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ストレスチェックとは?判定基準や実施の流れを解説

2022.06.27ストレスチェック

労働安全衛生法の改正により、事業者の規模(従業員数)によってストレスチェックが義務化されています。

本記事では、ストレスチェック制度の基本知識や罰則、判定基準、実施の流れなどをご説明します。
また、ストレスチェックを外部委託した際の費用や助成金についても取り上げました。

ストレスチェックについて理解を深めたい場合は、ぜひ参考にしてください。

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ストレスチェックとは

ストレスチェックとは、自身のストレスレベルを把握するための簡易的な検査です。
労働者が選択方式の質問票に回答し、回答結果を収集・分析することで自身のストレス状態を調べられます。

なぜストレスチェックをやる必要があるの?

ストレスチェック制度の目的は労働者のメンタルヘルス不調の未然防止です。

以前から仕事のストレスが原因で精神障害を発病して労災認定される労働者が増加傾向であることが課題とされています。

そのような背景を受けて労働安全衛生法が改正されて、ストレスチェックとその結果における面接指導の実施を内容とするストレスチェック制度ができあがったのです。

ストレスチェック制度の義務化とは

ストレスチェックとは、ストレスに関する質問に労働者が回答をして、その後、集計や分析をすることで自分のストレスがどのような状態であるかを調べる検査です。

労働衛生安全法の改正により、労働者が50人以上いる事業所では毎年1回のストレスチェックが義務付けられています。

参考:ストレスチェック制度 簡単 導入マニュアル

罰則規定について

ストレスチェックは義務化されているわけですが、気になるのは罰則ではないでしょうか。

結論からいうと、ストレスチェックを実施して報告をしなかった場合には罰則があります。これは労働安全衛生法によるものです。

労働安全衛生法120条には「次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。」と記されています。さらに5項では「第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかった者」とされています。

参考:労働安全衛生法

ストレスチェックを実施しなかったことについての直接的な罰則はないものの、報告義務を怠ると罰則が科せられるということです。

なお、ストレスチェックを実施した際は労働基準監督署への報告をすることになります。

ストレスチェックの実施のながれ

年1回以上、事業者は50人以上の事業場において、ストレスチェックを行うことが義務とされています。

これは産業医制度とリンクしており、50人以上の事業場において、産業医の専任義務があることが背景にあります。原則、実施者として、産業医、保健師、厚生労働省が定めた研修を終了した看護師、精神保健福祉士を選任します。

事業者側は、実施事務従事者を専任します。この時、ストレスチェックの結果、人事的に不利益な扱いがないよう、人事権のある部長職以上の者は実施事務従事者になれません。

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ストレスチェックの対象者

ストレスチェックの対象者は 「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル」において「常時使用する労働者」と定義されています。

「常時使用する労働者」とは契約期間に定めがない正社員、契約社員、パート、アルバイトです。さらに労働時間が通常の労働者の4分の3以上であることが条件となっています。

契約に定めがある場合であっても契約期間が1年以上(使用されている期間が1年以上の場合も含む)であれば、ストレスチェックの対象者です。なお、派遣社員もストレスチェックの対象者です。

参考:労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル(P30)

ストレスチェック制度の実施の具体的な手順

ストレスチェック制度の実施は、大きく分けて4つの流れがあります。

1.ストレスチェック制度の導入の準備(事業者)
2.ストレスチェック制度の実施(実施者)
3.結果の通知、面接指導など
4.結果の保存、集団分析など(事業者)

ストレスチェック制度は導入の準備から始まりますが、事業者が方針を定めたり労働者への説明を行ったりします。その後、医師などによりストレスチェックが実施されて、データの優秀がなされます。

結果が判明したら実施者から従業員、事業者に通知されて、高ストレス者と判定された場合は医師などから面接指導が行われる流れです。事業者は就業上に必要な措置を実施します。

最終的にストレスチェックの結果を保存・分析して、職場環境の改善措置を実施していきます。

1.ストレスチェック制度の導入の準備(事業者)

ストレスチェック制度を導入するにあたって、事業者側はまず、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐために「ストレスチェック制度を実施する方針」を従業員へ周知しましょう。
ストレスチェック制度を実施するには、従業員の協力が必要となるため、事前に伝えておく必要があります。

次に、事業所の衛生委員会で実施方法について協議します。

具体的には、

  • 実施のタイミング
  • 質問票の作成方法
  • 高ストレス者の基準
  • 面接指導の申出方法
  • 面接指導を担当する医師
  • 集団分析の方法
  • ストレスチェックの結果の保存方法

などについて話し合います。
協議の結果を社内規程において明確にし、労働者全員へ周知しましょう。

2.ストレスチェック制度の実施(実施者)

