専属産業医とは?専任・嘱託産業医との違いや選任条件を徹底解説!

目次

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専属産業医とは

産業医は医学の専門的な知識を活用して、専門家としての立場から従業員の健康管理を行います。

その中でも専属産業医とは、特定の企業、事業場に常勤に近い形で関与し、従業員の健康管理を“日常運用”として回していく産業医です。
嘱託産業医(非常勤・定期訪問中心)よりも、職場の実態把握や早期対応がしやすい点が特徴です。

一般的に「週3日以上・1日3時間以上」などの一定以上の稼働を前提にした勤務形態を取りながら、その中で産業医業務に携わっていきます。

専門産業医はその企業の専属の産業医として働くため、9時から17時などの定時制での勤務です。

工場など、職場によっては早朝や深夜の勤務も考えられます。

※勤務時間の考え方は求人・契約設計で幅があるため、社内課題(有害業務・深夜業・メンタル不調対応など)に合わせて設計します。

参考:【医師監修】産業医とは?医師との違い、仕事内容をわかりやすく解説

専属産業医の業務・職務内容

専属産業医は、産業医としてその事業場における「産業医の業務」に従事する医師のことです。名称として“専属”という言葉がついているものの、専属産業医には非専属の産業医を兼務することが認められています。

ただし、専属産業医の所属する事業場と非専属の事業場とが、「地理的関係が密接であること」、「労働衛生管理が相互に密接し関連して行われること」、「一体として産業保健活動を行うことが効率的であること」、など一定の条件が付けられています。

産業医の業務内容は先ほども述べたように、医学的な立場から労働者に指導や助言をする医師のことであり、専属か嘱託かで、産業医の“業務内容”が大きく変わるわけではありません。違いは頻度と深さです。

産業医の基本業務は、健康診断結果に基づく就業判定や事後措置、長時間労働者への面接指導、ストレスチェック後の高ストレス者面談、職場巡視、衛生委員会への助言、作業環境・作業管理への医学的助言などです。

専属の場合は、①現場の変化(部署異動・繁忙・離職兆候)を掴みやすい、②人事・管理職への助言が“継続支援”になる、③再発予防(復職後フォロー)まで運用設計できる、という強みがあります。

専属産業医は、月に1~数回企業訪問をした上で産業医業務を実施する嘱託産業医と異なり、企業に専属的に勤務する勤務形態を取ります。
産業医に求められる基礎的な業務内容の7つと応用的な業務内容を4つ、以下画像よりご紹介します。

産業医の業務内容について詳しくは以下記事より解説しておりますので、より詳細な業務内容を知りたい方はご参考ください。
参照:【医師監修】産業医とは?医師との違いや仕事内容・役割・選び方を完全解説!

専属産業医の選任条件・基準

専属産業医が必要になる代表的な基準は、次の2系統です。

  • 常時使用する労働者が一定規模以上(例:1,000人以上、さらに規模が大きい場合は複数名)
  • 有害業務(特定業務)に常時従事する労働者が一定数以上(代表例:深夜業を含む業務 など)

1,000人以上の事業場の場合、専属産業医の選任が義務となります。

医療先進国でもあるドイツやフランスでは、事業場の規模に関わらず、産業医を設置する義務が定められています。

一方、日本では事業場の規模によって設置義務の有無が異なります。また、常時使用する労働者の数によって設置するべき産業医の選任形態や人数が異なります。

【従業員1,000名以上】専属産業医が1人以上必要である

常時使用する労働者が1,000人以上の事業場では、法令上「専属産業医」を選任する枠組みが前提になります。まずは“本社一括”ではなく、事業場単位で人数を数え、対象事業場を確定させるのが実務の第一歩です(派遣・出向・短時間の扱いは社労士や顧問弁護士と定義を揃えると安全です)。

