企業と壁を作らない産業医が大切にしていることは、
コミュニケーション
コミュニケーション
企業と壁を作らない産業医が大切にしていることは、コミュニケーション
医師と企業との間には異なる文化があり、文化の違いの中でのコミュニケーションは困難だと感じ半ばあきらめている企業もあります。
当社が企業からのヒヤリングを重ねていく上で今の産業医にもっとも必要だと感じているスキルは「対話力」。
Avenirで産業医に従事している戸田医師と弊社代表の刀禰は「企業と産業医の壁を打ち破る」ことが、「心身ともに健全な組織」への第一歩であると考えています。
大学病院で呼吸器内科の専門医となり、現在産業医として活躍。
BESJ認定のマットピラティスインストラクターの資格保持者。
幼いころから見てきた「経営の後ろ姿」
刀禰「戸田先生はご実家が事業を営まれているのですよね」
戸田医師「はい。医師の家系ではなく静岡で父が事業を経営していました。
そんな父は私が小学生の頃に胃がんを患いまして。幸いにも早期発見していただいて、父は現在もとても健康に過ごしています。
その医師が今度は父の会社の産業医に。このころからなんとなく頭の片隅に医師という職業について意識するようになっていました。
当時すごく人気だった医師のドラマがありまして、医師という職業が気になっていたこともあってドラマを見ながらなんとなく洗脳されていったような気がします(笑)」
刀禰「あの外科医のドラマですよね。確かに面白かった。」
戸田医師「そうです(笑)。医師の世界に入り、当初は大学病院で呼吸器内科を専門に診療をしていました。大学病院勤務とともに自宅や施設への訪問診療も開始しました。大学病院とは違い、レントゲンや採血結果にその場で頼れないなかで、迅速に適切な判断をする必要がありました。大学病院では他科のことや専門外のことは専門の医師にアドバイスをもらえますが、訪問診療ではその場には自分しかいないのであらゆる分野を勉強する必要がありました。
訪問診療で一番多い症状のひとつが褥瘡(床ずれ)。褥瘡は本来皮膚科や形成外科の医師が得意とする分野の為、実際に看護師専門の褥瘡に関する勉強会に足を運んだり、専門分野外での知識やスキルを身につける為の活動は頻繁に行っていました。
訪問診療を続けている中で偶然知人から「産業医をやってみないか」という声をかけていただき、そこから産業医の世界に飛び込みました。当初は正直軽い気持ちで初めたのですが、医療の他の世界を見てみたいという思いもありお受けさせていただくことにしました。」
組織の健康を維持する予防医学の考えとは
戸田医師「産業医の場合、面談する対象が、患者ではないということが臨床医との大きな違いだと思います。病院には病気になった人が来ますが、産業医と面談を行う人は患者予備軍言われる人達。産業医の役割はその方たちが患者になってしまう前段階で注意を促すことです。」
刀禰「予防医学という概念ですね」
戸田医師「そうです。産業医は予防医学という考えを大切にしています。病院に来ている人が、仮に毎日コンビニごはんで不規則な生活を送っていても、ヘビースモーカーで咳がでていてもライフスタイルについて深く問診して改善してもらうところまで話す時間的余裕はあまりないですし、生活を観察するわけではなく基本は本人まかせ。たばこは控えてくださいということは言いますが、実際に控えているかどうかまで見ることはできません。
喫煙者の方も会社でのコミュニケーションだから吸っているという方もいますし、私たち医師も、なぜたばこをすっているかという背景まで理解して禁煙を進めるということもできません。
産業医は生活や企業側の仕事に一歩踏み込んだ内容を理解することができる為、面談させていただいた方の生活背景に応じたアドバイスをすることができるようになります。そのことで患者になってしまう前の対応をとることができるようになるのです」
刀禰「戸田先生も含め、産業医は予防医学に興味や関心のある人が多い印象をうけますね。予防医学の考えで、最近話題に上がっているストレス性疾患も重大な問題になることを未然に防げるのでしょうか?」
戸田医師「ある程度未然に防げると考えています。例えば、夜に眠れない、食欲がない、だるいといったことは、日常的に起こることだと思います。そんな日常の中に鬱の兆候が隠れていたりします。
私の場合、訪問診療の時からの経験も生きていて、その人の顔色や姿勢、問診の回答、生活背景から重大な病気が隠れていないかを推測しています。
