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産業医の巡視回数が「2か月に1回でも可能」に!注意すべきこととは?

2022.02.21衛生委員会

労働安全衛生法の改定により、産業医の巡視回数が「1か月に1回以上」から「2か月に1回でも可能」となりました。

ここでは、巡視回数が変更された理由と、巡視回数を変更する際の注意点をお伝えします。

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職場巡視とは

職場巡視の目的

職場巡視は、産業医が実際に従業員の働いている作業環境を見て、安全衛生上に問題がないかを確認することが目的です。

問題点がある場合は具体的な改善点や対策を考え、企業側に指導します。その他、過去に指導した改善点が実施されているか、効果はあるかなども確認しています。

近年は従業員の長時間労働による過労、ストレスによる心労などが社会問題に発展しているため、産業医が行う職場巡視は非常に重要です。

改善点を指導しても適切な対処を企業側が行わない場合には、産業医が勧告を行うこともできることから、その重要性がうかがえるのではないでしょうか。
従業員の作業環境は労働安全衛生法によって基準が設けられています。職場巡視が行われていないときもこれらの基準を巡視して、快適な作業環境になるよう常に心がけましょう。

職場巡視後の対応

職場巡視は巡視だけが目的ではありません。実際に指導された内容を基に、労働環境の改善をするまでが巡視だと考えましょう。
職場巡視は「PDCA(Plan/Do/Check/Action)」を意識することが大切です。

<Plan>

職場巡視前に行う計画です。年間の巡視計画を立て、職場巡視で重視すべきポイントや巡視に必要なことも確認します。
また、職場巡視を実施する際のスケジュールやチェックリストを作成することも、この段階で行います。

<Do>

計画が終わったら実際に職場巡視を行います。事前に作成したチェックリストなどを活用して改善点を優先順位別に振り分けます。
職場巡視で重視するのは主に労働環境ですが、他にも業務の状況、作業量、衛生、防災など多くの観点から確認することも大切です。

<Check>

職場巡視後は改善事項をまとめ、具体的な改善の計画を立てます。
計画実行に予算が必要な場合は、継続検討事項も併せて計画しておきましょう。

<Action>

安全衛生委員会で職場巡視の内容を報告・審議します。
改善点を基に見直し、次の職場巡視までに改善ができるように努めます。

改善を行おうとしても、1回の職場巡視ですべての問題を解決することは難しいかもしれません。

指導された内容を実行しても、何らかのリスクが残ることもあるでしょう。そのような場合は、改善レベルを複数に分けて考えてください。

まずはどの程度改善するかを具体的に考えることで、徐々に改善を図ることができます。

また、企業内だけで改善が難しい場合は外部の専門家を頼るなども検討しましょう。

なぜ巡視回数が減った?法改正の目的とは?

本来、産業医の職場巡視は、製造業を中心とした化学物質等の有害業務が多い職場環境で、従業員に対して危険や健康管理上に問題がないかをチェックするという目的で行われていました。

しかし、近年ではオフィスワークでの巡視が中心となり、毎月の巡視は必要か、長時間労働面談などのメンタルケアに重点を置いた方がいいのではないか、という議論の結果、巡視回数の変更が可能になりました。(これまで通り1か月に1回でも問題ありません)