【従業員3,000名以上】専属産業医が2人以上必要である

規模が大きい場合、産業医業務量も急増します。特に、面接指導(長時間労働・高ストレス)や復職者フォローが重なると、1名体制では遅延が起きやすいです。2名体制にすると、面談担当と職場改善・衛生委員会担当に役割分担でき、対応品質が安定します。

【有害業務従事者500名以上】専属産業医が必要である

有害業務(特定業務)に常時従事する労働者が一定数以上の事業場では、嘱託ではなく専属が求められる枠組みになります。特定業務には「深夜業を含む業務」も含まれるため、夜勤者が多い業態は要注意です。

労働者の人数によって選任の数や選任形態に違いがあるのは、労働者が多くなるほど、産業医の業務量が増えるためです。

メンタルヘルス不調者や、そのリスクがある労働者を一人でも見過ごさないためには、事業場の規模に合わせた産業医の数と形態が必要になります。このことからも、「有害業務」に従事している労働者が常時500人以上の事業場においては、嘱託ではなく専属産業医の選任が義務とされているのです。

労働安全衛生法規則第13条1項には、「専属産業医が必要な業務(特定業務)」として、以下の14の業務が明記されています。

1多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
2多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
3ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
4土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
5異常気圧下における業務
6さく岩機、鋲(びよう)打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
7重量物の取扱い等重激な業務
8ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
9坑内における業務
10深夜業を含む業務
11水銀、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸 その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
12鉛、水銀、クロム、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
13病原体によって汚染のおそれが著しい業務
14その他厚生労働大臣が定める業務


参照:産業医の関係法令
産業医の中でも、専属産業医を選任している企業は全体の3%程度であるといわれています

専属産業医を選任する際のポイント

専属産業医は「人」そのものが成果を左右します。

専属産業医を選ぶ際には、選任前にどのような専属産業医を選ぶべきかについて事前に把握しておき、専属産業医に求める人物像や何を成果とするか(例:休職の長期化を減らす、離職を抑える、面談の待ちを解消する)を決め、評価軸を言語化しておくとミスマッチが減ります。

これから専属産業医の選び方について見ていきましょう。

幅広いスキルを持っているか

産業保健は臨床の知識だけでなく、労働衛生(作業環境・作業管理)、メンタル対応、復職判定、管理職への助言、衛生委員会運営など、守備範囲が広いものです。

専属産業医にまず求められるのは、幅広いスキルを持っていることです。

画一的なスキルとなってしまうと、偏った判断をしてしまうことが懸念されるため、広い視野を持ち、様々な可能性を考慮した上で適切な発案や指導をすることが求められます。当然ですが、医師としての経験が長い産業医に対してだけでなく、幅広いスキルを有する産業医に対してもそれに対等な報酬を支払うことが大切です。

幅広いスキルのある産業医であれば、労働者も面談をしやすいだけでなく、より職場改善に落とし込んだ適切な助言や指導ができる実務に強い選任をすることができるでしょう。

事業内容に関する知識を持っているか

産業医には、事業所の事業内容を把握し、知識を持っていることも求められます。
事業内容を把握していなければ、いくら面談指導をしたところで机上の空論となる可能性も発生するため、事業内容に関する知識を持つことが求められます。

産業医にとって初めて足を踏み入れる事業内容の場合でも、事業内容について把握しその上で適切な指導や助言をする必要があります。また、事業内容に関する知識があればそれだけ、事業所巡視や面談も効率的にできるでしょう。

製造・物流・コールセンター・ITなど、リスクは業態で変わります。

候補医師には、①主要職種の1日の流れ、②繁忙期、③深夜業の比率、④安全衛生上の重点課題を事前共有し、理解→提案まで出せるかを面談で確認しましょう。

組織人として振る舞えるか

産業医を選任・設置する際に、あってはならないのが、「名義貸し産業医」の選任・設置です。

「名義貸し産業医」とは、産業医として選任・設置されているにも関わらず、適切な産業医業務を実施しない産業医のことです。実際に業務に入らないと見えてこない部分も多いため、特に産業医探しのプロではない我々が「名義貸し産業医」かどうかを見抜くことは至難の業と言えるでしょう。名義貸し産業医は社会人としてあってはならないことです。産業医も事業所の一員となるため、事業所の組織人として振る舞えるかどうかが大切になってきます。