産業医になりたての頃は、過剰に病院の受診を進めていたのですが経験を重ねるにつれて必要な場合、そうでない場合のジャッジがとれるようになってきました。
病気になる前に気づいてあげることで心身ともに楽になり、長く健康に働ける環境を作れると考えています。その為には産業医面談きちんと行っていきたいですね」
刀禰「でも、実際産業医との面談って忙しいのに面倒だと感じることも多いですよね。僕もかつてUFJにいたときに呼ばれたことありましたけど、忙しいから行かないと断っていたことあります(笑)」
戸田医師「そうなんです。それもよく聞く意見だったりします。忙しい時間を割いて産業医面談に行ったのにて何もなく終わりというケースです」
刀禰「そうそう、あんまり働きすぎないでというアドバイスのみの面談」
戸田医師「それは働く側もわかっていますよね。そこで、働きすぎるなといわれる面談はきてくださった人にとって何の意味もないかなと」
刀禰「戸田先生は面談の際、工夫されていることはあるのでしょうか」
戸田医師「私の場合、ストレッチを教えたりと血圧の測定をしています。特に仕事中は血圧が高くなる傾向にあります。血圧は、不眠やストレスなどでも高くなったりしますので、もしこのまま血圧が高くなる状態が続くとどういった病気のリスクがあるかということをお伝えして生活のアドバイスをすることもあります。
働きすぎると何が悪いのかという部分まで伝えることで意識を変えることができます。
そうすると言われた方もちょっと生活見直し見ようかなという考えになりやすいのではないでしょうか。
病気になる前に、どうなると病気になってしまうのかということを事前に教えてあげる仕組みはすごく大切です。
また、私はピラティスのインストラクター資格をもっていることもあって仕事の合間にできるストレッチを教えています。忙しい時間を割いて面談に来てくれたのですから、少しでも気持ちよくリフレッシュして帰ってほしいと思っていて。」
刀禰「戸田先生はそのような工夫をされているのですね。産業医面談ってなんのためにあるの?という人も少なくないと思うのです。特に長時間面談は。」
戸田医師「それもあると思います。企業側も産業医の役割を社員に伝える努力は必要かなと。産業医広報誌や社内メールでもいいので広報していただけると産業医の役割がもっと生かせると思います。」
産業医と企業の間に壁は必要ない
刀禰「僕は初めて戸田先生にお会いした時から産業医に向いているなと思っていました。予防医学に関心を持っているということもですが、すごく話しやすい。そして企業文化を理解する力がある。やはりお父様の影響もあるのかな」
戸田医師「ありがとうございます(笑)。そうですね、父の姿を見ていたということもあるかもしれません。コミュニケーションに関しては実はすごく気をつかっていたりします。
中にはすごくきついものいいをされる先生もいらっしゃるのですが、そうなるとなかなか相談したり話しづらいですよね。産業医にとってコミュニケーションはとても大事なことなので」
刀禰「戸田先生のキャッチコピーは壁を作らない産業医ですね」
戸田医師「ありがとうございます。実は私、面談に来てくださった方と山登りをしたこともあって(笑)」
刀禰「山登りですか!?」
戸田医師「一つの企業で産業医をしていると何度も訪れてくださる方がいらっしゃいます。その中の一人に山登りが趣味ということで来るたびに山の写真を見せてくださっていて。その方の奥様とご友人が一緒に山に登るからとぜひ一緒にと誘っていただきました。
山頂ではパスタを作って食べさせて頂きまして。とても美味しかったです(笑)」
刀禰「面談者と壁のないコミュニケーションはいいですね」
戸田医師「相談しやすい環境づくりはとても大切。特に女性の方はセンシティブな相談も多いのでコミュニケーションがとれないとなかなか話しづらいですよね。女性は、やはり女性特有の婦人科系のトラブル、生理痛が重いなど男性には話しづらいことを相談してくださることも多いです。重い生理痛の中には病気が隠れていることもあり、産業医として気づいてあげることも仕事だと思っています。
私自身も婦人科系の疾患を抱えていたこともあり、私の経験も交えてアドバイスでき、同じ女性としてお話しができますね」
刀禰「産業医が面談者の生活に関わることで予防できる疾患がある、その為には面談者も産業医を理解し、産業医も面談者を理解するためのコミュニケーションが必要ということですね」
戸田医師「その通りです。面談を受ける方が「産業医面談なんて面倒」と思われないよう帰っていただきたいなと思います。その為に、産業医は努力を怠ってはいけないですね」