【第3回】職場との意識の食い違いが引き起こす適応障害の対応は?|Avenir産業医
           

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【第3回】職場との意識の食い違いが引き起こす適応障害の対応は?

2017.08.21

出勤できない新入社員

一見どこも悪くなさそうなのに、出勤だけは出来ない女性の新入社員を診察したことがあります。一種の職場不適応ですが、この場合明らかな職場の問題点もないということが、問題点でした。本人にも特に問題がなく、職場としても平均的な難易度でノルマがきついことはありません。近所の医者を受診し、感冒や慢性疲労などさまざまな病名の診断書をもらってきては、欠勤が続いてなかなか解決のメドが立たたないというケースでした。どうも「仕事」に対する本人の心構え、職場での期待、受診した医者の視点などに微妙な「ずれ」があったことが、解決が長引いた原因だと考えられました。

産業医の立場からすると、結局は時間に迫られてどうにか解決するはずだから自然体で構えてのんきにしているのが唯一の解決法のようにも思えましたが、それではあまり良心的ではないような気がしました。会社の禄を食む身としては、皆のために早く良い解決をと願い、局面打開のため何らかのサジェスチョンを出したいところ。それにはまず、立場の違いによって起こるずれを皆に意識してもらうことだと思いついたのです。

職場と適性の問題点

この女性は、体調が悪いため、研修期間中から近所の内科医で感冒という診断書をもらい欠勤。出勤してもまた体調が悪くなる。どうも体の病気より職場の環境と本人の適性に原因があることが次第に分かってきました。

精神科などを受診して服薬したり、会社での配置転換を希望したりという選択肢もありましたが当人はどちらも選択しませんでした。実際産業医として面談したとき、やや頑固な印象は受けましたが、とくに異常という印象はありませんでした。また向精神薬を飲ませてみても、不適応がよくなると予想もできずどういった対応がよいのか彼女にとってよいのかと考えました。

彼女は東京近辺の小都市にある支店の営業担当。彼女の担当の顧客は地域柄、顧客としての預り資産が増えにくい状況でした。ただ、特別に営業がやりにくいわけでもなく、またとくに上司が分からず屋で厳しいといったものでもありませんでした。

会社としては、配置転換をするという選択肢もありましたが、人事配置をするたびに不適応のための配置換えを行っていたら仕事になりません。それで病気で休んでいた人の復職は、もとの職場に帰ってもなんとか勤まることがわかった段階で、あらためて適切な部署への配置転換をするのが人事上の慣例になっています。

産業医の役割として、普通の人間が劣悪な環境に配置され過重労働などでうつ病患者が頻発するような場合、労基署が入る前に環境の整備を人事厚生に働きかけることです。しかし普通の職場に普通の人間が配置されたときに不適応現象が起こるとしたら、やはり本人の問題が大きいと考える必要があります。そこで多少の時間的猶予をさしはさみながら、適応できるかどうか本人にも考えさせることが正解だと考えます。

職場に適応できない社員へ考えられる対応は?

今回のケースは、あまり本人の意に染まない会社に就職したための不適応と考えられます。しかしそういったケースは多々あるため、その際は会社を辞めるか、我慢して自分を変えるか、或いは時間をかけて会社の環境を変えてゆくか配置転換の時期を待つということになります。

本人を変えるには向精神薬によって過敏な感受性を鈍らせる、カウンセリングを行うという対応になります。また、リワーク訓練をやってくれる診療所が、一つの可能性として浮かび上がってきます。私自身はそちらの方面にはあまり詳しくないのですが、暫定的な対応であってもこういった機関を挟むことで医者、患者、会社の人事当局の間の意識のずれが調整されてゆくように思われます。

栗原医師

栗原 雅直(くりはら まさなお)医師
東京生まれ。東京大学医学部医学科卒業、東大病院精神神経科に入局。1960年東大大学院生物系研究科博士課程修了。医学博士。2年間のパリ大学留学後、東大病院医局長、1966年虎の門病院勤務。初代精神科部長。川端康成の主治医を務めた。1990年大蔵省診療所長。財務省診療所カウンセラー

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