産業医の役割、目的とは?
産業医が行う必要のある仕事は、労働安全衛生法および労働安全衛生規則で定められています。産業医の役割は、「労働者と使用者との労働契約を基に、労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境の形成に対する専門的な立場からの助言・指導」です。
もう少し噛み砕くと、「労働者が心身ともに健康に働けるように職場環境をチェックし、改善のための働きかけをすること」が産業医の役割であり、目的と言えます。
産業医の職務は、労働安全衛生法13条、労働安全衛生規則(安衛則)第14条で規定されており、大きくは5つに分類されます。
法的に決められている5つの産業医の職務
1.労働衛生管理体制の確立
労働者の健康に関する基準は、安全衛生法第18条で定められています。事業所や作業内容に応じた管理体制の整備以外に、資格者の充足を促すことなども含まれます。
また、産業保健スタッフのチーム活動の内容について助言や指導を行い、ケアチームそのものの編成や体制づくりに関する職務も必要です。1か月に1度の職場巡視は義務付けられており、労働環境や労働者の健康状態、ストレスの状況などを把握し改善することが求められています。
2.作業環境管理
労働によって心身に健康障害を引き起こすようなリスクがあるものを排除・制御することは、企業側の義務です。
該当するリスクには、科学的因子と物理的因子の2種類があります。科学的因子には事業所の職務で使用しているほか、建材や環境などによるものがあります。物理的因子は気温や騒音などです。身近な作業環境管理には、職場の分煙化などが含まれています。
3.作業管理
作業管理は、従業員にとって業務が安全であることを管理するものです。1日の作業時間や作業の方法以外に、使用する設備や器具が適切に管理・使用されているかの対策をとることも該当します。
作業内容の把握に基づき、助言やルールの作成を指導することなども該当します。長時間労働によってストレスがかかっている場合は、人事労務や職場と連携をとり、対策をとることも重要です。
4.健康管理
労働者の健康診断の結果から必要に応じて面接指導などを行い、職場要因の健康被害を最小限に留めることが目的です。健康診断以外にストレスチェックも行い、身体的だけでなく精神的ケアも求められます。
健康管理には休職中の労働者も対象に入るため、労働者の希望によって休職面談や復職面談を行うこともあります。時期に応じて流行りやすい花粉症や食中毒に対する理解を深めることも、健康管理の一つです。
5.労働衛生教育
労働安全衛生を効果的に進めるには、企業全体で組織的に取り組むことが必要です。労働衛生教育と健康教育の2つを行うことで、企業全体の意識改善や環境改善につながるとされています。
労働衛生教育では、法や行政指導の定めに基づいた指導が行われます。また、講習の開催や資料の収集なども求められています。企業では労働者の健康を管理するだけでなく、労働者一人ひとりが自分の健康状態を管理できるように配慮することも必要です。
多岐にわたる産業医の職務範囲
上記のように、産業医の職務は多岐にわたります。産業医は一般の医療行為の提供とは異なり、よりよい労働環境を築くことが職務となるため、専門的な知識や経験が必要です。
産業医としての経験が浅い場合、事業者の要望に応えられないケースもあるため産業医の選定は慎重に行う必要があります。
月1回程度事業場へ訪問する嘱託産業医の場合は、すべての業務を行うことは難しいため、事業者側も産業医と入念にコミュニケーションをとる必要があります。
産業医とのコミュニケーションによって職場環境が大きく変わるケースも多々あるため、コミュニケーションスキルの高い産業医を選定することが大切です。産業医としてのスキルの高さはコミュニケーション能力の高さだと感じる事業者も多いため、産業医の選定できちんと対話できるかを見抜くことが必要です。
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