組織に所属している人間の振る舞いは、そこの組織の印象にもつながるため、とても重要ですが、産業医にも同様のことが言えます。産業医の探し方は様々ですが、産業医紹介サービスや産業医事務所、検診期間や地域の医師会を介して産業医を紹介してもらうことは、産業医の本質が紹介組織の印象にもつながります。

常識を持っている産業医であれば、紹介してくれた機関のイメージダウンとならないよう、組織人として常識的に振る舞い、産業医としてふさわしい業務をしていくのではないでしょうか?そのためにも選任前に、組織人として常識的に振る舞える産業医を候補としておくことが大切です。

専属産業医は「社内の一員」として信頼されることが重要です。守秘・中立性を保ちつつ、人事や管理職に伝えるべきことを整理して伝えられる医師だと、面談が形骸化しません。見極めとして、報告書のサンプル(匿名化)や、衛生委員会での説明スタイルを確認すると失敗しにくいです。

専属産業医の選任なら「産業医クラウド」

産業医クラウドとは?

産業医クラウドは、専属産業医の紹介にとどまらず、選任後に実務として機能する産業保健体制を構築・定着させることを目的とした支援サービスです。

嘱託産業医から専属産業医へ切り替える際、多くの企業が直面するのは「業務量が一気に増えた」「面談や巡視は増えたが整理できない」「産業医に頼りきりで属人化した」といった運用面の課題です。産業医クラウドでは、制度理解だけで終わらせず、日常業務として回る状態まで落とし込む設計を重視しています。

産業医クラウドの3つの強み

スコアリング&教育された産業医を提供

専属産業医は、医学的知識や資格以上に「企業との関わり方」で成果が変わります。

産業医クラウドでは、報告の分かりやすさ、現場理解力、関係部署との調整力といった企業対応力を含めた観点で産業医を評価・選定。企業の規模や業態、専属化の背景に応じて、実務に適応しやすい産業医を紹介できる点が特長です。

全国19,000事業所以上の選任と運用実績

専属産業医の導入では、衛生委員会の進め方、面談フロー、帳票管理など、実務設計が成否を分けます。

産業医クラウドでは導入社数2,900以上、全国19,000事業所以上の支援実績をもとに、立ち上げ初期から安定運用までを見据えた設計ノウハウを活用できるため、複数拠点・複数業態の企業でも混乱を最小限に抑えやすくなります。

クラウドサービス&専門スタッフによる支援

専属産業医を配置しても、業務が集中すれば面談待ちや対応漏れが発生します。
産業医クラウドでは、産業医に加えて産業保健師や専門スタッフ、クラウド上の管理仕組みを組み合わせることで、記録・進捗・関係者間連携を可視化。「人に依存しすぎない産業保健体制」を構築できる点が強みです。

産業医クラウドの料金プラン

料金プランは企業の状況に応じて個別にご提案いたします。
主な判断軸は、以下のとおりです。

  • 専属産業医の稼働日数・関与範囲
  • 対象となる事業場数
  • 有害業務や高ストレス者対応の有無
  • 産業保健師・運用代行など周辺支援の必要性

重要なのは、「専属産業医を何日入れるか」ではなく、「月次で発生している業務量に対して適切か」という視点です。

面談件数、職場巡視、衛生委員会対応、個別相談などを整理したうえで体制を組むことで、過剰投資や人手不足を防ぎ、無理のない専属体制を構築しやすくなります。

専属産業医と嘱託産業医の違い

簡単に説明すると、嘱託産業医は常勤ではなく、非常勤形態で勤務を実施する産業医のことです。通常開業医や勤務医をしている医師が、産業医業務を実施します。

一方で専属産業医とは、事業所に専属した雇用形態となるため、企業に専属した勤務となります。

専属産業医と嘱託産業医の最大の違いは、関与の深さと運用の位置づけにあります。
嘱託産業医は、月1回などの定期訪問を通じて外部から企業を支える存在であり、主に助言・確認・報告が中心となります。一方、専属産業医は社内の一員として日常的に関与し、面談対応、職場改善、関係部署との調整などを含めて、産業保健を業務として回していく役割を担います。