産業医の訪問回数を減らすことが法改正の目的ではない

法改正により、産業医の職場巡視が求められる最低頻度は減少しました。

しかし、産業医の訪問回数を減らすことが法改正の目的ではく、これまで職場巡視に使われていた時間が別のことに求められるようになったためです。

そのため、産業医の訪問回数を減らす目的で、巡視回数を減らすことは推奨できません。

法改正の目的

法改正での目的は大きく分けて2つあります。

1つ目は産業医や産業保健機能の強化です。
産業医による労働環境の整備を行いやすくするため、産業医の活動と衛生委員会等との関係強化も行われました。

また、労働者が安心して産業医に相談や面接を行える整備も求められ、健康などの個人情報の取り扱いについても定められています。

2つ目は、長時間労働者に対する面接指導等の対応です。法改正によって残業時間の上限が変わったことで、長時間労働者への指導も強化されました。

産業医による巡視回数や訪問時間をこれらの対応時間に回すことで、過労やメンタルヘルスのケアと改善により、労働者の心身を守ることが法改正の目的です。

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巡視回数を変更する際の注意点

今回の法改定は、産業医巡視の制限を緩和させることが目的ではありません。

巡視回数を減らすことで、産業医がより専門的な知識をつける時間を確保することを目的としています。

巡視回数を「2か月に1回」に変更するには、事業者から産業医への情報提供、事業者と産業医の同意が必須になります。

では、具体的に今までと何が違うのか、比較してみましょう。

労働安全衛生法の改定に関する産業医の巡視回数の変更について

現行

  • 産業医は、少なくとも毎月一回作業場等を巡視し、労働者の健康障害防止のために必要な措置を講じなければならない。(労働安全衛生規則第15条)
  • 事業者は、健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、当該労働者の健康保持に必要な措置について、医師等からの意見を聴取する。(労働安全衛生法第66条の4、労働安全衛生規則第51条の2ほか8省令8条文)
  • 事業者は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たりの100時間を超える労働者について、当該労働者からの申出に基づいて医師による面接指導を行う。(労働安全衛生法第66条の8、労働安全衛生規則第52条の2)

改正後

  • 少なくとも毎月1回行うこととされている産業医による作業場等の巡視について、事業者から毎月1回産業医に所定の情報が提供されている場合であって、事業者の同意がある場合には、産業医による作業場等の巡視の頻度を、少なくとも2月に1回とすることを可能とする
    1 衛生管理者が少なくとも毎週1回行う作業場等の巡視の結果
    2 1に掲げるもののほか、衛生委員会等の調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの
  • 事業者は、各種健康診断の有所見者について医師等が就業上の措置等に関する意見具申を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を当該医師等から求められたときは、これを提供しなければならないこととする
    事業者は、毎月1回以上、一定の期日を定めて、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間の算定を行ったときは、速やかに、その超えた時間が1月当たり100時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る超えた時間に関する情報を産業医に提供しなければならないものとする。

参考)厚生労働省ホームページ

産業医の巡視を2ヵ月に1回にする際の条件

  • 事業者が産業医に毎月1回以上、下記の情報を提供すること
    ―衛生管理者が毎週1回行う作業場の巡視結果報告
    ―長時間労働に対する面接指導の対象に該当する労働者と、その労働者の労働時間数の報告
  • 事業者と産業医の同意
    巡回の頻度を減らすには、事業者と産業医の同意が必要になります。事業者、産業医のどちらかの判断だけでは変更することはできません。産業医の意見を衛生管理委員等で調査審議を行ったうえで、事業者が決定する必要があります。

産業医による職場巡視のチェックポイント

職場巡視のチェックポイント

職場巡視でのチェックポイントは4つのカテゴリーに分類することができます。
ただし、企業や事業所の業態・業種によって産業医に求められるチェック項目は異なるため、必ずしもこの内容が当てはまるとは限りません。

職場の環境 5S(整理・整頓・清掃・清潔・安全衛生を守るための行動が行えるか)
照明環境・照度、温度、湿度、二酸化炭素濃度
換気設備
電気配線
救急箱の有無
VDT作業環境※ 作業環境
作業時間と休憩時間のバランス
作業台や椅子などの状態
※VDT…Visual Display Terminal(コンピューターを使った作業)のこと
付帯装備の状況 階段・通路、トイレ、給湯室、更衣室、休憩室、非常口が清潔で使いやすい状態か
安全性 消火器の有無や設置個所、状態
危険物の管理や保存方法が適切であるか

職場巡視の際はチェックリストを用意しよう

巡視のチェックポイントは非常に多くあり、効率的に行うためにはチェックリストの活用を検討しましょう。

チェックリストの作成や保存の義務はありませんが、情報共有の効率化や労働環境の改善が必要な個所を確認する際に役立ちます。

業態や業種によって必要な個所のチェック項目を増やし、企業ごとに合ったチェックリストを作ることが大切です。

まとめ

巡視回数が2か月に1回へと変更可能になったことで、産業医と事業者との連携や、衛生委員会での報告内容の設定など、より計画的な労働管理が求められるようになりました。

また、巡視にあてていた時間を、長時間面談者への時間にあてるなど、産業医の面談スキルもさらに求められる時代へと変化してきています。

巡視回数の変更を検討している事業者は、産業医の時間をどう活用するか、報告書の形式や内容などを、産業医としっかり話し合っておくことが大切です。

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監修

栗原 雅直医師
くりはら まさなお

東京生まれ。東京大学医学部医学科卒業、東大病院精神神経科に入局。1960年東大大学院生物系研究科博士課程修了。医学博士。2年間のパリ大学留学後、東大病院医局長、1966年虎の門病院勤務。初代精神科部長。川端康成の主治医を務めた。1990年大蔵省診療所長。財務省診療所カウンセラー