学ぶ意欲が伝播する
ビジネスカレッジ
刀禰氏H.U.グループホールディングス様には、当社の産業医クラウドサービスをご利用いただいています。ご支援をしている中で、日頃から「社員の健康」に対する意識の高さに感服しています。2022年には経済産業省などが優良な健康経営を実践している企業を顕彰する「健康経営優良法人制度」で上位500法人に選ばれ、いわゆる「ホワイト500」として認定されました。今回は、人的資本経営の観点から御社の人材への投資方針や育成の取り組み、ホワイト500を取得された経緯に関して教えてください。
竹内氏私たちは、「社員の力の総和が会社の力」であると考えています。個々の社員に対して、どのように成長してもらうか、どうスキルを上げてもらうかを考えることが人材育成の重要なポイントです。企業が人材育成の一環として行う研修は、社員の学びが受動的になる傾向が強いと思います。私自身、当社グループの従来の研修は効果が小さいという印象を持っていましたので、社員が能動的に取り組んでいく方法に転換していきたいと考えていたのです。

やる気のある人には、
会社がきちんとサポートするという
姿勢を見せていることも社員との
信頼関係を築くうえで重要です
刀禰氏
刀禰氏一般的な研修とは違う、御社独自の育成・開発の場を設けたのですね。従来の方法との大きな違いはどこですか。
竹内氏例えば、管理職の研修は新任管理職全員に定期的に実施していました。それに対して、2022年1月に開校した「H.U.ビジネスカレッジ」は、社員の自主性を考慮した公募型のプログラムにしています。社員が学び続けていく姿勢と、ビジネススキルの基礎を習得することを目的に、論理的思考、マーケティング、企業法務など各分野について外部の専門講師から学びます。研究開発職や検査職、営業職などの職種に関わらず、皆がビジネスパーソンとしての共通の土台となる知識・スキルを身につけるのです。それによって、社員の将来の可能性もどんどん広がっていきます。開校前は、社員が積極的に応募してくれるか不安もありましたが、ふたを開けると40名の定員に対して約140名の応募があったため、その中から45名を選抜しました。
刀禰氏社員の皆さんのやる気とスキルアップしたいという強い意欲が表れていますね。応募する社員はどのような年齢層なのでしょうか。
竹内氏20代から50代まで比較的幅広い年齢層です。現在まで1名の脱落者も出さずに続けています。講義時間が終わっても質問が続くということもしばしばで、休日の講義にも皆が参加しています。最近では、能動的に学ぶ姿勢が社員に一層根付いてきていると実感しています。そのような社員が増えることにより、周囲の人にも自ら学ぶ姿勢が伝播しているようです。これは従来の受動的な研修では実現できないことだと考えています。
刀禰氏やる気のある人には、会社がきちんとサポートするという姿勢を見せていることも社員との信頼関係を築くうえで重要ですね。
竹内氏その通りです。H.U.ビジネスカレッジのような選択型の教育と、階層別研修、全社員必須の教育を組み合わせ、さらに計画的なジョブローテーションを行うことで体系立てた人材育成方針を示し、社員のキャリア支援に取り組んでいます。自分で考え、行動し、責任を持つ、つまり「自立・自走・自責のキャリア形成」を実践する社員を育てていきたいと思います。