法令上も、常時使用する労働者数が一定規模を超えると、専属産業医の選任が求められますが、実務上は「従業員数」だけでなく、「面談件数の多さ」「メンタルヘルス対応の頻度」「複数事業場の有無」などによって、嘱託では対応しきれなくなるケースが少なくありません。
そのため、制度上の要件だけでなく、日常運用が回っているかどうかという視点で、専属か嘱託かを判断することが重要です。

以下の表に嘱託産業医と専属産業医の違いをまとめましたので、ご確認ください。

 嘱託産業医専属産業医
勤務形態非常勤常勤
労働者数50人~999人1,000人以上
勤務時間月1回以上の訪問週3日以上、1日3時間以上

従業員人数

専属産業医と嘱託産業医の選任は、事業場ごとの常時使用する労働者数によって、法令上の取り扱いが明確に区分されています。

まず、常時50人以上の労働者がいる事業場では、産業医の選任自体が義務となり、この規模では一般的に嘱託産業医を選任するケースが多く見られます。

一方で、常時1,000人以上の労働者がいる事業場、または有害業務に常時500人以上が従事する事業場については、専属産業医の選任が義務付けられています。これは、定期訪問型の嘱託産業医では対応しきれないほど、日常的な健康管理・面談・職場改善対応が必要になるためです。

ただし、実務上は法令ラインに達していなくても、

  • 高ストレス者や長時間労働者が多い
  • メンタルヘルス対応が頻発している
  • 複数事業場をまたいだ統一運用が求められる

といった状況では、嘱託産業医では運用が回らず、専属体制を検討する企業も少なくありません。


そのため、選任形態の判断においては、単に人数要件を見るだけでなく、実際の業務量や産業保健対応の頻度を踏まえて検討することが重要です。

契約形態

嘱託産業医と専属産業医では、契約の考え方そのものが大きく異なります。
嘱託産業医の場合、一般的には業務委託契約として締結され、月1回や隔月などの定期訪問、あらかじめ決められた面談枠・巡視回数を前提に業務内容が設計されます。限られた時間の中で、助言や確認を行う「外部専門家」としての位置づけが中心となります。

一方、専属産業医は、雇用契約またはそれに近い準委任・準雇用的な形態で契約されるケースが多く、常勤または準常勤として社内に継続的に関与します。衛生委員会や社内会議への参加、日常的な健康相談の窓口対応、関係部署との調整など、産業保健業務を社内の仕組みとして回す前提で設計しやすい点が特徴です。

ただし、重要なのは契約形態そのものではありません。


嘱託・専属いずれの場合でも、

  • 守秘義務が適切に担保されているか
  • 面談記録や対応履歴が整理・管理されているか
  • 人事・上長・産業保健スタッフとの連携導線が明確か

といった運用設計ができていなければ、実務は滞ります。

「どの契約形態なら、日常の産業保健業務が無理なく回るか」という視点で検討することが、専属化・嘱託継続いずれの場合でも重要です。

報酬相場

専属産業医の報酬は、「週に何日勤務するか」を軸に設計されるのが一般的で、年間報酬は勤務日数に比例して増加する傾向があります。

目安としては、週1日勤務あたり年間300〜400万円程度が基準とされ、週5日のフル勤務であれば年間1,500〜2,000万円前後になるケースもあります。

例えば、
週1日勤務:年間300〜400万円程度
週4日勤務:年間1,200〜1,500万円程度
といった水準が一つの目安です。

この金額はあくまで相場であり、実際には産業医個人の経験年数や専門性によって変動します。

産業医としてのキャリア年数別に見ると、
医師免許取得後3〜10年程度:週4日勤務で700〜1,000万円前後
11〜20年程度:1,000〜1,400万円前後
21年以上:1,400〜1,600万円前後
が一般的なレンジとして挙げられることが多く、経験年数が長いほど報酬も高くなる傾向があります。

