日本の診療ガイドラインの現在


診療ガイドラインについて

「診療ガイドラインは必要がある時だけに開くものだ」という認識の医師も少なからずいるかもしれません。実際、20年ほど前は作成方法や内容も標準化されておらず、学会によってばらつきがありました。しかし、現在の診療ガイドラインは、作成プロセスが、根拠に基づく医療(EBM)に準拠するようになり、国際水準に近づいています。今回の記事では日本の診療ガイドラインの現在の動向や活用方法についてご紹介します。

診療ガイドライン「Minds」とは

「Minds」は2011年度から、厚生労働省の委託事業として取り組まれている事業で、診療ガイドラインの作成、評価・選定、活用促進、患者と医療者による共有を行っています。Mindsでは、診療ガイドラインについて下記のように定義しています。

診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書。(福井次矢・山口直人監修『Minds診療ガイドライン作成の手引き2014』医学書院.2014.3頁)

診療ガイドラインの目的を端的に説明すると、「医療者と患者の意思決定」を支援する、そしてそれにより医療の質を向上させることです。現在の診療ガイドラインは、臨床現場における意思決定の際に、判断材料の一つとして活用されています。

診療ガイドラインの近年の動向

現在の診療ガイドラインは、さまざまな観点から厳重に作成されています。作成プロセスを明確化・透明化するため、「システマティックレビュー」が行われるようになりました。

システマティックレビューとは、1つの診療上の重要な課題(CQ)に対して、根拠に基づく医療(EBM)で用いるための情報の収集と吟味の部分を担う調査のことです。二名以上の担当者が、中立的な立場で、研究論文などから複数のエビデンスのを統合します。研究成果の情報源として最良のものとして位置づけられています。

システマティックレビューでは、益と害のバランスを検討することが国際標準ですが、以前の日本では生存率や治療などの「益」に目を向けており、副作用や合併症といった「害」には目を向けられていなかったそうです。現在は、益と害のバランスを検討し、エビデンスの確実性や透明性が高い「推奨」が示されるようになっています。

課題としては、診療ガイドラインの作成に時間を要するため、情報が最新でないという点が挙げられています。しかし、情報が最新であるということは、その情報が必ずしも正しいとは限らないということでもあります。基本・標準を知るという点では、診療ガイドラインを活用することは非常に有意義であるといえます。

診療ガイドラインの活用方法

Mindsのウェブサイト「診療ガイドラインライブラリ」には、日本国内の診療ガイドラインが200本以上公開されています。

https://minds.jcqhc.or.jp/

キーワードやカテゴリーで検索すると、それに合致した診療ガイドラインを見ることができます。標準治療を再確認する、他科依頼する場合に調べるなど活用方法は様々にあります。

医師には、大学で得た知識、これまでの経験から得たもの、上級医からの助言、新しい論文などさまざまな情報源がありますが、「診療ガイドライン」もそのうちの一つとして日常的に利用できると言えるでしょう。

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