ストレスチェック制度の実施は、以下の流れで進めていきます。

ストレスチェック票を作成する

ストレスチェック票に指定のものはなく、以下3項目に関する質問が含まれていればよいとされています。

  • ストレス要因
  • ストレスを要因とした心身の自覚症状
  • 労働者に対する周囲のサポート状況

作成方法に迷う場合は、職業性ストレス簡易調査票(※)を活用するとよいでしょう。

参考:厚生労働省「ストレスチェック制度導入ガイド」7ページ【PDF】

ストレスチェック票を配布し、記入してもらう

次に、作成したストレスチェック票を配布し、労働者に記入してもらいます。配布は誰が行っても問題ありません。

ストレスチェックを受けることは労働者の義務ではありませんが、労働者をメンタルヘルスの不調から守るために、受検を推奨することが望ましいでしょう。

なお、ストレスチェックはオンラインでも実施可能です。
オンラインで実施する場合は、厚生労働省が無料で配布しているストレスチェック実施プログラム(※)を活用するのがおすすめです。

参考:厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」

ストレスチェック票の回収・評価

労働者によるストレスチェック票の記入が終わったら、実施者が回収を行います。
その際、第三者が閲覧できないよう、十分に配慮する必要があります。

回収されたストレスチェック票の結果をもとに、労働者のストレス状態が評価されます。
事前に決められた基準に達した高ストレス者に対して、医師の面談指導が必要かどうかについても判定していきます。

3.結果の通知、面接指導など

結果の通知

ストレスチェック票におけるストレス状態の評価が完了したら、実施者より本人に結果が通知されます。
ストレスチェックの結果について、事業者が知ることはできません。事業者がストレスチェックの結果を知りたい場合は、本人へ結果を通知したあとに開示の同意を得ることが必要です。

面接指導の申出

ストレスチェックの結果により面談指導が必要と判定された場合でも、面談指導の申出をするかどうかは、あくまで本人が決めます。
事業者側は、労働者が安心感をもって面談指導の申出ができる環境を整えることが大切です。
面談指導の申出は、ストレスチェックの結果の通知後、大体1カ月以内に行うのが基本です。

面談指導対象者か否かの確認

事業者は面談指導を実施するにあたって、申出のあった労働者が面談指導対象者と判定されているかチェックを行います。

チェックは、以下いずれかの方法で行います。

  • ストレスチェックの結果を本人に提出してもらう
  • 実施者に確認をする

医師の選定・日時の決定

面談指導は、産業医資格のある医師に任せるのがおすすめです。
事業所の産業医や、産業保健活動に従事している医師が適任と言えるでしょう。

面談の日時については、面談指導の申出から大体1カ月以内とされており、労働者側の負担にならないよう、医師と調整します。

面談指導

面談指導は、原則「対面形式」となりますが、お互いに表情や音声・しぐさなどが確認できる、セキュリティが確保されているなど一定の要件を満たした場合は「オンライン形式」でも可能です。

参考:労働者健康安全機構

面談指導では、ストレスチェックの結果に基づいて医師が指導・助言を行います。
事業者側は、面談指導実施後大体1カ月以内を目処に、医師より労働者の就業上の措置に関する意見を仰ぎましょう。

就業上の措置を実施

医師の意見をもとに、必要に応じて職場の配置や業務内容の変更、労働時間を減らすなど、労働者の就業上の措置を決定していきます。
その際、労働者側の意見を十分に考慮することを心がけ、不利益な扱いにつながらないよう留意することが重要です。

措置が決定したら、事業所の産業医や産業保健スタッフ、人事・労務担当者などとしっかり連携を取りながら、実施していきましょう。

4.結果の保存、集団分析など(事業者)

結果の保存

労働者から開示の同意がないストレスチェックの結果は、原則実施者により保管され、保存期間は5年間と推奨されています。
労働者から開示の同意があった場合のストレスチェックの結果については、労働安全衛生規則により事業者が適切な保管を行うよう定められており、保存期間は5年間です。
また、同規則により、面談指導の結果についても事業所が5年間適切に保管するよう定められています。

集団分析など

ストレスチェックの結果に基づき、実施者により集団分析が行われ、職場におけるストレス状態を確認できます。
集団分析の結果は、通常労働者の同意なく事業者へ提供されますが、従業員が10人以下の職場では個人が特定される可能性があるため、労働者の同意が必要となります。

事業者は集団分析の結果に基づき、職場環境の改善に取り組みましょう。

ストレスチェックの項目

ストレスチェックの内容は3つの領域があります。

「仕事のストレスの原因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3つです。

  • 仕事のストレスの原因(領域A):職場環境や労働時間、仕事量、人間関係
  • 心身のストレス反応(領域B):自分の感情、体に現れている症状、ストレス反応
  • 周囲のサポート(領域C):自分の周りのサポート体制

前述のとおり、以上の3領域について57項目の質問が用意されています。

ただし、57項目のストレスチェックは基本版であり、ハラスメント調査など職場改善につなげやすい80項目版のストレスチェックもあります。

さらに、23項目の簡易版のストレスチェックも活用できます。23項目版は労働者のストレスをより深く調査することができないため、職場改善につなげることが難しいでしょう。23項目版を導入している企業が少ないことも現実です。

なお、項目数にかかわらず3つの領域を含める必要があります。3つの領域を含めていれば、項目数の増減は問題になりません。事業者オリジナルのストレスチェックの調査票を作成することも可能です。