また、有害業務を扱う事業場や、メンタルヘルス対応が中心となるケース、精神科医など専門性の高い医師を求める場合、あるいは英語対応など付加要件がある場合には、通常相場より報酬が上乗せされることが一般的です。

このように、専属産業医の報酬は嘱託産業医と比べて高額になりやすい一方、日常的な対応力や社内理解の深さというメリットがあります。

経験が長ければそれだけ場慣れしているため、安心して依頼ができる半面、料金が割高になります。どちらを取るかは雇い側の判断になってくるでしょう。「経験の浅い医師でコストを抑えるか」「経験豊富な医師で安定運用を重視するか」は、企業のリスク許容度や産業保健体制の成熟度に応じて判断することが重要です。

専属産業医の専任産業医の違い

専属産業医と専任産業医は、言葉が似ているため混同されがちですが、指している概念が異なります。

まず「専属」は、産業医がどのような勤務形態・関与のしかたで企業に関わるかを示す言葉です。常勤またはそれに近い形で社内に継続的に関与し、日常的な健康相談、面談対応、会議参加などを含めて、産業保健を業務として回す体制を指す場合に使われます。いわば「体制・稼働の設計」を表す言葉です。

一方で「専任」は、特定の職務について任命され、担当者として位置づけられることを意味する言葉として用いられることが多く、法令や社内規程、届出の文脈で使われます。産業医についても、労働安全衛生法に基づき「選任(任命)」するという手続きがあり、これは勤務形態が専属か嘱託かにかかわらず必要となるものです。

実務の現場では、「専属(雇用・稼働の考え方)」と「選任・専任(法令上の任命・届出)」が混ざって語られやすく、社内資料や稟議書で誤解を生む原因になることがあります。

そのため、社内文書では以下のように見出しや用語を明確に分けて記載することで、監査や外部チェックにも耐えやすい整理になります。

選任・専任法令に基づく任命・届出の話
専属産業医体制や勤務形態の話

専属産業医を探す方法

専属産業医の探し方はいくつかありますが、嘱託産業医と比べて対応できる医師の母数が少ない点が大きな特徴です。そのため、「見つかればよい」という発想ではなく、
①候補を集める → ②適性を見極める → ③運用まで設計する
という一連の流れをセットで考えることが、専属産業医選任を成功させるポイントになります。

以下では、代表的な4つの探し方と、それぞれの特徴・向いているケースを整理します。

産業医紹介サービスから紹介を受ける

専属産業医を探す方法として、最も現実的かつスピード感があるのが産業医紹介サービスの活用です。専属対応が可能な医師を一定数把握しているため、短期間で複数候補を比較検討しやすい点が強みです。

一方で、条件提示が曖昧なまま依頼すると、
「資格は満たしているが、企業対応力が合わない」
「メンタル対応や委員会運営の温度感が違う」
といったミスマッチが起こりやすくなります。

そのため、業態経験、メンタルヘルス対応の比重、衛生委員会で求める助言レベル、報告書の品質など、評価軸を事前に明確にして依頼することが重要です。

医師会から紹介を受ける

医師会を通じた紹介は、地域に根ざした信頼性の高いネットワークを活用できる方法です。地域事情を理解した医師と出会える可能性がある一方で、専属産業医として継続的な稼働が可能な医師が必ず見つかるとは限らない点には注意が必要です。

特に、選任期限や社内決裁スケジュールが決まっている場合、医師会ルートのみに依存すると時間がかかるケースもあります。そのため、医師会への相談と並行して、紹介サービスなど別ルートを併用することが実務上は現実的です。

