産業医クラウド

従業員の悩みを打ち明けられやすい職場環境とは

産業医業務において大切にしていることの一つに、ストレスを抱えた従業員の方々との心の距離を縮めていく、という事があります。病気を診断し治療をする医師とは異なり、産業医の業務は、働く人々が心身ともに健やかに業務につく事ができるかを医学的立場から考える必要があります。

「うつ症状 」ひとつとっても、原因は様々です。長時間労働=高ストレス=うつと安易に結びつけてしまう事は危険ではないかなと考えております。

産業医面談を通じて、各々の悩みに寄り添っていくためには、まずは、信頼関係を築いていく必要があります。私の場合は、女性であり、自分自身が3人の子育て中という事もあり、女性の方から、育児、家庭と仕事との両立について、悩みを打ち明けられる事も増えてきました。

実際にあったケースです。二人の男の子をお持ちの30代女性。過重労働により適応障害、パニック障害との診断。精神科の主治医より休職をすすめられ、1年間休職をされていました。症状が落ち着いた事、また家計の負担もあり、そろそろ復職を希望。しかし、丸1年の休職の後に、最初からフルタイム勤務ができるか、すごく不安をお持ちでした。

育児と仕事の両立。そして、女性特有の身体的・精神的不調。最近多くみられるお悩みです。先ほどの例ですと、数回の産業医面談を通じて、主治医の受診日やお子様の保育園の送迎のストレス、通勤時間など、きめ細やかにお伺いし、できうる限り外的ストレスを軽減すべく、まずは軽勤務、時短勤務を産業医意見書として、会社側に提出、打診いたしました。同時に、彼女の心療内科の主治医の先生や臨床カウンセラーの方とも情報を共有し、彼女がゆっくり、しかし、しっかりと復職できるようすすめていきました。今ではすっかりフルタイムでご勤務なさっておられます。

もし、この方が、休職後、すぐに過重な業務を強いられていたら、また、ネガティブな結果になっていたのではないか、と思うと、彼女に産業医面談を促して下さった、雇用先の対応は賢明だったと思います。「働き方改革 」が本格化する今年度。産業医の役割もどんどん広がりを見せてきているように感じております。

働き方改革と共に意識改革

私自身、アメリカ留学中にカウンセリングの勉強をしておりました。日本においても、ようやくストレスチェックやストレスマネージメントが浸透してきました。そういった中で「働き方改革」の本格化。大切なのは、新たな国の対策に対して、ただ法律上順守すれば良いのではなく、労働者全員が「意識改革」を始めていかなければ、わが国の労働環境の根本的な解決にはならないと思います。

「産業医って何?」、また、産業医の存在そのものを知らない人は多いと思います。また、産業医に相談をしたところで、自分自身の勤務環境なんて変わらない思っている人も多いと思います。

産業医がどのような役割を担っており、産業医をどのように活用すれば、働きやすい環境を作り出す事ができるか、会社からも発信してもらえると嬉しいですね。