ストレスチェックの注意点

ストレスチェックを行う上で気をつけるべき注意点についてまとめていきます。

1.労働者のプライバシーを守ること

ストレスチェックの結果や面接指導結果を第三者が不正に閲覧・入手できないように注意しましょう。
特に、ストレスチェックを行うにあたって個人の情報を取り扱った人は、法律上の守秘義務が発生し、守らないことで刑罰の対象となります。
また、本人から開示の同意を得て事業者に提供されたストレスチェックの結果は、社内での共有を最小限にとどめ、適切に管理を行わなければなりません。

2.労働者が不利益となる扱いをしないこと

事業者側は、

  • 医師の面接指導を受けたいと申し出た
  • 医師の面談指導を受けようとしない
  • ストレスチェックを受けない
  • ストレスチェックの結果を開示することに同意しない

などを理由に、労働者に対して不利益な扱いをしてはいけません。

また、面談指導結果を理由に

  • 解雇、雇い止め
  • 退職をすすめる
  • 不当な配置転換や役職変更

を行うことも禁止されています。

ストレスチェックの判定基準とは

ストレスチェックは、労働者がさまざまな質問に回答して、その内容を点数化していきます。

質問数は57項目におよびます。質問内容は領域がA、B、Cにわかれており、合計点数を算出します。

その後、高ストレス者を選定する評価基準の数値基準に照らし合わせる流れです。

高ストレス者と選定されるのは「領域Bの合計点数が77点以上(最高116点)」「領域AとCの合算の合計点数が76点以上(最高点104点)であり、かつ領域Bの合計点数が63点以上であること」のいずれかを満たす場合です。

以上は単純合計判定法と呼ばれる判定方法です。

高ストレス者の選定は素点換算表を使う標準化得点法がありますが、こちらは計算方法が複雑ですがストレス状態や要因に関する詳しい情報を得ることが可能です。

標準化得点法も領域がA、B、Cのそれぞれの回答を点数化して評価します。

ただし、すべての回答の点数を出した後に「尺度」と呼ばれるまとまりで、再度点数に換算していきます。
18の尺度に分けられ、尺度ごとに合算した後に素点換算表にあてはめて5段階の評価を行う流れです。

標準化得点法では、「質問領域Bの評価得点の合計が12点以下」「質問領域AとCの評価点を合計した点数が26点以下であり、かつ質問領域Bの評価点の合計が17点以下」のいずれかの場合に高ストレス者と判定されます。

参考:数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法(ストレスチェック制度実施マニュアルの解説)

ストレスチェックの結果、高ストレス者への対応方法

高ストレス者と判定されると、受診者には「医師による面接指導が必要」と結果が通達されます。面接指導が必要な受診者から申し出があった場合は、医師に依頼して面接指導を実施します。

企業側は面接指導を行った医師から就業上の措置の必要性とその内容を確認して、受診者(労働者)の労働時間短縮などの措置を実施します。

ストレスチェックの費用はどのくらい?

ストレスチェックは外部の委託機関に依頼することもあり、さまざまな費用が発生します。費用相場としてストレスチェックに関する業務は、従業員1人当たり500円前後から1,500円程度、面接指導の場合は30〜60分で15,000円から50,000円となります。

ただし、事業所の規模や職場環境に合わせた追加の質問や、集団分析を行う場合は費用が異なります。
あくまでも概算ですが、従業員1,000名、用紙版、事業拠点10箇所の場合は75万円程度の費用です。

費用の大部分はストレスチェック料金となります。そのほか、基本料金、面接指導、送料、結果確認業務などに料金がかかる内訳です。

ストレスチェックに関する助成金

ストレスチェックに関しては、助成金が利用できます。「ストレスチェック助成金」では、ストレスチェック実施費用として労働者1人につき500円(税込、上限)が助成されます。

また、ストレスチェックに係る医師による活動について、1事業場あたり1回の活動につき21,500円(税込、上限3回)が助成されます。いずれも上限額ですので、実費額が下回る場合は実費額(税込)の支給となります。

ストレスチェックの予算確保や費用削減を検討している場合は、助成金の利用を検討しましょう。

参考:令和4年度版 「ストレスチェック」実施促進のための助成金の手引

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まとめ

ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぎ、働きやすく健康的な職場に改善することを目的として行います。
年1回の実施と労働基準監督署への報告が頻度とされている制度です。

本記事ではストレスチェックの流れなども簡潔にご説明しました。

今後のストレスチェックの実施に役立ててください。
また、助成金もありますので、合わせて検討しましょう。

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監修

栗原 雅直医師
くりはら まさなお

東京生まれ。東京大学医学部医学科卒業、東大病院精神神経科に入局。1960年東大大学院生物系研究科博士課程修了。医学博士。2年間のパリ大学留学後、東大病院医局長、1966年虎の門病院勤務。初代精神科部長。川端康成の主治医を務めた。1990年大蔵省診療所長。財務省診療所カウンセラー