医療機関から紹介を受ける

精神科・心療内科など、専門性を重視したい場合に有効なのが医療機関からの紹介です。メンタルヘルス対応や有害業務に関する医学的知見を期待しやすい反面、産業医としての企業対応経験には個人差があります。

そのため、紹介を受ける際には、

  • 企業での産業医経験の有無
  • 人事・管理職との調整経験
  • 衛生委員会や就業判定への関与実績

など、「企業実務を理解しているか」という視点での確認が欠かせません。

健診期間から紹介を受ける

健診機関からの紹介は、健診後の事後措置や就業判定と連携しやすい点が特長です。健康診断データを起点とした産業保健運用を重視する企業にとっては、スムーズな連携が期待できます。

ただし、専属産業医体制を構築する場合は、医師個人の紹介にとどまらず、

  • 産業保健師の関与
  • 面談や対応フローの設計
  • 記録・進捗管理の仕組み

といった産業保健体制全体をどこまで支援できるかを確認することが重要です。

専属産業医のメリット

専属産業医の最大のメリットは、従業員の健康課題を「単発の対応(点)」ではなく、継続的なプロセス(線)として支援できる点にあります。

不調の早期発見から介入、休職判断、復職支援、復職後フォロー、再発予防までを一貫して設計できるため、産業保健が“場当たり的な対応”になりにくく、企業としての健康管理の質を底上げしやすくなります。

離職率の改善が期待できる

専属産業医が日常的に関与することで、不調の兆候を早期に把握しやすくなり、休職に至る前の対応や、休職後の復職支援がスムーズになります。
結果として、長期休職や離職、復職後の再離脱を抑制しやすくなり、人材定着の観点でも効果が期待できます。

実務上は、

  • 休職日数
  • 復職後の定着率
  • 面談待ち日数

などの指標をあらかじめ設定しておくことで、専属産業医導入の効果を定量的に評価しやすくなります。

事業所専属で勤務している

専属産業医は基本的に労働者たちと同様に、事業所内に勤務をしています。
そのため、ほとんどの時間事業所にいる形になるので、部署ごとの業務負荷の違いや、管理職ごとの運用の癖、繁忙期特有のリスクなどを把握しやすくなります。

労働者たちの状況や変化にも気付きやすいので、まさに事業所で勤務する労働者たちにとって支えとなる存在になります。

同時に事業所にとっても、専属産業医は時にパイプ役となることができる、まさになくてはならない存在です。

専属産業医は、特定の事業所に継続して関与するため、その結果、職場巡視や衛生委員会が形式的な確認に終わらず、現場実態に即した改善提案につながりやすい点が大きなメリットです。

労働者の健康管理ができる

専属産業医は常に労働者たちと近い存在であるため、本当の意味で労働者たちの健康管理や指導をすることができるでしょう。日常的に労働者の様子を見守ることが可能なため、メンタルヘルス不調者の発見・支援や不適切な職場環境を改善するための提案といった業務をスムーズに実行することができます。

同じ事業所にいるため、時々面談するのみでは気が付きにくい労働者たちの性格や趣味嗜好などにも気が付く可能性が高いので、それを基にした健康指導を行なうことも可能かもしれません。

