産業医の費用処理ガイド|勘定科目の選び方と仕訳の正解とは?

産業医を導入している企業、または導入を検討している企業にとって、「産業医費用をどの勘定科目で処理するべきか」は、現場で必ず迷う実務テーマです。

しかもこれは単なる“経理の話”ではなく、健康リスク(休職・労災・離職)をどれだけ構造的に抑えられているかという、経営の実行力と再現性に直結します。

法令対応だけでなく、健康経営の一環として産業医を“実働”させる企業が増える一方で、処理を曖昧にしたまま運用すると、税務調査・監査での説明負荷が増え、場合によっては否認リスクにもつながります。

本記事では、「業務委託」「福利厚生」「医師への報酬」といった実務で迷いやすい論点を、科目選定の判断軸 → 仕訳例 → 証跡(記録)設計 → 注意点の順で整理します。

“形式論”ではなく、経営に効く産業医活用が自然に伝わるように、実務に落ちる形でまとめます。

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産業医費用が発生する業務とは?費用の性質を理解する

産業医費用は「従業員個人の治療費」ではなく、企業が安全配慮義務を果たし、健康リスクを抑え、生産性を維持するための業務対価(=体制コスト)として発生します。
まずは、何に対してお金を払っているのか(=費用の性質)を言語化できる状態にすることが、科目選定の出発点です。
産業医業務は、典型的に以下のように多岐にわたります。

  • 健康診断結果の確認・就業判定(事後措置の設計)
  • 長時間労働者・高ストレス者・メンタル不調者への面談
  • 衛生委員会出席と、議題に対する医学的助言
  • 職場巡視と作業環境・勤務実態への改善提案
  • 復職可否・就業上の配慮に関する意見(意見書等)


ここで重要なのは、「産業医を契約している」だけでは企業価値は上がらない、という点です。
実際に成果が出る企業は、産業医を“点”で使うのではなく、面談 → 判定 → 配慮 → 職場改善 → 再評価のサイクルに組み込み、再現性のある運用に落としています。
この“運用設計”ができているほど、費用処理も自然に明確になります(=何の対価か説明できる)。

よく使われる勘定科目と判断基準の整理

産業医費用でよく検討される勘定科目は、主に「支払手数料」「業務委託費」「福利厚生費」「謝礼金・会議費」などです。
ポイントは、科目名よりも「支出目的と契約形態が一貫しているか」です。監査や税務では、ここが一番見られます。

勘定科目主な用途使用ケース
支払手数料個人への業務報酬(委託)産業医と個人契約で、継続的に産業医業務の提供を受ける場合
業務委託費法人・事業者への外部委託費法人(産業医事務所・紹介会社・委託事業者)との契約で、複数サービスを含む場合
福利厚生費従業員の健康維持・増進のための支出全社的な健康支援・相談体制の整備として位置付け、運用が「一般的・均等」で説明できる場合
謝礼金・会議費スポット対応・一時的支出講話・研修の単発登壇、委員会でのスポット参加など(継続契約ではない)


例えば、月1回訪問+面談+就業判定+衛生委員会対応など、継続的な産業医業務への対価であれば、個人契約は「支払手数料」、法人契約は「業務委託費」に整理されることが多いです。
一方で、産業医面談を「健康支援の仕組み(相談導線)」として設計し、利用が特定者に偏らず、社内制度として説明できるなら「福利厚生費」を検討する余地があります。
ただし、福利厚生費は“便利な逃げ道”にすると否認リスクが上がるため、運用実態(対象・周知・申込導線・記録)まで含めて整合させるのが鉄則です。

ケース別仕訳例で実務対応をイメージする

仕訳で一番大事なのは、数字そのものより説明できる状態(=摘要と証跡が揃っている)です。
成功している企業ほど、摘要とエビデンスが「運用のログ」になっています(経営としての改善が回る)。

例1:産業医個人との業務委託契約(月額5万円)

借方支払手数料 50,000円
貸方普通預金  50,000円

運用のコツ:摘要に「◯月分産業医業務委託(職場巡視・衛生委員会・面談)」など、何の対価かを残し、契約書・月次報告(または実施記録)に紐づけます。

例2:紹介業者経由で法人産業医チームと契約(ストレスチェックと面談含む)

借方業務委託費 120,000円
貸方未払金   120,000円


運用のコツ:委託範囲が広いほど、監査・税務では「中身」が見られます。
請求書の内訳、業務範囲、月次の提供物(集団分析・面談枠・委員会出席など)をパッケージとして説明できる形にしておくと強いです。

例3:健康教育の一環としてメンタルセミナー開催時の謝礼

借方会議費(または福利厚生費) 200,000円
貸方現金            200,000円


運用のコツ:単発施策ほど“やって終わり”になりがちです。
セミナー資料、参加者、実施目的(例:ラインケア強化)を残し、次の行動(面談導線や職場改善テーマ)につなげると、健康経営としての再現性が出ます。

税務・法務上の注意点とコンプライアンス視点

産業医費用は、扱いを誤ると「形式は整っているが実態が弱い」状態になりやすい領域です。以下は最低限のチェックポイントです。

  • 個人契約の場合の源泉徴収:医師への報酬は源泉徴収の対象になり得ます(税率・対象範囲は契約内容で変動するため、社内ルール化+顧問税理士確認が安全)。
  • 福利厚生費で処理する場合の整合性:利用対象が極端に限定されていたり、運用が恣意的だと説明が弱くなります。制度として周知され、運用が「一般的・均等」であることを説明できる状態に。
  • 証跡の保存:契約書/請求書/業務報告書/衛生委員会の出席記録/職場巡視記録/面談枠の提供記録などをセットで保管。
  • 消費税の扱い:産業医契約は「診療」ではなく業務委託として整理されることが多く、課税・非課税の判断は契約・請求内容で扱いが分かれます。ここも税理士と運用基準を合わせておくのが確実です。


“否認される会社”の共通点は、科目よりも「説明資料が断片的」「運用実態が追えない」ことです。
逆に言えば、科目が多少違っても、目的・契約・運用・証跡が一貫していれば、実務は強くなります。

健康経営施策との連動と処理体制の見直し

産業医費用は、うまく設計すると「コスト」ではなく、健康損失(休職・離職・労災・プレゼンティーズム)を減らす投資になります。
ここが“経営に効く”ポイントです。
成果が出る企業は、次のように人事と経理を分断しません。

  • 人事:産業医活用の目的(例:休職率低下/復職の安定化/長時間労働是正)を定義
  • 産業医:面談・判定・改善提案を「運用の型」に落とす
  • 経理:契約形態・支出目的・証跡をルール化し、監査・税務に耐える形にする


この三点がつながると、産業医の活動は単発の対応から、実行→改善→再現(繰り返せる仕組み)へ変わります。
そして費用処理も、「毎月の処理」ではなく、内部統制の一部(企業の信頼の土台)として整っていきます。

まとめ|費用処理も産業医制度の一部として捉える

産業医の活動は、企業の健康経営とリスクマネジメントを支える重要な仕組みです。

そして、その費用処理は単なる経理作業ではなく、制度の実行力を裏付ける“証跡設計”そのものです。

科目の正解は一つではありません。重要なのは、
「何の対価か」→「契約はどうなっているか」→「運用実態はどうか」→「証跡で追えるか」
が一貫していることです。

導入検討中の企業も、すでに導入済みの企業も、ここを一度見直すだけで、
産業医の活用が“名義”から“実働”へ、費用が“経費”から“投資”へ変わります。

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