を訪問していても、衛生委員会への出席や従業員面談だけを行い、作業場を確認していなければ、職場巡視を実施したことにはなりません。
契約時間の中で、衛生委員会、面談、巡視へどの程度の時間を使うかを事前に計画しましょう。
衛生管理者が巡視していれば産業医の巡視は不要ですか?
衛生管理者と産業医の巡視は、別の法令上の業務です。衛生管理者が少なくとも毎週1回巡視していても、産業医の定期巡視が不要になるわけではありません。
衛生管理者の巡視結果を産業医へ共有し、産業医が医学的な観点から重点箇所を確認することで、両者の連携を強化できます。
嘱託産業医も職場巡視が必要ですか?
嘱託産業医であっても、法令上の巡視頻度は変わりません。原則として少なくとも毎月1回、条件を満たす場合は2か月に1回以上の実地巡視が必要です。
契約前に、訪問頻度、巡視時間、衛生委員会、従業員面談など、月々の業務配分を確認しましょう。
職場巡視に決められた所要時間はありますか?
法令では、1回の職場巡視について一律の所要時間は定められていません。必要な時間は、事業場の広さ、業種、作業場所、健康リスクによって異なります。
大規模な事業場では、毎回確認する共通項目を設けたうえで、対象エリアを月ごとに分けて巡視する方法があります。
50人未満の事業場でも職場巡視は必要ですか?
常時50人未満の事業場には、原則として産業医の選任義務がないため、産業医による定期巡視も同じ形では義務付けられていません。
ただし、企業には労働者の健康と安全を確保する責任があります。作業リスクが高い場合や健康問題が発生している場合は、外部の産業医や地域産業保健センターへの相談を検討しましょう。
巡視結果はどのように記録すればよいですか?
巡視日、対象場所、参加者、確認事項、産業医の指摘、改善策、担当者、期限を記録します。
衛生委員会の議事録や改善台帳と関連付け、次回巡視で対応状況を確認できるようにしましょう。写真を保存する場合は、従業員の個人情報や企業の機密情報が写り込まないよう注意します。
まとめ|職場巡視は原則月1回、条件を満たせば2か月に1回
産業医の職場巡視は、原則として少なくとも毎月1回必要です。ただし、衛生管理者の巡視結果などの所定の情報を産業医へ毎月提供し、事業者の同意を得ている場合は、2か月に1回以上へ変更できます。
定期巡視は実地で行い、オンラインだけで完結させることはできません。また、頻度を変更しても、衛生委員会、面談、健康診断後の対応など、ほかの産業医業務が減るわけではありません。
産業医クラウドでは、法令に沿った職場巡視を行える産業医の紹介から、巡視計画、衛生委員会、指摘後の改善管理まで一体的に相談できます。巡視頻度や産業医体制にお悩みの場合は、お問い合わせフォームからの相談、または資料請求をご検討ください。
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