常勤に近い関与となることで、従業員にとって産業医への相談ハードルが下がり、早い段階での面談や相談につながりやすくなります。

特にメンタルヘルス領域では、「不調が深刻化する前につながれるかどうか」が重要であり、日常的に接点を持てる専属体制は大きな強みとなります。

専門知識が備わっている

有害物質を取り扱う事業に携わる労働者たちにとって、産業医はなければならない存在です。

有害業務や深夜業、長時間労働など、リスクの高い就業形態がある事業場では、医学的判断と職場改善をセットで行う必要があります。

専属産業医であれば、特定業務該当性の判断、就業制限の設計、現場改善までを一体的に検討できるため、運用が属人化しにくく、安定しやすい点がメリットです。

経営視点を持ったサポートができる

専属産業医は、健康施策を単なるコストではなく、生産性向上・安全確保・人材定着への投資として捉えた提案を行いやすくなります。

人事施策(配置、評価、教育)と産業保健が連動することで、経営課題と健康管理が分断されにくくなり、組織全体を見据えた支援ができる点が専属体制ならではの強みです。

日常的に企業に属する専属産業医であれば、単なる健康管理だけでなく、健康経営からの観点でメンタルヘルスケアを実行しやすいと言えます。

「どのように取り組めば、健康管理によって労働者の生産性と企業の利益向上につなげられるか」という視点を持てるのです。

嘱託産業医の場合は、月1回など定期的な訪問に限られるため、経営的な視点からのアプローチは困難といえます。

専属産業医のデメリット

人間性や産業医としての知識・スキルが不足していない限り、専属産業医を選任することそのものにデメリットはありません。

ただし、「自社にマッチした専属産業医を探す難しさ」はデメリットと言えるかもしれません。日本で産業医として活動している医師の多くは、本業の傍ら産業医を兼務する嘱託産業医であるため、企業にほぼ常勤として属する専属産業医の数は、少ないのが実情です。質が高く自社にマッチする専属産業医を選任するには、外部の紹介会社やコンサルティングサービスに依頼することが重要なポイントとなります。

報酬が高い

専属産業医には勤務日数に応じた報酬を支払う必要がありますが、企業と直接契約をしている分、どうしてもその報酬額は高くなってしまいます。

稼働が増える分、費用は上がりやすいです。その代わり、対応遅延(面談待ち)や復職運用の混乱が減ると、間接コストの削減に繋がることも多いため、効果指標で判断するのが実務的です。

ただし、専属産業医は労働者たちの健康管理に欠かせない大切な存在でもあるので、社員の健康を守るためにも必要な経費であると言えるでしょう。

相性が合わない場合がある

産業医も人間なので、どうしても相性が出てきてしまいます。専属は距離が近い分、相性問題が顕在化しやすいです。

そのため、産業医になかなか相談できない社員が出てくることも考えられます。特に専属産業医の場合、直接契約した産業医を安易に替えることも困難でしょう。導入前に、面談の進め方、守秘と情報共有の境界、管理職への助言スタイルをすり合わせ、試用期間・レビュー設計を用意すると安全です。

そこで大きなポイントとなるのが、労働者に寄り添う姿勢が取れるかどうかという点です。そのため専属産業医には、高いコミュニケーション能力が必要になります。

専属産業医を設置する際は、いかに高いヒューマンスキルやコミュニケーション能力を持っているか見極めることも大切なポイントになってくるでしょう。

苦手分野への対応が困難

産業医には、どうしても苦手分野も存在します。メンタル・有害業務・女性健康・英語対応など、専門領域は偏りが出ます。また、女性労働者の場合は男性産業医に相談しにくい場合も十分考えられます。その他、身近な存在だからこそ、相談しにくいテーマもあるかもしれません。

対策として、2人以上の専属産業医の選任が必要な企業の場合は男性産業医と女性産業医を1名ずつ選任する方法もありますが、産業医が1名しかいない場合はそれが困難です。

そのため、女性労働者が多い企業にはあらかじめ女性産業医を選任する、自社の産業医では対応困難な課題に対応できる産業医を新たに選任しておくなどを考慮する、また外部専門医との連携、産業保健師との役割分担、セカンドオピニオン導線を事前設計しておくことも良いでしょう。

専属産業医が嘱託産業医を兼任する場合の留意点

専属産業医は、一定の条件を満たす場合に限り、他事業場の嘱託産業医を兼任することが可能です。ただし、兼任は無制限に認められるものではなく、「実質的に産業保健活動が担保できているか」が判断基準となります。

代表的な要件としては、事業場同士が地理的に近接していること、業種や業務内容が類似しており、労働衛生管理を一体的に行う方が合理的であることなどが挙げられます。形式的に「同一グループ企業だから」という理由だけで兼任させると、実態が伴わず、指導対象となるリスクがあります。