コミュニケーションの促進は
健康経営の土台。
ホワイト500の取得に当たって
特に重視した項目です
竹内氏
「健康経営優良法人ホワイト500」の認定は
人々の健康に貢献する企業としての決意
刀禰氏健康経営に関してはどのように取り組んでいるのでしょう。
竹内氏臨床検査を主要な事業とするH.U.グループは、社員だけでなくそのご家族の健康増進を経営課題の一つとして捉え、メンタルとフィジカルの両面から様々な施策を推進しています。2019年に健康を志向する企業として「健康宣言」を明文化し、2020年には健康経営推進室を設置しました。2020年から健康経営優良法人大規模法人部門を3年連続で取得し、2022年には上位500社に選ばれて「ホワイト500」に認定されました。
刀禰氏健康経営に関して戦略マップも描いていると伺いました。
竹内氏私がこの会社に来たのが2016年で、2017年を当社グループの「第2の創業」と位置づけ、ステップを踏みながら改革に取り組んできました。まずは、2017年からの3年間を社内のマインドを変えていくための準備期間と定め、様々な投資を行いました。その一つが健康経営への取り組みです。健康を志向する企業として、常日頃より社員の健康に目を配り、その変化に対し適切な対応を行う体制を構築し、運用しています。私自身が健康経営責任者として人事本部の健康経営推進部と一体となってグループ会社と密に連携する体制を敷いています。最先端のヘルスケアサービスをいち早くグループで活用することも特徴です。
刀禰氏2020年には社名も変更し、新たなミッションとビジョンを明文化していますね。
竹内氏当社は、エスアールエル、富士レビオなどの経営統合により「みらかホールディングス」として設立され、2020年7月に「H.U.グループホールディングス」へと社名を変更しました。H.U.とは「Healthcare for You」を表し、一人ひとりに最適なヘルスケアを届け、人々の健康寿命を延ばすための貢献をしていきたいという想いを込めています。そのために、まずは社員の健康を実現する必要があります。社員自らが健康でいきいきと安心して快適に働ける職場環境づくりを推進しています。
挨拶はコミュニケーションの
一丁目一番地
刀禰氏ホワイト500には様々なチェックリストがありますが、特に重視した項目はありましたか。
竹内氏H.U.グループでは、「コミュニケーション方針」を定め、ステークホルダーとの継続的な対話の重要性を明記しています。コミュニケーションの促進は健康経営の土台であり、ホワイト500の取得に当たり、「コミュニケ-ションの促進に向けた取り組み」の項目は特に重視しました。健康経営の社内浸透に向け、メッセージや情報発信をはじめとした様々なコミュニケーションを行った結果、職場の活性化に好影響を与えたと考えています。
コミュニケーションは健康経営に限ったことではなく、職場活性化のベースであることに間違いありません。「報・連・相(報告・連絡・相談)」という言葉がありますが、前提として会話がないと成り立ちません。例えば、評価面談では、普段ほとんど話したことがない上司に評価されるのは納得がいかない面もあると思います。だからこそ、日頃のコミュニケーションは大切だと思っています。
当社は仕事柄、研究職や検査職の社員が多く「人と接したくないから検査技師になりました」という人もいます。そういう社員は、朝の挨拶もままならないことが多くあります。私は、挨拶はコミュニケーションの一丁目一番地だと思っています。その基本的なことを何とか気軽に実践してもらうことはできないかと試行錯誤して作ったのがこのバッジです。

刀禰氏動物のキャラクターのバッジですね。パッと目に付きますよね。拝見した瞬間に面白いなと思っていました。
竹内氏例えばチワワには「こんにちは」という意味をかけています。挨拶が重要とはいえ「さあ、みんなで挨拶運動をしましょう」と会社から呼びかけても、社員は堅苦しく感じてしまうでしょう。そこでライオン、チワワ、恐竜の3種類のバッジを作り、その日の気分で好きなバッジを着けてもらうようにしました。
刀禰氏私の会社でも「出社した際には皆に聞こえる声で元気に挨拶をする」ことをルールの一つにしています。メンタルヘルスの観点からも、まず挨拶をするということは重要です。
竹内氏このバッジを着けるようになってから、社内で挨拶の声がだいぶにぎやかになったと実感しています。お取引先とのコミュニケーションの一層の促進につながるようにしたいですね。
刀禰氏そのほかに健康経営に関して新たな制度や仕組みはありますでしょうか。
竹内氏健康管理センターを設置し、メンタルチェックなどを含め運営はAvenirさんにお願いしています。女性社員が働きやすい職場環境づくりや制度の構築も進めており、社内向け健康サイトやメールマガジンなども活用して様々な情報発信を行っているところです。社員のマインドがさらに健康経営に向くよう、地道に積み重ねていくしかないと考えています。もちろん、私自身が年始や年度末、あらゆる場面で健康経営に対するメッセージを発信するようにしています。
刀禰氏トップのメッセージは本当に重要だと思います。常に竹内さんご自身が発信し続けているのが素晴らしいですね。今後に向けて新たな課題の発見や気づきはありましたか。
竹内氏例えばホワイト500などは、制度化されているから取り組むのではなく人の健康に携わる企業として先陣を切って推進していくことが重要だと捉えています。これからも地道に現場を巻き込みながら一つひとつの活動に取り組みます。健康経営に関することだけではなく、どのような施策でも「なぜそれをやるのか」を自分なりに納得しなければ社員は自ら動きません。人材育成も含め、人的資本経営強化のためにも、自社の人的資本とは何かをしっかりと定義して、浸透させていく必要があると考えています。