実務上は、次の3点を事前に整理し、契約と運用に明確に落とし込むことが重要です。

①移動時間と稼働バランス移動に時間を要する場合、面談枠や巡視頻度が圧迫され、結果として本来の専属業務が形骸化する恐れがあります。勤務日数や訪問頻度は、移動時間を含めて現実的に設計する必要があります。
②衛生委員会への出席や職場巡視兼任先であっても、衛生委員会への関与や職場巡視が不十分であれば、名義貸しと見なされるリスクが高まります。どの事業場で、どの頻度で関与するのかを明文化しておくことが不可欠です。
③緊急時対応の体制自殺念慮が疑われるケース、重大事故、重篤な健康事案が発生した際に、誰がどのように初動対応を行うのかを決めておかなければ、対応遅延や責任の所在不明につながります。専属産業医本人だけに依存せず、人事・産業保健スタッフとの連携体制まで含めて整理することが重要です。

専属産業医の兼任は、コスト調整の手段として検討されがちですが、実態が伴わない兼任は、かえってリスクを高める結果になりかねません。法令要件と実務運用の両面から、無理のない体制設計を行うことが、企業側に求められます。

専属産業医に関するよくある質問

深夜業も産業医の専属義務の要件に該当しますか?

該当する場合があります。
専属産業医の選任が必要となるかを判断する際に参照される「特定業務(有害業務)」には、深夜業を含む業務が含まれています。そのため、深夜帯に継続して就労する労働者が多い事業場では、人数要件と組み合わさることで専属産業医の選任が必要となるケースがあります。

特に、常時使用する労働者が500人以上で、深夜業を含む特定業務に該当する場合は、専属産業医の選任が義務となる点に注意が必要です。単に「夜勤があるかどうか」ではなく、対象となる業務内容と従業員規模をあわせて整理することが、判断ミスを防ぐポイントになります。

専属産業医は掛け持ちできますか?

可能ですが、条件付きで考えるのが安全です。
専属産業医であっても、一定の要件を満たす場合には他の事業場を兼務できるとされています。ただし、無制限に掛け持ちできるわけではなく、事業場同士の地理的関係や、産業保健活動を一体的・効率的に行えるかどうかが重要な判断軸になります。

実務上は、「兼務した場合でも職場巡視、面談、衛生委員会への関与が形骸化しないか」を事前に検証することが不可欠です。年間の稼働計画や移動時間を含めた運用表を作成し、対応漏れや遅延が生じない体制を確保できるかを確認したうえで判断することが望まれます。

専属産業医の年収はいくらですか?

専属産業医の年収は、勤務日数、地域、求める専門性、求人市場の状況によって幅があります。

公開されている求人情報や調査データを見ると、常勤または常勤に近い稼働を前提とした年収相場が示されており、週の勤務日数が増えるほど報酬水準も高くなる傾向があります。

企業側としては、年収額だけで判断するのではなく、

  • 面談待ちの解消
  • 休職・復職運用の安定
  • 職場改善提案の実効性

といった実務上の成果を含めた投資対効果で考えることが重要です。

専属産業医は単なるコストではなく、産業保健体制全体の質を左右する存在であるため、役割と期待値を明確にしたうえで報酬設計を行うことが、導入後の満足度につながります。

【まとめ】専属産業医とは

「産業医が必要な理由」の項目でもご説明した通り、質の高い専属産業医が所属している企業・事業場ほど、労働者に様々な利益がもたらされます。

反対に、質が低く、自社に合わない産業医を選んでしまうと、「労働者と経営層の関係悪化」、「労働者の働く意欲や生産性の低下」といったリスクにつながりかねません。

専属で所属する産業医の「産業医」としての質は、企業・事業場の経営を左右しかねない、非常に重要な要素になり得ます。労働者に対してプラスの作用をもたらすためにも、しっかりとした産業医を選びましょう。

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